「口呼吸」はむし歯になりやすい! 口呼吸の原因や治し方を歯科医が解説

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呼吸は人が生きていくのに必要不可欠でありながら、普段の生活ではその呼吸に意識を向ける機会がほとんどありません。ただ、ここで少し意識を向けて、自身が普段「鼻」と「口」のどちらで呼吸しているかチェックしてみてください。もし「口」で呼吸していることが多い場合、むし歯や歯周病、さらには全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。今回は口呼吸の原因やリスク、治し方などを「佐藤歯科医院」の佐藤先生に解説していただきました。

口で呼吸するとむし歯になりやすいのはなぜ? 口呼吸とむし歯の関係を歯科医が解説

編集部

「口呼吸をするとむし歯になりやすい」と聞きますが、それはなぜでしょうか?

佐藤先生

口呼吸をすると、口の中が乾いて唾液の量が少なくなってしまいます。本来、唾液には歯をむし歯菌から守る役割があります。しかし、口呼吸になるとそれらの作用がうまく働かなくなって、むし歯になりやすくなるのです。

編集部

唾液が減るとむし歯になりやすい理由について、もう少し詳しく教えてください。

佐藤先生

唾液の中には細菌の増殖を抑える酵素をはじめ、むし歯予防に関連する成分が豊富に含まれています。例えば、「緩衝能(かんしょうのう)」もその1つです。口の中は食事をすると細菌の作る酸によって一時的に酸性となります。その酸を唾液の成分が中和して、むし歯から歯を守っています。また、唾液は酸によって溶けた歯質を修復する「再石灰化作用」にも一役買っています。

編集部

そのような唾液の作用が低下すると、歯周病のリスクも高くなってしまうのでしょうか?

佐藤先生

はい、歯周病のリスクも高くなります。口内は湿潤100%が正常な状態であり、口が乾いて唾液が減ってしまうと細菌の活動が活発になります。そのため、むし歯だけでなく歯周病にもなりやすいというわけです。

むし歯や歯周病以外にもある? 口呼吸が口腔内・体に及ぼす影響とは

編集部

むし歯や歯周病のほかにも、口呼吸によって起こるトラブルはありますか?

佐藤先生

口の粘膜も唾液に保護されているため、口呼吸で唾液が少なくなると痛みが出やすくなったり、口内炎ができやすくなったりします。同様に、舌が赤い・ヒリヒリするといった舌痛症などの粘膜の炎症リスクも高まります。さらに、お子さんの場合、口呼吸を続けていると歯並びが悪くなる恐れがあるため注意が必要です。

編集部

口呼吸によって歯並びが悪くなるのはなぜでしょうか?

佐藤先生

口呼吸によって、口周りの筋肉と舌の筋肉のバランスが悪くなってしまうからです。歯は唇や頬の筋肉と舌の筋肉から受ける力のバランスによって、U字型の歯列を保っています。しかし、口呼吸で口が開いている時間が長くなると、唇の筋肉の抑えが弱くなって歯が外側へ動いていきます。そうすると出っ歯などの不正咬合になりやすいわけです。

編集部

口呼吸は、全身の健康にも悪影響があるのでしょうか?

佐藤先生

口呼吸が多いと、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなるとされています。人は鼻で呼吸するのが正常で、鼻から吸った空気は口の上にある「副鼻腔」を通過して肺に届きます。この副鼻腔にはフィルターの役割があり、吸気に含まれる細菌やウイルス、異物を排除してくれるおかげで、綺麗な空気を肺に送ることができるわけです。しかし、口呼吸の場合はフィルター機能が働かないため、細菌やウイルスがそのまま肺に入ってしまい、感染リスクを高めてしまいます。

むし歯になりやすい習慣を改善! 口呼吸の治し方を歯科医が解説

編集部

口呼吸を治したい場合、専門的な治療は必要なのでしょうか?

佐藤先生

口呼吸の改善には、「セルフケアで改善する方法」と「専門的な治療を受ける方法」の2パターンがあります。どちらをおこなうかは口呼吸の原因によって異なるので、個々の原因に合わせて適切な方法を選択していきます。

編集部

専門的な治療が必要になる口呼吸には、どのようなケースがありますか?

佐藤先生

例えば、もともと出っ歯で唇が閉じにくいケースや、「下顎後退」という下あごが正常な位置よりも後ろに下がっているようなケースです。下あごが後ろに下がると気道が狭くなってしまうため、口呼吸になりやすくなります。このような歯並びやあごの位置の問題によって生じる口呼吸は、矯正治療による改善が必要です。また、アレルギー性鼻炎や慢性鼻炎など鼻の通りが悪くて口呼吸になってしまう場合、まずは耳鼻科の治療を優先します。

編集部

セルフケアでは、具体的にどのようなことをおこなって改善を目指すのですか?

佐藤先生

口呼吸では口周りにある「口輪筋」という筋肉が弱っていることが多いため、口輪筋を鍛えるトレーニングをおこないます。「あいうべ体操」が代表的な例です。「あ」「い」「う」「べ」の口の形をそれぞれ1秒ずつキープしながら大きく動かし、さらに「べ」の時は舌をあごの先に向かって伸ばします。10回1セットとして、1日3セットを目安におこなうと効果的です。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

佐藤先生

今はマスクをつける時間が長いため、無意識に口呼吸をしていることも少なくありません。呼吸するとき、マスクが前後に大きく動いている場合は口呼吸をしている可能性があるので要注意です。一度、ご自身の呼吸に意識を向けてみて、口呼吸になっていないかチェックしてみましょう。

編集部まとめ

口呼吸は口内の乾燥による唾液の減少で、むし歯や歯周病をはじめとする口腔内のトラブルを誘発します。さらに、口呼吸は口の問題だけでなく、細菌やウイルスによる感染症のリスクを高める可能性もあるようです。対策としては、セルフケアと専門的な治療の2つの方法がありますが、口呼吸の原因がどこにあるかによってケアの方法も変わります。口呼吸が気になる・やめられないという場合は、歯科医院で一度相談してみましょう。

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