ついに小藪、カメラの祭典CP+に降臨、等身大の写真の楽しみ方とは
4年ぶりにリアルで開催したCP+が閉幕した。メーカー各社が趣向を凝らしたブースを展開する中、写真の楽しみについて、心に響くセミナーも多くあった。1日目、カメラ好きで知られる、お笑いタレントの小籔千豊さんによるトークショーもその一つ。「小藪、カメラを語る」は、等身大のカメラ、写真ファンの在り方が伝わるものだった。
冒頭、「CP+に来られているハイアマチュアの方やカメラ関係者の方々に偉そうなことをいうつもりは全くございません。めちゃめちゃ恐縮してます」と切り出した小藪さん。写真を始めたのは「昔付き合っていた今の嫁はんが持ってきたヤシカエレクトロ35がきっかけ」という。なかなかちゃんとした写真が撮れず、本屋でノウハウ本を立ち読みしながら少しずつ学んでいくうちに、興味を持つようになった。まだ若手だったが写真にはまって、ニコンのフィルムカメラF100をローンで買うまでになった、という。
稼げるようになって「ハッセルかライカを買ったらもうカメラは買わないと決めていたが、テレビ番組でほだされてデジパック付きハッセルの503CWを購入。またYouTubeの企画でライカのQ2も買ってしまった。もうこの先2〜30年はカメラは買わない。最近はライカのQ2をよく使っている」と小藪さん。その他、富士フイルムのXT1やリコーのGRIIIをよく使っていると話した。
しかし「写真を続けていても一向に上手にならない。センスがなくて限界が来た。そこで作品を撮ることは諦めて、あとで見返してエモくなるような写真を撮ることにした。思い出や時間を切り取ることにシフトチェンジして、家族やベテラン芸人さん、若手の仲間を撮ることが多くなった」と明かす。「最初のころは、写真雑誌のコンテストに応募することも考えた」という小藪さん。会場で披露されたMr.オクレさんなどを被写体にしたモノクロ写真は、哀愁があり、味がある写真ばかり。大上段に構えず、日常の目線で楽しむ、写真愛好家としての小藪さんの姿がそこにあった。
また、2日目に開催したCP+を主催するCIPAの「CIPAデジタルカメラマーケット・セミナー」も写真愛好家に寄り添うものだった。登壇したCIPA調査統計作業部会の太田学 部会長は「マーケットのご報告という体を取りながら、写真、カメラの楽しさにまだ気づいていない方々に、いろんな形で楽しさを発信することで、写真ファンが一人でも増えてほしい、という思いがある。好きで動くマーケットっていったい何? を解き明かしたい。セミナーのサブタイトルをつけるとすれば『楽しむことがジャスティス、デジタルカメラマーケットのリアル』だ」と話す。
「デジタルカメラの市場規模は、2010年のピーク時には1億2000万台を超えていたが、2022年は800万台強。ピーク時の10分の1にも満たない、というのが現状だ」と指摘。しかし、こうした数字だけでは本質は見えてこない。「写真ファン、カメラファンの声こそが業界を導く道しるべ」として、昨年CIPAが実施したフォトイメージングマーケット統合調査からフリーアンサーの主なものを紹介した。「写真が、カメラが、本当に好きでたまらない」「アスリートの撮影はスマホじゃ足りない」「何気ない日常の写真が、後に自分を救ってくれた」などなど。「好きでたまらない」という意見に市場特性の本質が凝縮されているともいえるだろう。太田 部会長は自由に写真を楽しむユーザーの姿を紹介しながら「アマチュアは『好き』ただそれだけで製品を選ぶ特権がある」と話した。
さらに、昨年からCIPAがスタートした写真コンテスト「趣味×写真」の第2弾「2020〜2022年 科学少年・科学少女の見た風景」で入選した作品の中から「デジタルカメラならでは」の作品を取り上げ、楽しさ、面白さを謳歌するユーザーの姿を称えた。8歳の男の子が旭山動物園で撮った「北海道旅行」を筆頭に5作品。太田部会長は「ブラボー」という叫び声とともに紹介した。さらに、「カメラを、写真を楽しむことは、日々の暮らしを噛み締めること。とらわれず自由に生活を楽しむこと。心の中に炎を灯し、燃やし続けること。楽しむことで動くマーケット。ブラボー」と話した。
時間や思い出を定着させるという機能に加え、ある種の自己表現の手段でもあり感情表現にもつながるカメラ。それだけに、あちこちにエモーショナルな要素が入り込んでくる。カメラはテレビやPCといった他のデジタル製品と大きく異なる特殊な存在と言えるだろう。カメラ市場が厳しい状況に置かれていることは依然変わらない。今、カメラ業界に求められているのは「ユーザーの心に響く製品づくり」ではないだろうか。久々にやってきた2月の横浜でそう感じた。(BCN・道越一郎)
冒頭、「CP+に来られているハイアマチュアの方やカメラ関係者の方々に偉そうなことをいうつもりは全くございません。めちゃめちゃ恐縮してます」と切り出した小藪さん。写真を始めたのは「昔付き合っていた今の嫁はんが持ってきたヤシカエレクトロ35がきっかけ」という。なかなかちゃんとした写真が撮れず、本屋でノウハウ本を立ち読みしながら少しずつ学んでいくうちに、興味を持つようになった。まだ若手だったが写真にはまって、ニコンのフィルムカメラF100をローンで買うまでになった、という。
しかし「写真を続けていても一向に上手にならない。センスがなくて限界が来た。そこで作品を撮ることは諦めて、あとで見返してエモくなるような写真を撮ることにした。思い出や時間を切り取ることにシフトチェンジして、家族やベテラン芸人さん、若手の仲間を撮ることが多くなった」と明かす。「最初のころは、写真雑誌のコンテストに応募することも考えた」という小藪さん。会場で披露されたMr.オクレさんなどを被写体にしたモノクロ写真は、哀愁があり、味がある写真ばかり。大上段に構えず、日常の目線で楽しむ、写真愛好家としての小藪さんの姿がそこにあった。
また、2日目に開催したCP+を主催するCIPAの「CIPAデジタルカメラマーケット・セミナー」も写真愛好家に寄り添うものだった。登壇したCIPA調査統計作業部会の太田学 部会長は「マーケットのご報告という体を取りながら、写真、カメラの楽しさにまだ気づいていない方々に、いろんな形で楽しさを発信することで、写真ファンが一人でも増えてほしい、という思いがある。好きで動くマーケットっていったい何? を解き明かしたい。セミナーのサブタイトルをつけるとすれば『楽しむことがジャスティス、デジタルカメラマーケットのリアル』だ」と話す。
「デジタルカメラの市場規模は、2010年のピーク時には1億2000万台を超えていたが、2022年は800万台強。ピーク時の10分の1にも満たない、というのが現状だ」と指摘。しかし、こうした数字だけでは本質は見えてこない。「写真ファン、カメラファンの声こそが業界を導く道しるべ」として、昨年CIPAが実施したフォトイメージングマーケット統合調査からフリーアンサーの主なものを紹介した。「写真が、カメラが、本当に好きでたまらない」「アスリートの撮影はスマホじゃ足りない」「何気ない日常の写真が、後に自分を救ってくれた」などなど。「好きでたまらない」という意見に市場特性の本質が凝縮されているともいえるだろう。太田 部会長は自由に写真を楽しむユーザーの姿を紹介しながら「アマチュアは『好き』ただそれだけで製品を選ぶ特権がある」と話した。
さらに、昨年からCIPAがスタートした写真コンテスト「趣味×写真」の第2弾「2020〜2022年 科学少年・科学少女の見た風景」で入選した作品の中から「デジタルカメラならでは」の作品を取り上げ、楽しさ、面白さを謳歌するユーザーの姿を称えた。8歳の男の子が旭山動物園で撮った「北海道旅行」を筆頭に5作品。太田部会長は「ブラボー」という叫び声とともに紹介した。さらに、「カメラを、写真を楽しむことは、日々の暮らしを噛み締めること。とらわれず自由に生活を楽しむこと。心の中に炎を灯し、燃やし続けること。楽しむことで動くマーケット。ブラボー」と話した。
時間や思い出を定着させるという機能に加え、ある種の自己表現の手段でもあり感情表現にもつながるカメラ。それだけに、あちこちにエモーショナルな要素が入り込んでくる。カメラはテレビやPCといった他のデジタル製品と大きく異なる特殊な存在と言えるだろう。カメラ市場が厳しい状況に置かれていることは依然変わらない。今、カメラ業界に求められているのは「ユーザーの心に響く製品づくり」ではないだろうか。久々にやってきた2月の横浜でそう感じた。(BCN・道越一郎)