ミラノダービーとなったチャンピオンズリーグ(CL)準決勝。ミランとインテルが準決勝で顔を合わせるのは2002?03シーズン以来20年ぶりの出来事だ。その時、勝利を飾ったミランは決勝でユベントスと対戦。準決勝に続き決勝もセリエA同士の一戦となった。

 だが準決勝、そしてオールドトラッフォードで行なわれた決勝はともに、試合そのものは退屈極まりなかった。その正面席に座る中立的な観衆のなかには、守り合いの末に0−0、延長PK戦(3−2でミランの優勝)に及ぶ展開に、たまらず居眠りする人も少なからずいた。

 イタリアのサッカーはその前後から下り坂に入っていた。スペイン、イングランドに抜かれた。現在のUEFAランクはドイツ・ブンデスリーガの後塵を拝し4位。その影響はイタリア代表チームにも及ぶ。2014年W杯でグループリーグ敗退。2018年W杯、2022年W杯は本大会に進むことさえできなかった。

 ところが今季、欧州戦線を戦うセリエA勢は一転、覚醒したかのように軒並み好成績を収めている。CLに加え、ヨーロッパリーグ(EL)でも、ユベントス、ローマの2チームが、その下のカンファレンスリーグでもフィオレンティーナが、それぞれベスト4に進出。欧州戦線を計5チームが生き残っている状態にある。もちろんこれは欧州ナンバーワンの成績だ。

 ミラン対インテル。ジュゼッペ・メアッツァに7万5532人を集めて行なわれた準決勝第1戦は、20年前とは異なり、ミラノ市民以外も楽しめる好調イタリアの一端を垣間見る試合となった。

 試合は、どちらかと言えば守備的なサッカーを展開するインテルがまず攻めた。開始8分ハカン・チャルハノールの左CKをエディン・ジェコが左足で合わせ先制する。マーカーであるミランDFダビデ・カラブリアの対応が緩慢だったことも手伝った。


ミラン戦で先制ゴールを決めたエディン・ジェコ(インテル)

 先制点を奪ってもインテルは一気呵成に攻め立てた。追加点はその直後だった。11分、左サイドを走るウイングバック、フェデリコ・ディマルコがドリブルで前進。早めに折り返すと、アルメニア代表のヘンリク・ムヒタリアンがそれに合わせ、ミランゴールを揺るがした。ラウタロ・マルティネスがボールスルーする形になったことで、ゴール正面は一気に空白が生まれた。

【ミランに逆転の可能性は?】

 開始早々の3分の間に2ゴール。ミランは入り方を間違えたと言うべきか、出鼻をくじかれ、なおもインテルの攻撃を受け続けた。インテルは3点目を積極果敢に狙いにいった。

 その5分後(16分)にはチャルハノールが、ポスト直撃弾を放てば、そのこぼれを拾ったムヒタリアンが、GKマイク・メニャンを強襲する右足シュートを続けざまに飛ばした。そのまさにイケイケムードは、20年前のインテルからは想像できないノリだった。

 インテルの攻勢はさらに続く。右ウイングバック、デンゼル・ダンフリースがスローインを相手ペナルティエリア方向に向けて投げ入れると、ミランCBシモン・ケアーが処理を誤り後逸。ラウタロがその先を走ると、ケアーはたまらずその脇腹に手をかけた。スペイン人の主審へスース・ジル・マンサーノは、転倒するラウタロを見て、すかさずPKスポットを指さした。しかしVAR室から連絡が入る。それを受けビデオを見直したマンサーノ主審はPK判定を覆した。

 3点目が入っていれば、試合は第2戦を待たずに、インテルの勝利で八分どおり決まっていたはずだ。チャルハノール、ムヒタリアンのシュートが決まらず、PK判定が取り消されたことは、接戦を願う第三者にとっては歓迎すべき出来事だった。

 後半、攻撃的サッカー度でインテルに勝るミランは立て直しを図り、押し返す。2点先取したインテルが、勝利の二文字が目の前にちらつき始めたのか、守勢に回るシーンが続いた。

 2−0は1点差に詰め寄られれば一転、逆境にさらされる。差はあってないようなもの、セーフティーリードではない、とよく言われる。説得力があると言えば、ある。当たり前の話、とも言える。だが、実際に2−0から2−1とされ、お尻に火がついたことで慌てふためき2−2とされ、挙げ句、逆転に追い込まれるという展開を見せられた経験は実は少ない。言われているほど、滅多にある話ではない。

 しかし、それは試合時間が90分の場合だ。180分の場合、話は別になる。

 第2戦でミランが先制する可能性はどれほどあるか。カギを握るのは先週末のラツィオ戦で負傷し、このインテル戦の招集メンバーから外れたラファエル・レオンだ。188センチの長身左ウイングが、スタメンを張ることができるか否か。それこそが、試合がもつれるかどうかのカギになる。

 今季、セリエAで奪った得点は12。ラファエル・レオンは得点ランキングで6位につけるチーム一の点取り屋だ。左ウイングでありながら、兼ストライカーとしてチームを牽引。欧州市場で今季、最も値を上げた選手と言われるポルトガル代表の23歳は、来週の火曜日、ジュゼッペ・メアッツァのピッチに立つことができるか。回復を祈りたい。