「気分障害」の前兆となる症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?
気分障害は、うつ病や双極性障害など、気分に関わる病気です。起こった出来事に関らず長きに渡って気分が落ち込んだり、逆に異様に高揚したりします。
薬物療法や精神療法によって寛解しますが、長い治療が必要な場合もある病気です。
今回はこの気分障害について、どんな症状が見られるのかや、発症しやすい人の特徴について紹介します。
治療方法や周囲の人の対応にも触れますので、ぜひ参考にしてみてください。
気分障害とは?
気分障害とはどのような病気なのでしょう?
気分障害とは身の回りのできごとに関係なく、気分が落ち込んだり、逆に突然ハイになって自分でコントロールできなくなるなどの気分に関係する病気の総称です。具体的には、うつ病や双極性障害などが挙げられます。
うつ病は1日中気分が落ち込んでいる、何をやっても楽しめないのが症状で、日本では100人に6人が経験するといわれている病気です。
一方気分が落ち込むうつ状態と、気分が高揚する躁状態 (そうじょうたい)を繰り返す双極性障害は、1000人に4~7人弱がかかるといわれています。
気分障害にみられる症状を教えてください。
この病気はうつ病や双極性障害が挙げられますが、この2つの病気は性質が全く異なるものです。うつ病には以下のような症状が挙げられます。
暗く悲しい気分が1日中続く
これまで好きだったことも興味がなくなり、楽しくなくなる
食欲がなく体重が減る、または過食してしまう
毎日眠れない、もしくは寝すぎてしまう
イライラして、常に焦る気持ちがある
疲れやすくて、元気がない
自分が役に立たない人間だと感じる
集中力がなくなり、物事を決断できない
将来を悲観し、死んでしまいたいと思ってしまう
一方双極性障害ではうつ状態と躁状態が繰り返されるものです。躁状態では以下のような症状が現れます。
無謀な計画や買い物での浪費など現実離れした行動をとってしまう
性に奔放になる
根拠のない自信に満ちあふれる
睡眠時間が短くても元気に活動できる
双極性障害ではうつの状態になった時に、躁状態の時の自己嫌悪が加わり、ますますつらい思いをする人が多いです。
放置しておくとうつと躁のサイクルが短くなっていきます。
気分障害は何が原因で発症することが多い病気ですか?
気分障害が発生する直接の原因はわかっていませんが、感情や意欲をコントロールする脳の働きに何らかの異常が発生しているものと考えられます。一般的には心理的なストレスや悲しい出来事が気分障害の引き金になるものといわれていますが、悲しい出来事だけでなく、
結婚や就職などうれしい出来事もこの病気を引き起こすきっかけになりえます。
気分障害を発症する前兆はありますか?
うつ病は精神症状の前に身体の不調が現れる場合があります。その例を以下に紹介しましょう。身体がだるい、疲れやすい
食欲や性欲がない
眠れない、または寝すぎてしまう
頭痛や肩こり
胃の不快感や腹部の不調
動悸がする
めまいがする
口が渇く
これらの症状がすべてうつ病に当てはまるわけではありませんが、気分の落ち込みに加え、このような身体の不調が出てきたときには注意が必要です。
気分障害の特徴と診断方法
気分障害を発症しやすい人の特徴や共通点はありますか?
気分障害は、環境要因と遺伝的要因の2つの要因が関係しています。環境要因とは、ストレスや家庭要因の不和などを指します。遺伝的要因とは、本人の人格や遺伝子型、家族歴などによる要因です。
双極性障害はうつ病に比べ、遺伝の要因が強いとされている病気です。
またうつ病の場合は身体の病気や内服している薬によって引き起こされているケースもあります。
大体何歳くらいの方が発症しやすいのでしょう?
健康保険組合連合会が平成29年に行った調査によると、気分障害を抱えている年齢層は、男性では45~59 歳で全体の約 5 割を占めました。一方女性では、40~54 歳で全体の約 4 割を占めています。
気分障害の診断方法を教えてください。
患者との面談で本人の症状や社会生活にどのような影響が及んでいるのかをヒアリングし、DSM-5 診断基準を参照しながら総合的に診断を下します。また身体のほかの病気が気分障害を引き起こしている可能性もあるため、血液検査など一般的な検査も合わせて行います。
気分障害を疑う場合は何科に受診するのが良いですか?
精神科や心療内科の病院、クリニックを受診してください。また心の病気は、主治医と何でも相談できる関係を築くことが治療のうえでとても大切です。信頼できる医師探しや、セカンドオピニオンを得るという意味でも、複数の病院にかかることも回復への手だてになるでしょう。
気分障害の治療方法や過ごし方
気分障害ではどんな治療を行うのでしょうか?
薬物療法と精神療法の両方を行いますが、まずは十分な休養が必要とされる病気です。薬物療法においてうつ病に使用するのが、気分安定薬・一部の抗精神病薬・抗うつ薬です。
双極性障害の躁状態には気分安定薬、抗精神病薬を用います。
また精神療法では、生活のリズムを整えることとストレスとの付き合い方を学ぶことを身に付けます。
またこれらの方法以外に、頭に通電する電気けいれん療法がありますが、これは通常気分障害によって自殺の危険性が高まっているなど重度の患者にしか行われません。
治療は一生続けなければいけないのですか?
うつ病の治療の期間は、急性期・回復期・再発予防期と大きく3つの期間に分かれ、寛解すれば、以前の元気が取り戻せます。双極性障害に関してもかなりコントロールできる病気であり、治療によって元の社会生活に復帰されていく方もとても多いです。
ただ双極性障害については最初の躁状態、うつ状態から次の再発までに5年くらい間があくなど、長期間に渡って観察と治療が必要な病気になります。
気分障害の治療中の過ごし方を教えてください。
まずはしっかりと休養を取り、生活のリズムを整えることです。そして症状が軽快しても、しっかりと薬を飲み続けることが必要になります。
気分障害は、本人が軽快したと思った時に通院を止めてしまい、薬の服用が止まった結果再発するということが起こりやすい病気です。
再発予防のためにも、最後までしっかり治療に取り組むことが大切です。
家族や身近な人が気分障害を発症した場合のサポート方法が知りたいです。
うつ状態にある患者には、頑張ってなどの励ましは本人の負担になる可能性があります。うつ状態にある人は、もう充分に頑張った結果、自分の力ではどうにもならないと助けを求めていることを理解することが必要です。
また、気晴らしに連れ出すのも患者のエネルギーを消費するのでおすすめしません。
家族や身近な人は、本人に干渉せず、側にいて温かく見守る姿勢が必要でしょう。
一方双極性障害で躁状態にある患者の側にいる人たちは、患者の苛立ちなどから暴力などの被害に遭っている可能性があります。
そのような状態に陥る前に、本人が病院にかかることが一番なのですが、本人が嫌がる場合は家族や身近な人だけでも受診し、医師から適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
気分障害は誰にでも起こり得る病気で、本人の努力だけでは完治しません。うつ病や双極性障害は1年以上という長い期間、よくなったり悪くなったりという状態を繰り返しながら寛解します。
強いストレスや環境の変化が病気のきっかけになりますので、まずは十分な休養と、規則正しい生活が送れるような環境を整えることが大切です。
この病気を持つ人の身近な人の理解や協力も必要な病気です。
気分障害は厚生労働省などが症状の紹介や治療先の紹介を行っていますので、普段から気分障害への理解を深めておくといいでしょう。
編集部まとめ
うつ病や双極性障害に代表される気分障害は、個人の気分に関わる病気です。起こった出来事に関係なく気分が落ち込み続けたり、突然気分が高揚したりなどの症状が出ます。
薬物療法や精神療法で治療を行いますが、まずは本人がしっかりと休養し、規則正しい生活を送ることが治療への第一歩となるでしょう。
また寛解には周囲の人の協力や理解が必要となります。家庭内や職場でも、普段から気分障害について理解を深め、もし自分や周囲の人に症状が出ていたら早めに病院にかかるようにしましょう。
参考文献
うつ病(みんなのメンタルヘルス 総合サイト)