「石灰化上皮腫」の症状など医師が監修!触ると動く硬いしこりには要注意!
石灰化上皮腫とはどのような病気なのでしょうか。その詳しい症状・できやすい部位・よく似た病気などを詳しく解説します。
石灰化上皮腫とは、皮下に石灰化した硬い腫瘍ができる病気です。初期の自覚症状はほとんどなく、ゆっくりと硬いしこりを自覚できるようになります。
この腫瘍は良性腫瘍なので、決して危険なものではありません。しかし、摘出するには手術が必要です。
放置すれば腫瘍が破裂して激痛に襲われたり患部が感染を起こしたりすることもあるため、注意しましょう。
皮下にしこりを見つけた際は、早めに受診するのがおすすめです。
石灰化上皮腫の症状と原因
石灰化上皮腫とはどんな病気ですか。
石灰化上皮腫とは、皮下に石灰成分を含んだ硬い腫瘍ができる病気のことです。発症の原因は明らかになっていませんが、毛根にある毛母細胞の存在が大きく関係しているといわれています。自覚症状はほとんどありませんが、皮下に硬いしこりが触れることで病気に気付くことが多いです。また、しこり部分にかゆみを感じる場合や押すと痛みを感じることもあります。しこりの上の皮膚の色は、基本的には通常の皮膚の色と変わりません。しかし、皮膚が薄い場所に発生した場合には、黒や黄色に見えることもあります。
基本的に、石灰化上皮腫は良性腫瘍なので身体に悪い影響を与えるようなものではありません。しかし、放置して腫瘍が大きくなれば破裂してしまう危険があります。患部が細菌感染を起こしてしまうこともあるため、早めに医療機関を受診しましょう。
石灰化上皮腫ができやすい部位はどこですか。
石灰化上皮腫は頬などの顔面・まぶた・首筋・腕などに発生することが多いです。この腫瘍は、触ると動くのが特徴です。また、石灰化上皮腫は20歳以下の若年層に好発するというデータがあります。さらに、男性よりも女性に発症しやすいことも明らかになっています。
石灰化上皮腫の原因はなんですか。
石灰化上皮腫の原因は明らかになっていません。また、石灰化上皮腫は、別名「毛母腫(pilomatorixoma)」と呼ばれています。毛母とは毛根に存在する毛母細胞のことです。このことから、石灰化上皮腫は毛母細胞に発生する病気だと考えられています。ただし、悪化する原因などの詳しいことは未だに明らかになっておらず、研究が続けられています。
石灰化上皮腫によく似た病気はありますか。
石灰化上皮腫とよく似た症状の病気は、主に以下の4つです。皮下の「しこり」として自覚でき、見た目も似ているため鑑別が難しいこともあります粉瘤(アテローム)
粉瘤とは、皮下に袋状の構造物が形成され、その内部に角質や皮脂が溜まった腫瘍のことです。顔・首・背中など身体のあらゆる部分に発生します。中心部分に毛穴のような黒い点状の開口部分があるのも特徴です。
しこりを押すと内容物が出てくることがあります。また、炎症を起こして赤く腫れ上がることがあります。
ガングリオン
ガングリオンとは、関節の周りや腱のあるあたりに腫瘤ができる病気です。多くは、手の甲側の関節に発生します。米粒程度の小さいものからピンポン玉程度の大きめのものまで、大きさは様々です。また、触った時の硬さについても、柔らかいものから硬いものまで存在します。
基本的には、しこり以外の自覚症状はありません。しかし、腫瘤が神経を圧迫した場合には、痺れ・痛み・動かしにくさなどが現れることもあります。また、手を酷使すると腫瘤が大きくなることもあります。職業柄、手をよく使う人は注意が必要です。
類皮嚢腫
類皮嚢腫とは、眼や鼻の周り・耳の後ろ・口腔内などに発生する円形の腫瘍です。顔面の他にも、全身のあらゆる場所に発生します。顔の部分では、眼の上の骨の外側に発生することが多いとされています。
類皮腫瘍は、生後早い段階で見つかるケースも多いです。基本的に痛みはありません。腫瘍の成長は比較的緩やかですが、患部が傷つくことで腫瘍が大きくなったり炎症を起こしたりすることがあります。
悪性腫瘍
悪性腫瘍は良性の腫瘍とは異なり、触っても動かないのが特徴です。また、表面が凸凹していたり硬かったりすることが多いです。
石灰化上皮腫の中でも触った時に動きにくいものや破裂してしまったものに関しては、悪性腫瘍との鑑別が難しいこともあります。
石灰化上皮腫の診断方法と治療法
石灰化上皮腫はどうやって診断されますか。
多くの場合、視診や触診で判断することが可能です。しかし、粉瘤・ガングリオン・類皮嚢腫・悪性腫瘍などとの鑑別が難しい場合もあります。そのような場合には、レントゲン検査をします。レントゲン検査により、皮下腫瘍の石灰化を確認することが可能です。ただし、石灰化が進んでいない腫瘍の場合は、レントゲン検査で確認できないこともあります。また、腫瘍が発生した部位によっては、CTやMRIを用いて精密な画像診断を行うこともあります。
石灰化上皮腫はどのように治療しますか。
しこりをそのまま放っておいても、自然に小さくなっていくことはまずありません。そのため、基本的には外科的手術をおこなうことになります。外科的手術により完全に摘出することができれば、再発の心配はありません。また、腫瘍が小さい場合には、局所麻酔での日帰り手術も可能です。しかし、腫瘍が大きい場合や11歳未満の子どもが手術を受ける場合には、全身麻酔で手術を行うのが一般的です。
石灰化上皮腫は放置するとどうなりますか?
石灰化上皮腫は放置しても自然に治ることはありません。基本的には、外科的手術で腫瘍を摘出することが必要です。飲み薬・塗り薬・レーザー治療などで治療することもできません。放置すれば、腫瘍のある部分が細菌感染を起こしてしまうことがあります。この場合、患部が赤く腫れあがります。また、放置して腫瘍が大きくなると腫瘍が破裂して激痛に襲われることもあるため注意が必要です。症状が悪化する前に、早めに治療を受けることをおすすめします。
石灰化上皮腫の再発
石灰化上皮腫は再発しますか。
基本的には外科的手術で完全に摘出することができれば、再発する心配はありません。しかし完全に摘出することができず、腫瘍が皮下に残ってしまった場合には、再発することもあります。この場合、再手術を行い腫瘍を完全に取り除くことができれば完治します。石灰化上皮腫が、他の場所に転移する危険はありませんので安心してください。
石灰化上皮腫は自分で取ってもいいですか。
石灰化上皮腫は自分で取り除くことはできません。医療機関で摘出することが必要です。多くの場合、局所麻酔により摘出することができます。しかし、幼児の場合や腫瘍が大きい場合には、全身麻酔の適用となります。傷跡に関しては、目立たないように縫合することは可能です。しかし、傷跡がケロイドになりやすい人は傷口が赤く盛り上がってしまうこともあります。その場合は、内服薬やステロイドの塗り薬などを用いて、ケロイドの治療をおこないます。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
石灰化上皮腫は良性の腫瘍であり、発症したからといって身体に大きな害が及ぶものではありません。しかし、時には痛みを伴ったり感染を起こしたりすることもあります。そのため、早期に治療を行うことがおすすめです。また、石灰化上皮腫と見た目が似ている疾患はいくつかあります。他の病気との鑑別は、一般の人が行うのは困難でしょう。
例えば、ガングリオンの場合、神経を圧迫すれば痺れや動かしにくさといった症状も現れます。生活に支障が出る前に、しっかりと検査を受けることが肝心です。
編集部まとめ
皮下に石灰化した硬いしこりができる「石灰化上皮腫」は良性の腫瘍ではあるものの、時に痛みやかゆみなどをもたらすこともあります。
また、放置すれば破裂して激痛に襲われる危険もあるため注意が必要です。さらに、石灰化上皮腫に似た症状の病気はいくつかあります。
確実に鑑別するためには、画像検査や病理検査が必要なこともあります。しこりがあるようであれば、医療機関へ受診するようにしましょう。
参考文献
石灰化上皮腫(日本形成外科学会)
アテロームとはどんなものですか?(日本皮膚科学会)
「ガングリオン」(日本整形外科学会)