「将棋の世界しか知らなかった」竹俣紅アナがアナウンサーの道を選んだわけ
フジテレビ『みんなのKEIBA』MC
竹俣紅アナウンサーインタビュー(後編)
フジテレビの競馬中継番組『みんなのKEIBA』のMCを担当する竹俣紅アナ。今回は、彼女がどうしてアナウンサーになったのか、さらには今後どんなアナウンサーになっていきたいのか、話を聞いた――。
◆前編:『みんなのKEIBA』新MC・竹俣紅アナが語る初めての競馬の世界>>
――竹俣アナはアナウンサーになる以前、女流棋士として活躍されていました。将棋はいつ頃から始めたのですか。
「6歳の時に、近所の本屋さんでたまたま子ども向けの将棋の本を見つけて。駒に漢字が書いてあるのが面白くて、その本を買ってもらったのがきっかけでした」
――それで打ち始めたらハマった、と。
「そうですね。家族は誰も将棋ができなかったので、最初は(将棋盤の)こちらから一手指して、向こうに回って一手指してと、"ぼっち"で将棋をやっていたのですが(苦笑)、さすがに見かねた母が、日本将棋連盟が開いている子ども将棋スクールを見つけてきてくれました。そこで、初めて人と指して、楽しくなっていったという感じです。
しかも当時は、私が小学1年生になる前の春休みだったと記憶しているのですが、小学6年生くらいの男の子に勝てて、それがすごくうれしかったというのもありました」
――『みんなのKEIBA』に初めてMCとして出演された際、将棋にも競馬と似たような戦法があるという話をされていましたね。
「将棋には、『逃げ』とか『差し』とか、そういう名前はついていないのですが、棋士にはそれぞれ"棋風"があって、序盤から状況をよくしていくタイプの人もいますし、終盤に追い上げていくタイプの人もいる。そういうところは、馬(の脚質)と似ているのかなと思います。
私は序盤からよくしていかないと勝てないタイプだったので、馬に例えると"逃げ"や"先行"という感じですね。だからこそ、差し馬はカッコいいなと憧れます(笑)」
――競馬には将棋との共通点があるんですね。
「事前にいろいろと調べる過程はよく似ていると思います。
たとえば、将棋で次の公式戦での対戦相手が決まると、その相手が今までに差してきた内容を全部見て分析するのですが、相手が裏をかいてきたり、新たな戦法を取り入れたりして、データどおりに進むとは限らない。そういうところは競馬の予想とよく似ています。
そういう経験があったので、私は(予想のための細かいデータを)事前に調べるということには慣れているのだと思います」
――ところで、女流棋士の道を歩んでいた竹俣アナが、なぜアナウンサーになろうと思ったのですか。
「私は大学時代にテレビに出るにあたって、発声というものを学ぶためにアナウンススクールへ通っていたのですが、そこでは相手に伝わる読み方をしなければいけないという"伝えるプロフェッショナルの世界"があることを知り、興味を持ったのがきっかけです。
アナウンサーになろうと思ったというよりは、就職活動をしようと思って、いろいろな業界のインターンシップに行きました。マスコミはそのひとつで、テレビ業界に関しては、私は学生時代から出演者側で関わっていたので、ある意味、身近な職業と言いますか、他の職業より仕事の内容が想像しやすかったということもありました。就職活動をするにあたって、けじめをつけようと、日本将棋連盟を退会しました」
――学生時代にさまざま番組に出演していた時は、アナウンサーの方たちをどう見ていたのですか。
「(フジテレビの情報番組)『Mr.サンデー』(毎週日曜22時〜)にコメンテーターとして出演させていただいた時のことですが、椿原慶子アナウンサーがMCを担当されていて、どんな時も臨機応変に対応されている姿を見て、すばらしいプロフェッショナルの仕事だなと思っていました」
――長く続けた将棋を辞めることに迷いはなかったのですか。
「将棋自体は今でも好きですが、小学生の時に将棋を始めて、何となく強くなったらプロになるものだという感覚でやってきて、中学2年生の時に女流棋士になって。強くなるためにがむしゃらに勉強してきたら、こうなっていたという感じだったので。
大学に入って自分の将来のことをもう一度よく考えた時に、別の職業に就くというのも選択肢としてあるのではないかなと思いました」
――この春でフジテレビ入社3年目を迎えました。これまでのアナウンサー生活を振り返っていかがですか。
「入社1年目に比べ2年目、2年目に比べて今、『こういう声も出せるようになったんだな』と幅の広がりを感じることができた時は、自分でも成長したなと思います。これからも自分の声をどんどん磨いていけたらいいなと思っています」
――アナウンサーになって一番苦労したことは、どんなことですか。
「学生時代にテレビに出ていた影響もあって、1年目は特に、アナウンサーとして見てもらえないことにすごく悩みました」
――どうしても元女流棋士のイメージが強くなってしまう。
「自分がどれだけアナウンス技術を磨いても、アナウンサーとはなかなか思ってもらえない。だからこそ、自分が女流棋士時代の話をすると、余計にアナウンサーではない印象を与えてしまうのかなと思い、昔の話をするのをやめておこうと思ったりすることもありました。
まだ20数年しか生きていないうちの15年を将棋に費やしてきたわけですから、『そりゃあ、そうなるよな』とは思うんですけど......。
でも、今はそのように考えないようになりました。人にどう見られるかは、自分が考えても仕方のないことなので。だから一生懸命に仕事をして、先輩方やスタッフの方、周りの人たちにちゃんと仕事ができるアナウンサーなんだと思ってもらえることが大事かな、と」
――自分なりに折り合いをつけられるようになった、と。
「そうですね。今回競馬番組を担当するにあたっても、今まで自分が将棋の研究をしてきて、モノを調べることに慣れていたというところがすごく生かされているなと思いますし、同じ勝負の世界という、ちょっと感覚的には通じるところもある場所で、またこういう仕事にめぐり逢えたことを今はうれしく思っています」
――『みんなのKEIBA』はテレビを見ていてもスタジオ内の和気あいあいとした雰囲気が伝わってきますが、実際の居心地はいかがですか。
「現場へ行くと、競馬の話ができるのですごく楽しいです。家にいると、むしろ私が家族に説明する役になってしまうので......(苦笑)。私のような初心者の素朴な疑問にも、DAIGOさんはじめ、井崎(脩五郎)先生や細江(純子)さん、佐野(瑞樹)アナウンサーやスタッフのみなさんが丁寧に答えてくださって、ありがたいなと思っています。
出演者のみなさんは本当に競馬を心から楽しんでいて、もちろんレース中はスタジオの音声はオフになっているのですが、その間もみんなが手に汗握ってそれぞれの馬を応援している。すごく楽しい現場だなと思います」
――番組のMCとして、どんなことを心がけていますか。
「オッズや払い戻しの情報を正確にお伝えすることや、時間管理をきちんと行なうことが大切な仕事だと思っています。ですが、なぜかその......、私の予想を発表することになり、今までの『みんなのKEIBA』のMC像とはちょっと変わってきているのかな、と。これで大丈夫なのだろうかと、そこはちょっと不安なのですが......(苦笑)。
でも、それを面白いと思っていただけたらうれしいですし、競馬初心者の方にも楽しんでいただけるような仕事ができたらいいなと思っています」
――今後、番組内でやってみたいことはありますか。
「とにかく、わからないことだらけなので、何でもやってみたいです。まだ競馬場の中すら把握しきれていないので、まずは競馬場グルメを味わうところから始めるのもいいかもしれませんね」
(おわり)
竹俣紅(たけまた・べに)
1998年6月27日生まれ。東京都出身。2021年フジテレビ入社。
趣味:おいしいおそば屋さん巡り ウォーキング ガチャピン
モットー:元気に、地道に、前向きに
『みんなのKEIBA』(毎週日曜・午後3時00分〜)
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