100光年先の恒星TOI 700のハビタブルゾーンにある2つ目の太陽系外惑星を発見
【▲ 地球サイズの太陽系外惑星「TOI 700 e」の想像図。左奥には同じ星系の「TOI 700 d」も描かれている(Credit: NASA/JPL-Caltech/Robert Hurt)】
アメリカ航空宇宙局(NASA)・ジェット推進研究所(JPL)の博士研究員Emily Gilbertさんを筆頭とする研究チームは、「かじき座」の方向約100光年先の赤色矮星「TOI 700」を公転している4つ目の太陽系外惑星を発見したとする研究成果を、アメリカ天文学会の第241回会合にて発表しました。
■TOI 700の“楽観的な”ハビタブルゾーン内を約27.8日周期で公転
TOI 700ではこれまでに3つの系外惑星「TOI 700 b」「TOI 700 c」「TOI 700 d」が見つかっています。3つのうち一番外側のTOI 700 dは主星のTOI 700を約37.4日周期で公転しており、表面温度は摂氏マイナス約4度と推定されています。これは大気の影響を考慮しない温度であるため、もしもTOI 700 dに大気があれば、表面に液体の水が存在する可能性もあるようです。
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今回研究チームが報告したのは、この惑星系で4つ目の発見となる系外惑星「TOI 700 e」です。TOI 700 eの直径は地球の約95パーセントで、主星を約27.8日周期で公転しており、TOI 700の“楽観的な”ハビタブルゾーン(optimistic habitable zone)内を公転しています。
【▲ TOI 700のハビタブルゾーンと惑星の公転軌道を示した図。一番外側のTOI 700 dは保守的なハビタブルゾーン(濃い緑)内を、その内側のTOI 700 eは楽観的なハビタブルゾーン(薄い緑)内を公転している(Credit: Gilbert et al.)】
JPLによれば、楽観的なハビタブルゾーンとは惑星の歴史で一時的にでも表面に液体の水が存在し得る領域のことで、“保守的な”ハビタブルゾーン(conservative habitable zone、惑星の歴史の大半の期間を通して表面に液体の水が存在し得る領域)の内側と外側に広がっています。なお、先に発見されたTOI 700 dは、TOI 700の保守的なハビタブルゾーン内を公転しているとみられています。
TOI 700を公転する系外惑星は、NASAの系外惑星探査衛星「TESS」の観測によって発見されました。Gilbertさんによると、宇宙と地上からの観測による追跡調査が現在進められており、TOI 700星系に関する知見がさらに得られる可能性があるということです。
なお、系外惑星の名前は「主星の名前」に「小文字のアルファベット」を付与したものです(※)。アルファベットは主星からの距離や発見された順番に応じて「b」から順に「c」「d」と付与されていくのですが、同じ星系で別の惑星が見つかってもすでに命名済みの名前は変更されないため、アルファベットの順番と主星からの距離の順番が一致するとは限りません。
今回報告されたTOI 700 eは「TOI 700で4番目に見つかった系外惑星」なので「e」が付与されていますが、先に発見されたTOI 700 cとTOI 700 dの間を公転しているため、TOI 700に近いものから惑星を並べると「b」「c」「e」「d」の順になります。
【▲ TOI 700を公転する4つの惑星の直径と公転周期(※円の大きさの比率は実際の主星や惑星の大きさを反映していません)(Credit: sorae)】
※…一部の系外惑星には国際天文学連合(IAU)が世界各国から募集した名前が付けられています(例:系外惑星HD 145457 bの名称「Chura(ちゅら)」)
Source
Image Credit: NASA/JPL-Caltech/Robert Hurt, Gilbert et al.NASA/JPL - NASA’s TESS Discovers Planetary System’s Second Earth-Size WorldGilbert et al. - A Second Earth-Sized Planet in the Habitable Zone of the M Dwarf, TOI-700 (arXiv)
文/sorae編集部