タレス・アレニア・スペース社は、ルクセンブルクに拠点を置く民間企業「スペース・カーゴ・アンリミティッド(Space Cargo Unlimited)」と、無人宇宙船「REV1」の設計と製造に関する初期契約を結んだと発表しました。REV1は、軌道上で実験や研究を行う無人の再利用可能な宇宙船として構想されており、2025年後半の打ち上げを目指しています。


【▲ 再利用可能な無人宇宙船「REV1」のイメージ図(Credit: Thales Alenia Space)】


微小重力環境を利用した研究や実験は、各国の宇宙ステーションやスペース・シャトルで宇宙飛行士の手によって実施されてきました。国際宇宙ステーション(ISS)は最も規模が大きい「実験室」と言えます。


いっぽう、スペース・カーゴ・アンリミティッド社とタレス・アレニア・スペース社が開発する「REV1」は、自律的に飛行する無人の宇宙船です。主にバイオテクノロジー、創薬、農業などの分野で使用される予定となっています。REV1は軌道上で2〜3か月間ペイロードを運搬でき、20回の再利用ができるということです。


スペース・カーゴ・アンリミティッド社の創業者であるニコラス・ゴム(Nicolas Gaume)氏は宇宙メディアSpaceNewsの取材に対して、機体には太陽光パネルと電気推進機があり、10年ほど軌道を維持できると述べています。ミッション終了後は耐熱シールドが再突入の高温から機体を保護し、パラシュートを使用して着陸する予定です。


【▲ REV1の機体には太陽光パネルが取り付けられる予定(Credit: Thales Alenia Space)】


今回の契約では、タレス・アレニア・スペース社は機体の設計や開発を実施し、スペース・カーゴ・アンリミティッド社は機体の所有と運用を担当するということです。


スペース・カーゴ・アンリミティッド社は2014年に創業し、宇宙製造(space manufacturing)の実施を目指すべく活動する民間企業です。現在はルクセンブルクに拠点を置いています。REV1の運用にあたって、イタリア・トリノに機体のメンテナスや修理などを行う「Space Garage」と呼ばれる施設を建設する可能性も示唆しています。


タレス・アレニア・スペースは、ISSの与圧モジュールのうち50%以上を設計・製造しており、現在ではアルテミス計画の有人月探査周回拠点「Gateway」(ゲートウェイ)の製造・組み立て業者に選定されています。また、ISSへの物資輸送に使用されている「シグナス」宇宙船の与圧貨物モジュールにも関与しています。そして同社は欧州宇宙機関(ESA)の大気圏再突入実験機「Intermediate eXperimental Vehicle(IXV)」の製造も担当。IXVは、2015年2月11日にギアナ宇宙センターから「ヴェガ」ロケットを使用して打ち上げられ、弾道飛行をしたのち、海上への着水に成功しました。


 


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文/出口隼詩