NASAアルテミス計画で使用される次世代宇宙服のプロトタイプをアクシオム・スペースが公開
【2023年3月16日13時12分】アクシオム・スペース(Axiom Space)は3月15日、同社が開発中の次世代宇宙服「AxEMU」(Axiom Extravehicular Mobility Unit)を米国テキサス州のヒューストン宇宙センターにて開催されたイベントで公開しました。Axiom Suitとも呼ばれるAxEMUは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の有人月面探査計画「アルテミス」で使用される予定の宇宙服です。
当初、アルテミス計画の宇宙服はNASA自身が開発に着手し、2019年10月には「xEMU」(Exploration Extravehicular Mobility Unit、探査船外活動ユニット)として発表もされていました。しかしその後、NASAは国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙飛行士や物資を運ぶ宇宙船・補給船と同様に宇宙服も民間企業へ委託する方針に転換し、次世代宇宙服の開発・製造を担う「xEVAS」(Exploration Extravehicular Activity Services、探査船外活動サービス)の契約企業を2021年に募集。2022年9月にはアルテミス計画で最初に月面探査が行われる「アルテミス3」ミッション向けの宇宙服を開発・製造する企業としてアクシオム・スペースが選定されていました。
関連:アクシオムが次世代宇宙服の提供でNASAと契約 2025年の有人月面探査で使用予定(2022年9月12日)
【▲ アクシオム・スペースが公開した次世代宇宙服「AxEMU」のプロトタイプ(全身像)(Credit: Axiom Space)】
今回ヒューストンで公開されたのはAxEMUのプロトタイプです。黒を基調としたカラーリングが従来の宇宙服とは一線を画していますが、アクシオム・スペースによるとこれは設計を隠す目的のカバーレイヤーが被せられているためで、実際にはこれまでの宇宙服と同様に、極端な高熱から宇宙飛行士を保護するための白い素材が使われます。
AxEMUではNASAのxEMUの設計が活用されており、従来の宇宙服と比べて向上した可動域と柔軟性、過酷な環境からのより優れた防護、探査活動からの要求や科学的調査の機会を拡げるための専用ツールが特徴とされています。また、従来の宇宙服ではクルーの体型と宇宙服のサイズが適合せずに着用できない場合もありましたが、NASAによればAxEMUは幅広いクルーに対応することも特徴のひとつで、アメリカの男女の90パーセントに対応するとされています。
アクシオム・スペースによると、2023年夏の終わり頃までに訓練用の宇宙服一式がNASAに納入されるということです。2023年3月時点でアルテミス3ミッションは2025年に実施される予定で、スペースXが開発・製造する月着陸船「スターシップHLS」(Starship Human Landing System)に搭乗した2名の宇宙飛行士は月の南極点周辺に着陸し、AxEMUを着用して月面探査を行います。
【▲ 月に着陸したHLS(有人着陸システム)仕様のスターシップを描いた想像図(Credit: SpaceX)】
なお、アルテミス計画には日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)も参加しています。先日JAXAの宇宙飛行士候補に選ばれた諏訪理さんと米田あゆさんにも、アクシオム・スペースの宇宙服を着用する機会が訪れるかもしれません。
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Image Credit: Axiom Space, SpaceXNASA - Spacesuit for NASA’s Artemis III Moon Surface Mission DebutsAxiom Space - Axiom Space reveals next-generation spacesuit for astronauts returning to lunar surfaceAxiom Space - Axiom Suit
文/sorae編集部