「社交不安障害」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

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社交不安障害は、ほかの人の注目を浴びる場面で話をしたり食事をしたりする時に、強い不安と恐怖を感じる病気です。

よくあがり症と混同されますが、この病気の場合は1対1の場面などでも症状が現れ、長い期間継続します。

精神療法や薬物療法によって軽快しますが、本人も周囲もなかなか病気に気付きにくいといった特徴があります。

今回は社交不安障害について、その症状や原因、治療方法について紹介しましょう。

日常生活について気を付けることや、病気になりやすい人はいるのかなどについても述べますので、ぜひ参考にしてみてください。

社交不安障害の症状と原因

社交不安障害はどのような病気でしょうか?

社交不安障害とは、他者の注目を浴びる場面において著しい恐怖や不安を感じ、回避行動を取ってしまう病気を指します。またはその恐怖や不安を感じることが他者から否定的な評価に繋がることを恐れる病気です。
一方で多くの人が、大勢の前でのスピーチや発表会で緊張し、あがってしまうという経験があるかと思います。それはパフォーマンス恐怖として社交不安障害の一つに数えられますが、社交不安障害は本人が感じる恐怖や不安が現実や社会文化的背景に釣り合わないものであったり、6カ月以上と長く続いたりすることが特長です。
スピーチや発表会などの場面でのみ極度に緊張を感じる人は、「パフォーマンス局所型」として、社交不安障害とは別の扱いになっています。

どのような症状がみられますか?

この病気では他者の注目を浴びる可能性のある1つ以上の社交場面において、本人が強い恐怖や不安感を感じ、それを回避するような行動をとってしまいます。この恐怖や不安感は大勢の注目を浴びる場面ではもちろん、例えば会社の同僚や同級生など対等な立場における1対1でのコミュニケーションでも現れてしまうのです。
この病気の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

人前でしゃべったり食事をしたりする場面で、顔が引きつる・手が震える・赤くなるなど

そこまで親しくない人に、はっきりと自分の意見を言えない

人からの頼まれごとを断れない

人と違う意見を言えない

異性になかなか声をかけられない

この病気にかかった人は、こういった症状によってたいへんな苦痛を感じていたり、学校や職場に行けなくなるなどの障害を引き起こしていることが多いです。

なりやすい人の特徴を教えてください。

この病気にかかりやすい人の傾向はよくわかっていません。この病気が起こる脳の構造については研究が進んでいますが、性格との関係やなりやすい人の特徴がはっきりとは解明されていないのが現状です。
社交不安障害は最近になって成立した病気で、人との関わりが広く活発になった現代社会において注目されるようになりました。ずっと昔、親戚や村内でコミュニケーションが完結していた時代には、この病気を持っていても気づかない人がほとんどでした。
人付き合いが活発な社会において生まれた病気といえるでしょう。

発症する原因を教えてください。

この病気は多くの精神病と同じく、原因がはっきりとわかっていないのが現状です。ただこの病気の原因の1つとして、扁桃体が過剰に反応しやすく、前頭葉がうまく扁桃体をコントロールできていないことが知られています。
脳にある扁桃体は、危険を察知する働きをしています。この扁桃体が過剰に反応することで、症状が出てくると考えられているのです。

社交不安障害は性格と関係がありますか?

性格との関連はわかっていませんが、気質との関連性は指摘されています。気質とは、性格やパーソナリティーの土台になるものです。
赤ちゃんの頃にある刺激に対して高い反応を示した子は、成長してもその気質が続き、不安症の危険因子になることがわかってきています。

社交不安障害の受診と治療

社交不安障害を疑う場合、何科を受診すれば良いでしょうか?

精神科やメンタルクリニックを受診しましょう。
ただし不安を感じる要因としてほかの病気が隠れていないか検査するため、血液検査・CT・脳波検査を行うことがありますので、まずは総合病院にかかることをおすすめします。

社交不安障害の診断基準を教えてください。

まずは本人から、これまでの生活で人とかかわる場面において、どのような不安や恐怖を感じたのかしっかりとヒアリングしていきます。併せて性格傾向や苦手なことを調べるための心理テストや、ほかの病気が隠れていないか調べるために血液検査なども行うことが多いです。
最終的にはアメリカ精神医学会によって2013年に出版された精神障害の診断と統計マニュアル「DSM-5」における社交不安障害の判断基準などを参考に、診断を下します。

どのような治療を行うのでしょうか?

治療には精神療法と薬物療法の2種類があります。
精神療法では以下のような治療を行いますので、その一部を紹介しましょう。

社交不安に対する心理教育

否定的な自己イメージを修正するためのビデオによるフィードバック

問題となっている社交場面のトラウマ記憶に対処するための弁別トレーニングや書き換え

社会不安に対する心理教育

一方薬物治療では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるSSRIなど、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の投薬による治療を行います。精神療法と薬物療法の併用をするかしないかについてはガイドラインがないため、各医師が判断します。

社交不安障害と診断されたときに気をつけること

社交不安障害は治りますか?

この病気の治療目的は、病的な不安や恐怖を軽減し、回避行動を減らすことにあります。日常生活を送るのに支障がないレベルまで長期的に症状が軽快することが目的です。
治療によって、人前に立っても全く緊張しなかったり、人付き合いが上手になったりということにはなりません。ですが認知療法や薬物療法によって、日常感じていた支障を感じなくなったら病気が軽快したといっていいでしょう。

日常生活で気をつけることはありますか?

この病気は本人の治療だけでなく、周囲の方の理解とサポートも必要となることが多いです。社交不安障害は身近な人には症状が現れないため、家族の理解を得られないことがあります。
家族や周囲の方もこの病気の理解を深め、例えば本人の休学・休職という選択を肯定してあげる、人付き合いが苦手なことをわかってあげるなどのサポートをしてあげるといいでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

社交不安障害は比較的新しい病気ですが、幼少期からこの病気に苦しんでいる人もいます。この病気は放っておくと本人にとって強いストレスとなり、引きこもりやうつ病、果てはアルコール依存症などに繋がりかねません。
対人関係で辛いと感じることがあったら、まずは精神科やメンタルクリニックを受診してみることをおすすめします。また病気を治すには周囲の人の理解とサポートが必要です。この病気に苦しんでいる人の家族も医師の説明を聞いて、病気について理解を深めるといいでしょう。

編集部まとめ


社交不安障害は、人に見られている場面で何かをすることに、強い恐怖や不安を感じる病気です。

家族など身近な人に接する時には症状が現れないため、周囲の人の理解を得づらいといった特徴があります。

精神療法や薬物療法によって軽快する病気ですので、もし人付き合いで辛さを感じている人がいたら、まずは精神科やメンタルクリニックを受診してみましょう。

参考文献

社交不安症の診療ガイドライン