82歳でも、朝から晩まで働く「梅おばあちゃん」こと、乗松祥子さん。

4月に上梓された『梅おばあちゃんの贈りもの』(誠文堂新光社刊)は、4年以上乗松さんの梅仕事を追い、暮らし方や活動、そして生き様などが次世代に伝えていきたいことがまとめられた貴重な1冊です。

82歳・梅おばあちゃんの「やりたいことを追い続ける」コツ

 

ここでは本書より、梅に寄り添いながら、心豊かな日々を送られている乗松さんの暮らしが書かれた章を一部抜粋し、再編集してお送りします。

●80歳を過ぎても、やりたいことがどんどん増える

季節にもよりますが、私の1日は朝日を拝むことから始まります。東の空がオレンジ色に染まり、日の光をたっぷり浴びると「今日も1日元気に仕事をしよう」と力が湧いてきます。

気になることがあると、ひらめきの神様が降りてくださるのか、朝4時頃にパッと目が覚めます。ついこの間も梅にハチミツを入れた新製品について考えていたらすごい名案が浮かび、居ても立っても居られなくなり布団から起き出しました。

朝の台所は私の実験室です。思いついたら、すぐにつくって試す。試行錯誤しながら、頭に描いたものを自分の手でつくり上げる。この時間が最高の息抜きであり、楽しみなのです。

生きている限りは、すべてが学習。だから、80歳を過ぎても新しい発見があり、やりたいことがどんどん増えていくのだと思います。なにごとも50、60代のようにはいきません。陰に陽に周りの方々にも助けていただいています。

●梅おばあちゃんの毎日の過ごし方

平日はスタッフが来る午前10時までには、家事や身支度などをすませるようにしています。

家で梅仕事をしているときは、遅めの朝食と早めの夕食の1日2食。昼食は取らず、午後3時まで仕事に集中します。午後のティータイムに甘いものでひと息つき、気分を切り替えてもうひとがんばり。今日はこれから、期間限定で出店するお店用200本の梅ジュースをつくります。

普段のおもな仕事は、梅の製品づくりや接客など多岐に渡ります。じつは、梅仕事は梅の季節だけでなく、古い梅の養生や梅干しの風入れなど、細々としたことが1年じゅうあります。

日によって、打ち合わせやご挨拶回りで終日外出のときもあれば、家で製品づくりに追われ、夜10時を過ぎてしまうこともあります。週末は休めるときは休むようにして、ひらめくままに商品開発を楽しんでいます。地方からわざわざ訪ねてきてくださる方も多く、梅のお話をしていると1日があっという間に過ぎていきます。

この歳になってもこれだけ元気に動けるのは、毎日の梅仕事のおかげだと思っています。梅という食材は強烈で、魅力にあふれていて、いつも活力をもらっているそうです。

●50年間変わらない3つの朝習慣

忙しいときこそ、長年の習慣を崩さないように心がけています。1つでも抜けてしまうと、そこから身体と精神のバランスが乱れてきてしまうからです。

私には、50年間欠かさない習慣が3つあります。

1つ目は、長時間煮詰めた梅肉エキスをニンジンやリンゴのジュースに溶いて飲むこと。この特製梅肉エキスジュースが活力の源です。クエン酸の働きで身体の代謝がよくなって、疲れにくくなります。ここ一番の用心どきは、梅肉エキスと生ハチミツを1対1で混ぜて飲んでいます。

2つ目は柔軟体操。梅仕事は体力勝負なので、毎朝20〜30分かけて筋肉や関節を伸ばしています。とくに開脚のストレッチは外せません。股関節を柔軟にしておくと、足元がしっかりするからけが防止にもなります。身体は正直だから、2〜3日休むとあちらこちらに不具合が出てきます。朝の柔軟体操は、身体も頭もスッキリ目覚めさせてくれますよ。

そして3つ目は読書。身体をほぐして脳が活性化されると、読書の集中力が上がります。私はジャンルにこだわらずなんでも読みますが、朝は読んだことが真っすぐに頭に吸収される感じがします。朝の時間は宝物ですね。

 

『梅おばあちゃんの贈りもの』には、このほかにも日々の食事や料理レシピを多数掲載されています。さらに、家族ぐるみでつき合いのあった文筆家・内田也哉子さんとの対談も収録。乗松さんの暮らしに役立つヒントが満載です。