音質・NCが飛躍! 最新イヤホン「Beats Studio Buds +」比較レビュー
Beats(ビーツ)が左右独立型の完全ワイヤレスイヤホン「Beats Studio Buds +」を6月12日から順次発売します。サウンドやノイズキャンセリング(NC)性能の進化を、併売する現行機種「Beats Studio Buds」や、アップルの人気機種「AirPods Pro」と比べながら体験しました。
Beats最新の完全ワイヤレスイヤホン「Beats Studio Buds +」
安価なだけじゃない、高パフォーマンスな「プラス」
Beatsはアメリカのポータブルオーディオブランドです。音楽プロデューサーのDr. Dre(ドクター ドレ)がブランドを立ち上げた当時、Beatsのヘッドホン・イヤホンは量感あふれる重低音再生を特徴としていたことから、その個性が人気を集めました。
2010年代の中盤にAppleの傘下に加わってから、どんなジャンルの音楽にも合うバランスの良い音づくりに変わりました。Beatsはいくつかの完全ワイヤレスイヤホンを発売していますが、なかでもBeats Studio Buds(2021年発売)ではバランスの良さをキープしながら、迫力ある重低音が復活を遂げた印象を持ちました。
製品名に「+(プラス)」が付いた今回の新機種は、音の心臓部であるドライバーやNC機能、通信機能などを制御するシステムICチップ(SoC)を刷新し、さらに洗練されたワイヤレスイヤホンになりました。
左が最新機種「Beats Studio Buds +」、右は現行の「Beats Studio Buds」
Beatsのオンラインストアでの販売価格は24,800円。NC機能付きの完全ワイヤレスイヤホンが5,000円台から買える時代が来たことを考えれば、Beats Studio Buds +は必ずしも“安価なイヤホン”ではありません。一方、4万円近いアップルのAirPods Pro(第2世代)と機能構成がとても近いことを考えれば、かなり“コスパの良いイヤホン”であることは間違いないでしょう。
最新チップの搭載により使い勝手が向上
現行機種からの進化を整理しながら、Beats Studio Buds +のチェックポイントを振り返ります。
BeatsがApple傘下のブランドになった当初、同社のワイヤレスイヤホン・ヘッドホンにはAppleが独自に設計したワイヤレスオーディオ向けSoCが搭載されました。現行機種の中では「Beats Fit Pro」(2022年発売)がApple H1チップを採用しています。
Beats Studio Buds +には、Beatsが独自にカスタマイズした最新SoCを搭載しています。チップの処理能力が向上したことにより、イヤホンに内蔵するマイクと連携するNCは約1.6倍、外部音取り込みは約2倍のパフォーマンスになりました。ハンズフリー通話も音質がアップしています。後ほど筆者の体験を報告します。
Beats Studio Buds +が搭載する、Beats独自開発のシステムICチップ(SoC)のイメージ
バッテリーのスタミナも改善されています。イヤホン単体の連続駆動時間はNCオン時で約6時間、オフ時で約9時間。従来機種から約1時間ほど伸びていますが、充電ケースによるフルチャージの回数が2回から3回に増え、合計の連続使用時間が約24時間から約36時間まで伸びたことが大きいです。
充電用のコネクタとしてUSB-C端子を採用。新しいMacBookやiPadのラインナップと同じケーブルが使えるメリットがある
ほかにもAppleの「iCloudペアリング」やGoogleの「エコシステムペアリング」のように、同じApple同士、Google同士のデバイス間でBeats Studio Buds +を切り換えながら使いやすくなったことも、新しいチップがもたらした進化です。
独自設計のドライバーを高音質化
Beats Studio Buds +は独自設計による音響コンポーネントを搭載しています。ダイナミック型ドライバーは振動板を2種類のポリマー系素材で構成していますが、振動板の駆動効率を改善したことにより低音再生の見晴らしが良くなっています。
Beats Studio Buds +の独自設計ドライバーのイメージ
振動板が動くことによって、イヤホン内部に生まれる空気の流れがスムーズになるように、ハウジング(外殻)に設ける小さな空気孔(ベンチレーションポート)の設計を変えています。その効果は音がよりスムーズにつながり、耳にかかる圧力の軽減などに結びつきます。
Beats Studio Buds +には新しく最小サイズのXSを加えた4種類のイヤーチップが同梱されています。自分の耳に合う、最適なサイズのイヤーチップを選ぶことでサウンドやNC性能のベストパフォーマンスが引き出せます。イヤホンを本格的に使い始める前にイヤーチップのサイズは入念に調整するべきです。
Beats Studio Buds +に同梱のシリコン製イヤーチップ。左からXS/S/M/Lの4種類
Beats Studio Buds +の音を聴いてみる
現行のBeats Studio Budsと、新しいBeats Studio Buds +のサウンドを聴き比べてみました。音楽プレーヤーはiPhone 14 Pro、音源はApple Musicを選んでいます。
はじめに全体の印象をまとめると、新機種は現行機種と比べて、中低音域の安定感が増しており、高音域の抜けも改善されています。その結果、音場のスケールに豊かな広がりが生まれ、音像がより強く立体的に描かれます。
iPhone 14 Proと組み合わせてApple Musicの楽曲を聴いた
たとえば、YOASOBIの楽曲『アイドル』はボーカルの鮮やかな存在感がそれぞれ大きく違います。重心が下がり安定して、高音域もよく伸びます。リズムセクションの粒立ちがよく、タイトで軽やかな躍動感がとても心地よく感じられます。
The fin.のアルバム「Outer Ego」の楽曲『Sapphire』を、空間オーディオで聴きました。力強くセンターに定位するボーカルの360度周囲を、彩り鮮やかな音が柔らかく包み込みます。現行機種との大きな違いは、Beats Studio Buds +は中低音域のつながりが一段とスムーズになったことです。ストリングスとコーラスによるハーモニーに柔らかく包まれる感覚は、温かな毛布にくるまれて眠るような心地よさです。
クラシックはヴァイオリニスト、ヒラリー・ハーンのアルバム「ECLIPSE」から『ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品53 第3楽章:フィナーレ』を試聴しました。これまでのBeats Studio Budsもとてもナチュラルなバイオリンの音色が楽しめるイヤホンですが、新しいBeats Studio Buds +は楽器の音色が一段と鮮烈です。艶っぽく、切れ味にも富んでいます。余計な付帯音が減り、音の輪郭が明瞭になったことや、音の立ち上がり・立ち下がりの鋭さが向上したことは、新しいドライバーがもたらした好影響に他なりません。
さらに音場の見晴らしがとてもよく、壮大なオーケストラの音の演奏がこの小さなイヤホンから再生されていることに驚くばかりでした。演奏の情景がリアルに思い描けます。
強力になったNC性能。外音取り込みもクリア
続いて、屋外のさまざまな場所でNCと外部音取り込みの効果を確かめました。
NCは現行機種と同様に、低音から高音まで広い音域のノイズをバランスよく消します。特筆すべきは、特に人の話し声が含まれる中高音域のノイズ低減効果が増したことです。カフェなどにぎやかな場所でリモートワークに集中したい場面では、Beats Studio Buds +の真価が発揮されます。バスの走行音やエアコンのファンノイズなど、持続的に響き続ける低い音のノイズも消し込んでくれます。
屋外のさまざまな場所でBeats Studio Buds +のNC性能を確かめた
Beats Studio Buds +の外部音取り込みは、取り込める環境音の量が現行機種よりも増えています。つまり、機能を切り替えると環境音がより明瞭に聞こえます。NCと切り換えながら使うと、違いが明らかに実感されます。一方で、内蔵マイクに由来する若干のノイズ感も気になりました。
AirPods ProとBeats Studio Buds +の性能差は、ひとつはNCと外部音取り込みの効果の高さに表れると思います。ただ、一方でBeats Studio Buds +と同価格帯のワイヤレスイヤホンを比べると、Beats Studio Buds +の完成度がとても高く、ベスト・イン・クラスの性能であるといえます。
内蔵マイクによる通話音声の品質は、Beats Studio Buds +のほうが現行機種よりも大幅に改善しています。イヤホンに内蔵するマイクは約3倍大きくなり、ノイズを抑えながらクリアな通話音声を集められる高感度を獲得しています。マイクの配置を変えたことも奏功しているのでしょう。
コンパクトな本体に大型の通話用マイクを内蔵している
そして何より、Beatsが独自に機械学習を重ねて開発したアルゴリズムが優秀です。7,000時間を超える通話試験データをもとに、環境雑音からイヤホンを装着しているユーザーの通話音声だけを識別しながら伝えます。
筆者も家族の協力を得て試しました。イヤホンを装着した通話相手がにぎやかな場所にいても、にわかに信じられないほど相手の通話環境がシンと静まりかえっていて“声だけ”が聞こえてきます。Beatsのイヤホンと言えばオーディオリスニングが主な用途として筆者も捉えていましたが、ここまで通話音質が大きく改善されたBeats Studio Buds +はビジネスシーンにも活躍してくれると思います。
Beats Studio Buds +の魅力は? AirPods Proと比較
AirPods Proと比較しながら、Beats Studio Buds +の魅力を解説します。
先述した通りNCと外部音取り込みの完成度はAirPods Proに軍配があがるものの、サウンドのバランス、パワフルな低音再生についてはBeats Studio Buds +も引けを取りません。そもそも、オーディオは自分の好みに合う音のヘッドホン・イヤホンを選ぶことが何よりの幸せにつながります。Apple Storeなど、両方のイヤホンを聴き比べられる環境で試聴することをおすすめします。
AirPods Proとも音質やNC性能を比較した
ふたつの製品には15,000円の価格差があります。サウンドやNCの効果などBeats Studio Buds +が到達しているレベルの高さを考えれば、コスパの良さは圧倒的です。
AirPods Proと比べて、Beats Studio Buds +が良い点もあります。
ひとつは、イヤホンと充電ケースの内部機構が見える斬新なトランスペアレントを含む、3色のカラバリが選べることです。もうひとつは充電コネクタがUSB-Cなので、MacやiPad、その他最新のノートPCと同じ充電ケーブルを共用できることも、旅行や出張に持ち出すときの大きなメリットになります。
そして何よりも、Appleデバイスと同じ使い勝手をAndroid用「Beats」アプリで実現したことです。イヤホン本体のリモコンボタンの設定をカスタマイズしたり、AndroidスマホのユーザーもiPhoneユーザーと変わらない使い勝手が得られるところに、基本はiPhoneに最適化したワイヤレスイヤホンであるAirPodsとの大きな違いがあります。
iPhoneは設定画面からイヤホンの各機能にアクセスできる
Android版「Beats」アプリの画面
Beatsの完全ワイヤレスイヤホンのラインナップには、Apple H1チップを搭載するBeats Fit Proもあります。ダイナミックヘッドトラッキングにイヤーチップ装着状態テストなど、AirPods Proにより近い機能をそろえているイヤホンです。特に空間オーディオ周辺のエンターテインメントをフルに味わいたい方には良い選択肢です。
Android版アプリの画面。リモコンボタンの長押しをノイズコントロールとボイスアシスタントの呼び出しに設定するか、または音量のアップダウン、どちらかが排他になるものの選択できる
Beatsの新しい鉄板スタンダードモデル
Beats Studio Buds +はイヤホン本体と充電ケースがとてもコンパクトなうえ、本体はIPX4等級の耐汗耐水仕様です。スポーツシーンにも最高のサウンドが楽しめるイヤホンとしてもおすすめです。
イヤホン本体は背面が先つぼみの形になっているので、ケースから着脱する際に本体を落とさないように注意が必要です。移動中はいったん立ち止まって着脱する方がよいでしょう。
着実な進化を遂げた人気ワイヤレスイヤホンのスタンダードモデルが、また多くのBeatsファンを魅了するはずです。
著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら
Beats最新の完全ワイヤレスイヤホン「Beats Studio Buds +」
Beatsはアメリカのポータブルオーディオブランドです。音楽プロデューサーのDr. Dre(ドクター ドレ)がブランドを立ち上げた当時、Beatsのヘッドホン・イヤホンは量感あふれる重低音再生を特徴としていたことから、その個性が人気を集めました。
2010年代の中盤にAppleの傘下に加わってから、どんなジャンルの音楽にも合うバランスの良い音づくりに変わりました。Beatsはいくつかの完全ワイヤレスイヤホンを発売していますが、なかでもBeats Studio Buds(2021年発売)ではバランスの良さをキープしながら、迫力ある重低音が復活を遂げた印象を持ちました。
製品名に「+(プラス)」が付いた今回の新機種は、音の心臓部であるドライバーやNC機能、通信機能などを制御するシステムICチップ(SoC)を刷新し、さらに洗練されたワイヤレスイヤホンになりました。
左が最新機種「Beats Studio Buds +」、右は現行の「Beats Studio Buds」
Beatsのオンラインストアでの販売価格は24,800円。NC機能付きの完全ワイヤレスイヤホンが5,000円台から買える時代が来たことを考えれば、Beats Studio Buds +は必ずしも“安価なイヤホン”ではありません。一方、4万円近いアップルのAirPods Pro(第2世代)と機能構成がとても近いことを考えれば、かなり“コスパの良いイヤホン”であることは間違いないでしょう。
最新チップの搭載により使い勝手が向上
現行機種からの進化を整理しながら、Beats Studio Buds +のチェックポイントを振り返ります。
BeatsがApple傘下のブランドになった当初、同社のワイヤレスイヤホン・ヘッドホンにはAppleが独自に設計したワイヤレスオーディオ向けSoCが搭載されました。現行機種の中では「Beats Fit Pro」(2022年発売)がApple H1チップを採用しています。
Beats Studio Buds +には、Beatsが独自にカスタマイズした最新SoCを搭載しています。チップの処理能力が向上したことにより、イヤホンに内蔵するマイクと連携するNCは約1.6倍、外部音取り込みは約2倍のパフォーマンスになりました。ハンズフリー通話も音質がアップしています。後ほど筆者の体験を報告します。
Beats Studio Buds +が搭載する、Beats独自開発のシステムICチップ(SoC)のイメージ
バッテリーのスタミナも改善されています。イヤホン単体の連続駆動時間はNCオン時で約6時間、オフ時で約9時間。従来機種から約1時間ほど伸びていますが、充電ケースによるフルチャージの回数が2回から3回に増え、合計の連続使用時間が約24時間から約36時間まで伸びたことが大きいです。
充電用のコネクタとしてUSB-C端子を採用。新しいMacBookやiPadのラインナップと同じケーブルが使えるメリットがある
ほかにもAppleの「iCloudペアリング」やGoogleの「エコシステムペアリング」のように、同じApple同士、Google同士のデバイス間でBeats Studio Buds +を切り換えながら使いやすくなったことも、新しいチップがもたらした進化です。
独自設計のドライバーを高音質化
Beats Studio Buds +は独自設計による音響コンポーネントを搭載しています。ダイナミック型ドライバーは振動板を2種類のポリマー系素材で構成していますが、振動板の駆動効率を改善したことにより低音再生の見晴らしが良くなっています。
Beats Studio Buds +の独自設計ドライバーのイメージ
振動板が動くことによって、イヤホン内部に生まれる空気の流れがスムーズになるように、ハウジング(外殻)に設ける小さな空気孔(ベンチレーションポート)の設計を変えています。その効果は音がよりスムーズにつながり、耳にかかる圧力の軽減などに結びつきます。
Beats Studio Buds +には新しく最小サイズのXSを加えた4種類のイヤーチップが同梱されています。自分の耳に合う、最適なサイズのイヤーチップを選ぶことでサウンドやNC性能のベストパフォーマンスが引き出せます。イヤホンを本格的に使い始める前にイヤーチップのサイズは入念に調整するべきです。
Beats Studio Buds +に同梱のシリコン製イヤーチップ。左からXS/S/M/Lの4種類
Beats Studio Buds +の音を聴いてみる
現行のBeats Studio Budsと、新しいBeats Studio Buds +のサウンドを聴き比べてみました。音楽プレーヤーはiPhone 14 Pro、音源はApple Musicを選んでいます。
はじめに全体の印象をまとめると、新機種は現行機種と比べて、中低音域の安定感が増しており、高音域の抜けも改善されています。その結果、音場のスケールに豊かな広がりが生まれ、音像がより強く立体的に描かれます。
iPhone 14 Proと組み合わせてApple Musicの楽曲を聴いた
たとえば、YOASOBIの楽曲『アイドル』はボーカルの鮮やかな存在感がそれぞれ大きく違います。重心が下がり安定して、高音域もよく伸びます。リズムセクションの粒立ちがよく、タイトで軽やかな躍動感がとても心地よく感じられます。
The fin.のアルバム「Outer Ego」の楽曲『Sapphire』を、空間オーディオで聴きました。力強くセンターに定位するボーカルの360度周囲を、彩り鮮やかな音が柔らかく包み込みます。現行機種との大きな違いは、Beats Studio Buds +は中低音域のつながりが一段とスムーズになったことです。ストリングスとコーラスによるハーモニーに柔らかく包まれる感覚は、温かな毛布にくるまれて眠るような心地よさです。
クラシックはヴァイオリニスト、ヒラリー・ハーンのアルバム「ECLIPSE」から『ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品53 第3楽章:フィナーレ』を試聴しました。これまでのBeats Studio Budsもとてもナチュラルなバイオリンの音色が楽しめるイヤホンですが、新しいBeats Studio Buds +は楽器の音色が一段と鮮烈です。艶っぽく、切れ味にも富んでいます。余計な付帯音が減り、音の輪郭が明瞭になったことや、音の立ち上がり・立ち下がりの鋭さが向上したことは、新しいドライバーがもたらした好影響に他なりません。
さらに音場の見晴らしがとてもよく、壮大なオーケストラの音の演奏がこの小さなイヤホンから再生されていることに驚くばかりでした。演奏の情景がリアルに思い描けます。
強力になったNC性能。外音取り込みもクリア
続いて、屋外のさまざまな場所でNCと外部音取り込みの効果を確かめました。
NCは現行機種と同様に、低音から高音まで広い音域のノイズをバランスよく消します。特筆すべきは、特に人の話し声が含まれる中高音域のノイズ低減効果が増したことです。カフェなどにぎやかな場所でリモートワークに集中したい場面では、Beats Studio Buds +の真価が発揮されます。バスの走行音やエアコンのファンノイズなど、持続的に響き続ける低い音のノイズも消し込んでくれます。
屋外のさまざまな場所でBeats Studio Buds +のNC性能を確かめた
Beats Studio Buds +の外部音取り込みは、取り込める環境音の量が現行機種よりも増えています。つまり、機能を切り替えると環境音がより明瞭に聞こえます。NCと切り換えながら使うと、違いが明らかに実感されます。一方で、内蔵マイクに由来する若干のノイズ感も気になりました。
AirPods ProとBeats Studio Buds +の性能差は、ひとつはNCと外部音取り込みの効果の高さに表れると思います。ただ、一方でBeats Studio Buds +と同価格帯のワイヤレスイヤホンを比べると、Beats Studio Buds +の完成度がとても高く、ベスト・イン・クラスの性能であるといえます。
内蔵マイクによる通話音声の品質は、Beats Studio Buds +のほうが現行機種よりも大幅に改善しています。イヤホンに内蔵するマイクは約3倍大きくなり、ノイズを抑えながらクリアな通話音声を集められる高感度を獲得しています。マイクの配置を変えたことも奏功しているのでしょう。
コンパクトな本体に大型の通話用マイクを内蔵している
そして何より、Beatsが独自に機械学習を重ねて開発したアルゴリズムが優秀です。7,000時間を超える通話試験データをもとに、環境雑音からイヤホンを装着しているユーザーの通話音声だけを識別しながら伝えます。
筆者も家族の協力を得て試しました。イヤホンを装着した通話相手がにぎやかな場所にいても、にわかに信じられないほど相手の通話環境がシンと静まりかえっていて“声だけ”が聞こえてきます。Beatsのイヤホンと言えばオーディオリスニングが主な用途として筆者も捉えていましたが、ここまで通話音質が大きく改善されたBeats Studio Buds +はビジネスシーンにも活躍してくれると思います。
Beats Studio Buds +の魅力は? AirPods Proと比較
AirPods Proと比較しながら、Beats Studio Buds +の魅力を解説します。
先述した通りNCと外部音取り込みの完成度はAirPods Proに軍配があがるものの、サウンドのバランス、パワフルな低音再生についてはBeats Studio Buds +も引けを取りません。そもそも、オーディオは自分の好みに合う音のヘッドホン・イヤホンを選ぶことが何よりの幸せにつながります。Apple Storeなど、両方のイヤホンを聴き比べられる環境で試聴することをおすすめします。
AirPods Proとも音質やNC性能を比較した
ふたつの製品には15,000円の価格差があります。サウンドやNCの効果などBeats Studio Buds +が到達しているレベルの高さを考えれば、コスパの良さは圧倒的です。
AirPods Proと比べて、Beats Studio Buds +が良い点もあります。
ひとつは、イヤホンと充電ケースの内部機構が見える斬新なトランスペアレントを含む、3色のカラバリが選べることです。もうひとつは充電コネクタがUSB-Cなので、MacやiPad、その他最新のノートPCと同じ充電ケーブルを共用できることも、旅行や出張に持ち出すときの大きなメリットになります。
そして何よりも、Appleデバイスと同じ使い勝手をAndroid用「Beats」アプリで実現したことです。イヤホン本体のリモコンボタンの設定をカスタマイズしたり、AndroidスマホのユーザーもiPhoneユーザーと変わらない使い勝手が得られるところに、基本はiPhoneに最適化したワイヤレスイヤホンであるAirPodsとの大きな違いがあります。
iPhoneは設定画面からイヤホンの各機能にアクセスできる
Android版「Beats」アプリの画面
Beatsの完全ワイヤレスイヤホンのラインナップには、Apple H1チップを搭載するBeats Fit Proもあります。ダイナミックヘッドトラッキングにイヤーチップ装着状態テストなど、AirPods Proにより近い機能をそろえているイヤホンです。特に空間オーディオ周辺のエンターテインメントをフルに味わいたい方には良い選択肢です。
Android版アプリの画面。リモコンボタンの長押しをノイズコントロールとボイスアシスタントの呼び出しに設定するか、または音量のアップダウン、どちらかが排他になるものの選択できる
Beatsの新しい鉄板スタンダードモデル
Beats Studio Buds +はイヤホン本体と充電ケースがとてもコンパクトなうえ、本体はIPX4等級の耐汗耐水仕様です。スポーツシーンにも最高のサウンドが楽しめるイヤホンとしてもおすすめです。
イヤホン本体は背面が先つぼみの形になっているので、ケースから着脱する際に本体を落とさないように注意が必要です。移動中はいったん立ち止まって着脱する方がよいでしょう。
着実な進化を遂げた人気ワイヤレスイヤホンのスタンダードモデルが、また多くのBeatsファンを魅了するはずです。
著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら