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大人気TVアニメ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の歴代のOPテーマ「ユキトキ」「春擬き」「芽ぐみの雨」を歌ってきたやなぎなぎが、TVアニメの放送10周年を記念した楽曲「ユキハルアメ」をリリース。これまで作ってきた楽曲の要素や視点を踏まえたからこそ描き出せた世界と、もう一度歌えることができる喜びが乗った楽曲に仕上がった。彼女と『俺ガイル。』の歩みから今回の楽曲制作までを聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉

デビュー以降『俺ガイル。』と歩んだ10年間



――この度、シリーズ10周年の記念ソングをリリースされたやなぎなぎさんですが、最初のシリーズのOPテーマ「ユキトキ」の制作のときはどんな様子でしたか?

やなぎなぎ まずは原作を拝見しまして、キャラクターの心情を自分なりに楽曲に入れていきたいなと思いました。最初に楽曲にしたいなと思ったのは、雪ノ下雪乃さん。彼女の心にある大きな壁が、これからどうなっていくんだろうと、個人的にも一番気になっていた人物でした。そこから着想を得て「ユキトキ」の歌詞を進めていきました。当時は私自身、アニメのタイアップ作品としても4作目だったので、楽曲にする際の作品とのバランスみたいなところを、特に大事に進めていった記憶があります。



――そして第2期でも「春擬き」を制作されました。続編として主題歌を作るときの思いはいかがでしたか?

やなぎなぎ ありがたいことに、自分が考えていた以上に、「ユキトキ」と『俺ガイル。』という作品の結びつきを好きになってくださった方が、大変たくさんいらっしゃって、 流れを汲みながらもそれ以上のものを生み出さなきゃいけないという、プレッシャーじゃないですけど、気合みたいなのはすごくありました。曲を書いてくれた北川勝利さんも同じ思いでいらしたようで、「『俺ガイル。』だからこういうふうにしたいよね」と、キーを高くしたりとか、もっとポップにしてみようかとか2人でお話して試行錯誤して作っていきました。

――当時はまだ原作が進行中でしたよね。

やなぎなぎ そうですね。私自身も当時は『俺ガイル。』がこのあとどういう方向に向かって、ヒロインたちの行く末がどうなるかもわからなかったので、それまでの作品の読み解きと、「これからどうなっちゃうのだろうか」という感情も込めつつ、「春擬き」の制作は進んでいました。

――そして少し時間が空いて、原作が完結したうえで臨んだ第3期でしたが、それまでとは違った感じがありましたか?

やなぎなぎ 「芽ぐみの雨」のときはもう、「作品を作りきったら、『俺ガイル。』が終わっちゃうんだ」という思いがあったので、それまでの「ユキトキ」や「春擬き」を振り返りながらの制作になりました。正直に言ってしまうと、書き終えたくないという思いがありました。でも書かなきゃみたいな感じで、3作のなかで最も悩んだ作品でした。



――第2期か第3期まで7年間ありましたが、その間にはご自身のアーティストとしての成長もあったかと思います。制作にはどのような影響があったと思いますか?

やなぎなぎ 自分としても、この期間にライブも含めて本当にたくさんの経験をさせていただきましたので、より力強い声を出せるようになったところもあると思います。個人的には三部作のようなまとまりにしたいという思いもあったので、過去の曲の要素も思い出しながら、新しさと懐かしさのミックスみたいな感じになっていったかなと思います。

第1作「ユキトキ」以前に戻って描き出す『俺ガイル。』世界



――そして今回、作品の放送10周年を記念した楽曲「ユキハルアメ」をリリースされましたが、集大成として『芽ぐみの雨』を作られたうえで、さらに作品を解釈し総括して楽曲を作られるのは難しいことではありませんでしたか?

やなぎなぎ 難しくはあったのですが、また作れることの嬉しさが勝りました。気持ち的には映画のエンドロールを最後まで見たら、おまけの映像が出てきたみたいな(笑)。自分でも改めて3作品を聴いてみると、自然と作りたいものの姿が見えてきて、それはやはり10年間一緒に歩んできた期間があったからこそ降りてきたのかなと思いました。



――そこで改めてやなぎさんの創作意欲を掻き立てたものや要素になったのはどんなことでしたか?

やなぎなぎ 3曲を振り返った時に、ふと「ユキトキ」以前のキャラクターたちの気持ち、そして自分自身も「『ユキトキ』を書く前ってどうだったんだろうな」と思いまして。これまでは物語が始まってからのことを書いてきたので、その前の気持ちから引っ張り出してきたら楽しい物語ができそうだなと思ったのが、今回の曲作りのきっかけです。歌詞の内容も、八幡くん、雪乃さん、結衣ちゃんが出会う前からスタートして、「これから出会う予感」を描いていきました。

――その意味で、これまで作った3曲があったからこそできた楽曲だと言えますね。

やなぎなぎ そうですね。そこから、その後に作中で起こったことと、これまでの3曲をなぞらえながら辿っていきます。その辺りは自分でも曲の中をめまぐるしく巡りながらという感覚でした。「ユキトキ」や「春擬き」を作っていたときは、「今回はこの人を中心に据えて」という意識だったのですが、「ユキハルアメ」では八幡くんと雪乃さんと結衣ちゃんの3人の絶妙なバランスが中心になっています。この3人の関係性って本当に形容しがたいほど絶妙で、それをメインに持ってきています。そして、2サビの“ユキハルアメ”という言葉を歌い切るところが、感情や季節のピークになるように、順序立てて流れを追いながら書いているので、自分の中でも物語らしさがかなり強く出た歌詞かなと思います。

――メロディの中にも過去の楽曲を彷彿とさせる要素が含まれていますね。

やなぎなぎ 要所要所に北川さんが込めてくださって、そこにどこか懐かしさが感じられて、私1人でエモーショナルになっていました(笑)。

――最初と最後の“必ず出会うから”のフレーズも短い中にそれが込められていますね。

やなぎなぎ そうなんです。とても好きなフレーズで、このワンフレーズは歌詞を書くなかでも大きな要素になりました。というのも、これがあることによって先ほどの「スタート地点」を決められたんです。もし違うメロディだったら今回の歌の形にはなっていなかったと思います。私から何か申し上げたわけではなかったのですが、多分、北川さん自身の中でも『俺ガイル。』という作品に対しての流れみたいなものを持ってらっしゃって、この3曲だったり10年の間でライブのバンマスをお願いしていることもあって、作品や私への理解度を非常に高められていると実感します。そうした信頼関係もあって、このフレーズが生まれたんじゃないかなと思っています。

――今回のギターソロもかっこいいですよね。

やなぎなぎ そうなんです!毎回感情をえぐっていくようなフレーズで盛り上げてくれますし、『俺ガイル。』シリーズの中でも大切な要素だなと思います。今回のギターソロもタイトルである「ユキハルアメ」という歌詞の後に来てくれるので、そこで目まぐるしい感情だったり、季節の移り変わりみたいなものを感じられるので、聴きどころの1つになっていると思います。

――このシリーズの曲はライブでのキラーチューンの1つかと思います。ステージ上からはどんなふうに見えていますか。

やなぎなぎ 何回演ってもみんな盛り上がってくれるポイントなので、私としても楽しんでいますし、お客さんも「待ってました」みたいな感じで笑顔になってくださっています。見ると私もつられてボルテージが挙がるので、『俺ガイル。』の曲はライブでは欠かすことができない存在ですね。これらでライブのスタートを切ることも多いですし、1日の元気の源みたいなポイントでもあったりするので、本当にありがたい楽曲たちです。

――この一連のシリーズは、やなぎさんのハイトーンの部分を引き出す音作りになっていると思います。ご自身ではどう感じられていますか?

やなぎなぎ 楽曲の中にも高い部分と落ち着いてる部分があって、それが『俺ガイル。』という作品の、「青春なんだけど、正しい形の青春かどうかはわからない」という要素とリンクするところかなと。そうしたところは、歌っていても突き抜ける部分とちょっとダークな一面みたいなところのギャップを出していけたらいいなと思っています。それは今回の「ユキハルアメ」でも持っていたところでした。

――歌入れはいかがでしたか?

やなぎなぎ レコーディングはいつも北川さんと録るのですが、回を重ねるごとに安定していて、着地点も一致してくることが増えてきたので、「こんな感じで歌います」と言って、録って、「いいね!」という流れで、完成している感じがしました。

――先ほどのお話ですと、「芽ぐみの雨」のときは、パッケージングされたらもう最後で寂しさもあったそうですが、今回はどんな思いでしたか?

やなぎなぎ 自分としては、あのときに寂しさの感情があったからこそ、今回の10周年記念ソングに繋がっていると思います。むしろ、ないと思っていたものがあったからこその嬉しさみたいな想いの方が強くて、「ユキハルアメ」を作るときは、ただただ幸せでした。

――そしてこの楽曲は、まだまだこれからのライブで育てていける喜びもあるでしょうし。

やなぎなぎ そうですね。 ライブで歌ったらどんな反応をいただけるのか楽しみな曲ですし、せっかくだからこれまでの『俺ガイル。』の歌曲とも上手くまとめていったり、先ほどの話のように本編やアンコールの頭に置いたりしてもいいですし、贅沢な悩みができます(笑)。



シリーズの3曲の子であり親である「ユキハルアメ」



――今回のMVについて伺えればと思います。 これはどんなイメージで作られたのですか?

やなぎなぎ 八幡くんたちみんなが出会う前のイメージから書いたということをディレクターにお伝えしたところ、MVでも同じように時間軸を遡って、私が「ユキトキ」を作る構想を練っているところからスタートする形にしていただきました。映像もあえて少し昔の感じが出るようなフィルターをかけたり画面比を4:3にしたりと、そうした要素を映像に取り込んでいただきました。

――途中にアートワークが挿入されていますが、あれはやなぎさんの手によるものですか?

やなぎなぎ 私が描いてるのは「ユキトキ」のジャケットのイメージだけですが、これまでの3作からイメージを起こしていただいて、そこから3作品をザッピングしているみたいなイメージを散りばめていただいています。色んなところに現れているので、画面を一時停止してご覧になっていただくと面白いと思います。



――自撮りのカットもありましたね。

やなぎなぎ はい(笑)。ちょうど春に大阪へ帰ったときに撮りました。ディレクターから「ついでにちょっと花見のお散歩カットを撮ってきてください」と言われて(笑)。最初は周りに人がいない場所を探したりとか、どういうテンションで撮ればいいか、色々試行錯誤していたのですが、桜の季節ということもあって、自撮りしている子がそこかしこにいたので、じゃあ私も堂々とやろうと(笑)。なので、意外とナチュラルな表情にできたかなと思います。季節がばっちり合った、とても楽しいMVになったと思います。

――「ユキハルアメ」はやなぎさんのなかでどんな位置づけの作品になったと言えそうでしょうか?また、リスナーにはどのように聴いていただきたいと思いますか?

やなぎなぎ 私としてはシリーズの3曲があったからこそ、このプラス1曲に辿り着けたという思いがあります。3曲の子供であり、親でありみたいな感じに捉えています。「ユキハルアメ」に辿り着くまでに、『俺ガイル。』も楽曲制作も、たくさんの物語を経てきてました。皆さんも改めてご覧になったとき、聴いたときには感じ方が変わるかもしれませんし、歳月を重ねたことによって変わるところもあるかもしれません。「このときはこんな思いだったな」と、一時停止しつつ聴いていただけるのも10周年記念ソングの醍醐味かなと思いますので、皆さんそれぞれ色んなシーンを思い出しながらご覧になっていただければと思います。

●リリース情報

「ユキハルアメ」

2023年6月28日発売

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■mora

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【初回生産限定盤:アナログジャケット仕様】



価格:¥2,200(税込)

品番:GNCA-1650

<収録曲>

01.ユキハルアメ

作詞:やなぎなぎ 作曲・編曲:北川勝利

02.ユキトキ[TVsize]

作詞:やなぎなぎ 作曲・編曲:北川勝利

03.春擬き[TVsize]

作詞:やなぎなぎ 作曲・編曲:北川勝利

04.芽ぐみの雨[TVsize]

作詞:やなぎなぎ 作曲・編曲:北川勝利

05.ユキハルアメ[Instrumental]

©2013 渡 航、小学館/やはりこの製作委員会はまちがっている。

©渡 航、小学館/やはりこの製作委員会はまちがっている。続

©渡 航、小学館/やはりこの製作委員会はまちがっている。完

関連リンク

やなぎなぎ 公式サイト

https://yanaginagi.net/

やなぎなぎ 10周年記念特設サイト

https://nbcuni-music.com/yanaginagi/10th/

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