明日の株式相場に向けて=焦らず「信用不安」のステージを見極める
きょう(26日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比203円安の2万8416円と反落。前日の欧州株市場では独DAX指数を除き主要国の株価指数が総じて軟調だったほか、米国株市場でも金融株や景気敏感株、ハイテク系グロース株と幅広く売られ、NYダウ、ナスダック総合株価指数ともに下落。ナスダック指数の下落率は約2%に達した。騰落レシオからは、既に膨らみ切った風船の状態にあった東証プライム市場は当然ながら売りに晒される格好となった。
米地銀ファースト・リパブリック・バンク<FRC>が多額の預金流出が判明したことを受けて50%安という急落に見舞われた。もっとも、50%安というヘッドラインにはドキッとさせられるが、日本株でいえば株価100円の銘柄が20円くらいまで暴落した後、いったん下げ止まるも余震によって10円まで下がったようなもの。既にこの地銀については、50%安する以前に倒産扱いの株価にあった。シリコンバレーバンク(SVB)など相次ぐ米銀破綻について、リーマン・ショック時のような連鎖性は全くないという結論で、当局は幕引きを図ったが、どうも底辺では地殻変動が起きているという印象が拭えなくなってきた。欧州のクレディ・スイス<CS>については民間に国が手を貸す形で支えたものの、銀行は元来「信用」で成り立っていることを考えると、このコンセプトが揺らぎ始めた時、パニックを完全に封じ込められるのかどうか。いかに強靱な堤(つつみ)でも、どこかに小さな穴が開くと負のスパイラルが発生し、瓦解につながっていく。
今月7日以降、東京市場ではリスク選好ムードが強まり、日経平均は前日のザラ場高値まで半月で1300円強も水準を切り上げていた。サイコロジカルラインは10勝2敗。しかも下落した2日間を合計しても下げ幅は150円にも満たない。かなり上値指向の強い波動を形成していたことが分かる。欧米のリセッション懸念に加え、相次ぐ米銀破綻に始まった金融リスクをわずかな時間で織り込み、上昇トレンドに回帰した。
この一連の値動きに違和感を覚えたとしても、現実に勝る道理はない。不合理に見える動きであったにせよ株価の動向こそが真理であって、理屈は後からそれに寄せるように状況を正当化する道具でしかない。日経平均が強い背景を説明する市場関係者の主張もまた画一的であった。まずは4月の外国人買いアノマリーに加え、東証のPBR1倍割れ企業に対する改善要請、そして著名投資家ウォーレン・バフェット氏の日本株追加投資に対する前向き発言。しかし、これらが本当に機能して株価を押し上げたという確証はない。
逆に相場が下がり始めると、不思議と悪材料が頻発するようなイメージがあるが、それは実はそれまでにも見えていたはずだが、光が当てられていなかったという話である。今、スポットライトの向きはフラッシュメモリー市況や鉄鉱石価格の急落、不動産バブルの崩壊、アルゼンチンなど新興国のデフォルト不安といった懸念材料の方に切り替わった感がある。市場では「(次回FOMCで利上げ打ち止めとしても)高金利の影響が実体経済に色濃く反映され始めた。経済の実勢悪に視線を向けざるを得ないターンに入った」(ネット証券マーケットアナリスト)という声も聞かれる。
きょうの相場で象徴的だったのはレーザーテック<6920.T>。相変わらずプライム市場で一頭地を抜く高水準の売買代金をこなしているが、株価の方はマドを開けて下放れを鮮明とし、昨年10月下旬以来約半年ぶりとなる2万円大台割れとなった。個人投資家の参戦も活発な銘柄だが、グロース株の親玉のような存在であり、今の市場センチメントの冷え込みを暗示している。これと合わせて、新興市場銘柄では直近IPOのispace<9348.T>、そしてティムス<4891.T>が、グロース選好の投資家心理をフリーズさせた。安い時に拾うのが株のセオリーだが、ここは全般論として安易に押し目買いに動く場面ではなさそうだ。
あすのスケジュールでは、3月の建機出荷、2月の景気動向指数など。海外では、トルコ中銀の政策金利発表、米国では1~3月期実質GDPの発表に耳目が集まる。また、週間の米新規失業保険申請件数、3月の米仮契約住宅販売指数も開示される。国内主要企業の決算発表では、信越化学工業<4063.T>、オリエンタルランド<4661.T>、日立製作所<6501.T>、キーエンス<6861.T>、JR東日本<9020.T>などがある。また、海外主要企業ではインテル<INTC>、キャタピラー<CAT>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>が決算を発表する。(銀)
出所:MINKABU PRESS
米地銀ファースト・リパブリック・バンク<FRC>が多額の預金流出が判明したことを受けて50%安という急落に見舞われた。もっとも、50%安というヘッドラインにはドキッとさせられるが、日本株でいえば株価100円の銘柄が20円くらいまで暴落した後、いったん下げ止まるも余震によって10円まで下がったようなもの。既にこの地銀については、50%安する以前に倒産扱いの株価にあった。シリコンバレーバンク(SVB)など相次ぐ米銀破綻について、リーマン・ショック時のような連鎖性は全くないという結論で、当局は幕引きを図ったが、どうも底辺では地殻変動が起きているという印象が拭えなくなってきた。欧州のクレディ・スイス<CS>については民間に国が手を貸す形で支えたものの、銀行は元来「信用」で成り立っていることを考えると、このコンセプトが揺らぎ始めた時、パニックを完全に封じ込められるのかどうか。いかに強靱な堤(つつみ)でも、どこかに小さな穴が開くと負のスパイラルが発生し、瓦解につながっていく。
今月7日以降、東京市場ではリスク選好ムードが強まり、日経平均は前日のザラ場高値まで半月で1300円強も水準を切り上げていた。サイコロジカルラインは10勝2敗。しかも下落した2日間を合計しても下げ幅は150円にも満たない。かなり上値指向の強い波動を形成していたことが分かる。欧米のリセッション懸念に加え、相次ぐ米銀破綻に始まった金融リスクをわずかな時間で織り込み、上昇トレンドに回帰した。
この一連の値動きに違和感を覚えたとしても、現実に勝る道理はない。不合理に見える動きであったにせよ株価の動向こそが真理であって、理屈は後からそれに寄せるように状況を正当化する道具でしかない。日経平均が強い背景を説明する市場関係者の主張もまた画一的であった。まずは4月の外国人買いアノマリーに加え、東証のPBR1倍割れ企業に対する改善要請、そして著名投資家ウォーレン・バフェット氏の日本株追加投資に対する前向き発言。しかし、これらが本当に機能して株価を押し上げたという確証はない。
逆に相場が下がり始めると、不思議と悪材料が頻発するようなイメージがあるが、それは実はそれまでにも見えていたはずだが、光が当てられていなかったという話である。今、スポットライトの向きはフラッシュメモリー市況や鉄鉱石価格の急落、不動産バブルの崩壊、アルゼンチンなど新興国のデフォルト不安といった懸念材料の方に切り替わった感がある。市場では「(次回FOMCで利上げ打ち止めとしても)高金利の影響が実体経済に色濃く反映され始めた。経済の実勢悪に視線を向けざるを得ないターンに入った」(ネット証券マーケットアナリスト)という声も聞かれる。
きょうの相場で象徴的だったのはレーザーテック<6920.T>。相変わらずプライム市場で一頭地を抜く高水準の売買代金をこなしているが、株価の方はマドを開けて下放れを鮮明とし、昨年10月下旬以来約半年ぶりとなる2万円大台割れとなった。個人投資家の参戦も活発な銘柄だが、グロース株の親玉のような存在であり、今の市場センチメントの冷え込みを暗示している。これと合わせて、新興市場銘柄では直近IPOのispace<9348.T>、そしてティムス<4891.T>が、グロース選好の投資家心理をフリーズさせた。安い時に拾うのが株のセオリーだが、ここは全般論として安易に押し目買いに動く場面ではなさそうだ。
あすのスケジュールでは、3月の建機出荷、2月の景気動向指数など。海外では、トルコ中銀の政策金利発表、米国では1~3月期実質GDPの発表に耳目が集まる。また、週間の米新規失業保険申請件数、3月の米仮契約住宅販売指数も開示される。国内主要企業の決算発表では、信越化学工業<4063.T>、オリエンタルランド<4661.T>、日立製作所<6501.T>、キーエンス<6861.T>、JR東日本<9020.T>などがある。また、海外主要企業ではインテル<INTC>、キャタピラー<CAT>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>が決算を発表する。(銀)
出所:MINKABU PRESS