【すい臓がん】初期症状5選!「沈黙の臓器」と呼ばれるワケとは…?
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膵臓がんは非常に予後の厳しいがんで、2021年の統計では膵臓がんで亡くなる方が増えてきており、女性で3番目、男性で4番目に死亡者数が多くなっています。今回は膵臓がんについて日本在宅医療連合学会専門医・やよい在宅クリニックの水口先生に徹底解説していただきました。
監修医師:
水口 義昭(やよい在宅クリニック)
日本医科大学卒業。日本医科大学消化器外科に入局。さつきホームクリニックにて在宅診療のいろはを学ぶとともに、星風会病院にて診療部長として重症心身障害児、障害者の診療を担当。2019年に「やよい在宅クリニック」を開院。日本在宅医療連合学会専門医・指導医、日本外科学会専門医 、日本消化器外科学会専門医 、日本肝臓学会専門医、日本医科大学消化器外科非常勤講師(連携教授)。
膵臓がんの基礎知識を解説
編集部
膵臓がんはどのような病気ですか?
水口先生
初期の段階では全く症状が出ない方が多く、膵臓がんで特徴的な黄疸は初期では全く現れません。さらに調べた時点で既に肝臓や肺に転移をしているために、手術ができない方も非常に多いといわれています。
編集部
膵臓は体のどのあたりに位置する臓器ですか?
水口先生
膵臓はお腹の季肋部(きろくぶ)という肋骨の下に位置する部分にあります。 膵臓は頭と体と尻尾に分かれており、真ん中から左側に分布しています。内臓のスクランブル交差点の中心にあるイメージですね。
編集部
膵臓の役割について教えてください。
水口先生
膵臓の役割は、血糖値を下げるインスリンや血糖値を上げるグルカゴンというホルモンを分泌している「内分泌機能」と消化の役に立っている「外分泌機能」があります。膵臓は膵液 を1日2リットルほど作り出しており、その中の消化酵素であるアミラーゼやリパーゼを含んでいて、消化管から通ってくる食べ物に膵液をかけて溶かしやすくする役割を行っています
膵臓がんの初期症状5つを解説
編集部
膵臓がんの症状を教えてください。
水口先生
膵臓がんの特徴的な症状は、
① 糖尿病の方が急に血糖値が悪くなってきた
② 中年以降の方が急に糖尿病を発症した
③ 急に体重が減ってきた
④ 黄疸
⑤ 食欲不振や腹痛
といった症状があります。
編集部
糖尿病と膵臓がんの関係を教えてください。
水口先生
インスリンは人間が作り出す血糖値を下げる唯一のホルモンですが、膵臓がんができてしまうと、インスリンを分泌している膵臓の機能が破壊され、糖尿病が悪化してしまいます。また、もともと糖尿病でない人が急に糖尿病を発症することもあります。
編集部
急激な体重減少も膵臓がんは関係あるのでしょうか?
水口先生
最近ダイエットが流行っていますが、ダイエットを行っていて体重が下がり過ぎてしまう方がいます。患者さんは、ダイエットをやっていたから気付かないという方が多く、調べてみると、がんが見つかりその中に膵臓がんが紛れていることもあります。
編集部
なぜ体重が減少するのでしょうか?
水口先生
なぜ体重が減少するのかは、まだ解明されていません。ですが、膵臓がんの場合は食べ物の通り道にがんが“しこり”としてできますので、食べ物の吸収を阻害されたり、食べても吐いてしまったりするため、体重が増えないという現象が起こるのかと思います。体重が5kg減っているのが悪液質の基準になっていて、 体重がダイエットで減っているのか、もしくはがんが原因で減っているのか分からない方が多いですね。
編集部
黄疸とは何ですか?
水口先生
黄疸とは、胆管に膵臓がんが浸潤し、道を塞いでしまい、黄色い液体の胆汁が肝臓に溜まってしまい、溢れ返ることで起こります。胆汁が全身に散ってしまい、まずは目から黄色くなります。全身の肌が黄色くなり黄疸が起こることもあります。
編集部
食欲不振や腹痛と膵臓がんの関係を教えてください。
水口先生
食欲不振や腹痛はほかのがんでも見られますが、食欲不振は悪液質というがん特有の状態で、がんが栄養を吸い取ってしまい、食欲がどうしても湧かない状態になります。食べ物の通り道が塞がると、食べてもお腹がすぐ膨れてしまい食欲不振が起こります。
膵臓がんの危険因子について
編集部
膵臓がんの危険因子について教えてください。
水口先生
近年徐々に解明されてきており、膵臓がんの危険因子には遺伝や家族歴が挙げられます。遺伝はごく限られた情報しかないので、家族歴について説明します。親が膵臓がんの方は、そうでない方と比べて2倍膵臓がんにかかりやすいといわれています。また、糖尿病を患っている方は、そうでない方に比べて約2倍膵臓がんにかかりやすくなっています。
編集部
ほかに危険因子はありますか?
水口先生
「慢性膵炎」という、膵臓に炎症が慢性的に起こっている方に関しては、10倍程膵臓がんにかかりやすいといわれています。慢性膵炎の方は、膵臓がんが発症する前に指摘されていることが多いですから、その方々は厳重なフォローアップが必要です。
編集部
慢性膵炎は何年ぐらいでがんを発症しますか?
水口先生
症例数が少ないので まだ解明されていませんが、私の経験からみて5~10年ほどで、非常に長いスパンです。慢性的な炎症で細胞が壊れては修復の繰り返しの過程でがんができると考えられていますので、長い年月が必要になると思われます。
編集部
肥満やたばこ、飲酒など生活習慣に関してはどうでしょうか?
水口先生
膵臓がんと関係している飲酒に関しては、アルコールを飲む方が約1.2倍、喫煙者が1.7倍、たばこの本数に関して1日1箱(1日20本)吸う方を対象にしている研究が多いですね。肥満は男女で差がありますが、男性は1.5倍、女性はその倍の3倍です。女性でふくよかな方は注意が必要です。
編集部
肥満の女性がたばこを吸っていたらアウトですね……。
水口先生
2つリスクがあるから、それがかけ算かというとそうではありません。ただ可能性が上がるのは間違いないと思います。大体は後発性が一番多く、太っているから発症するというよりも、体の調子が悪く調べてみたら膵臓がんが見つかる人が非常に多いですね。
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