日本も無視できない新技術が登場! イスラエルで「空気から水を作る」競争が激化
人口の増加や気候変動、水紛争を原因とした「水の危機」が世界中で懸念されている中、注目を集めているのが「空気から水を作る技術」。イスラエルでは最近、その開発競争が激しくなっているようです。
空気を水に変える奇跡の技術がイスラエルに現れたのは、さかのぼること2012年。「Watergen」というスタートアップが、空気を冷やし、液化して水にする、エアコンみたいな機械を開発しました。
それ以降、この技術の開発競争は加速。最近では、「H2oll」という同じくイスラエルのスタートアップが、Watergenの仕組みをもとにしつつ、同社と比べてより安く、より効率的で、より持続可能な技術を生み出しました。
H2ollの新しい所は、空気全体を冷やす代わりに、抽出した水分子だけを冷やして水に変えること。詳しい仕組みは不明ですが、濃厚塩溶液や「液体乾燥」と呼ばれる方法が使われているようです。
H2ollの「冷やす対象を絞った方法」では、エネルギーの節約が可能と言われています。それでも、空気から水を生み出す中では電気代がかなりの出費になるそう。この費用を抑えるために、同社は太陽光発電の導入を模索していると言います。
空気からできた水は、費用がペットボトルの水の半分で済むだけでなく、品質も水道水よりきれいだとH2ollのCEOは述べています。同社は、この技術を政府や潤沢な資金を持つ組織に販売したり、飲んだ分だけ支払う方式で提供したりすることを検討中。スーパーに導入される可能性もあるようです。
H2ollは、この新技術によって空気から水を作る分野を「劇的に変える」自信があるとのこと。イスラエル工科大学で政府の支援を受けながら研究されていたこの技術には、アメリカ軍のエンジニアも注目しているようです。
翻って日本では、水の危機と聞けば、「途上国の問題か」と無関係に思ってしまう人もいるかもしれませんが、水紛争の要因の一つには「水の所有権の問題」が挙げられています。その視点から見れば、日本でも水道民営化が起きており、水の所有権を真剣に考える時が来ているのですね。空気から水を生み出す技術は日本企業も持っており、最近エジプトに輸出されています。私たちも「どうやって水を守るのか?」と考えてみたら、この技術に対する見方が変わるかもしれません。
【主な参考】
NoCamels. New Generation of ‘Miracle’ Water-From-Air Machines. 2023 June 4
国土交通省. 水資源問題の原因. 2023年6月6日閲覧
朝日新聞. 全国初の上水道民営化、宮城で始まる 料金や災害復旧…残る不安. 2022年4月1日