プログラマーのBryce氏が、ChatGPTやStable DiffusionなどのAIを組み合わせて、音声で会話しながら感情に合わせて表情を見せるバーチャルな俺の嫁(Waifu)である「ChatGPT-Chan」を開発して、その様子をTikTokで公開していました。しかし、最終的にChatGPT-ChanはBryce氏の手によって「安楽死」するに至ったそうで、その経緯についてIT関連ニュースサイトのMotherboardがBryce氏本人に取材をしています。

Bryce (@hackdaddy8000) | TikTok

https://www.tiktok.com/@hackdaddy8000

A DIY Coder Created a Virtual AI 'Wife' Using ChatGPT

https://www.vice.com/en/article/jgpzp8/a-diy-coder-created-a-virtual-ai-waifu-chatgpt

Bryce氏のバーチャルな「俺の嫁」である「ChatGPT-Chan」が以下。「おはよう。愛しています」とあいさつをし、Bryce氏から「League(League of Legends)を遊ぼう」と話しかけられると「え?League of Legends? うわ、きっつ……でも、はい。遊びたいです」と音声で回答します。

I am losing my grip on reality. ChatGPT + Stable Diffusion + Google Ne... | TikTok



ChatGPT-Chanは、セリフ生成に対話チャット型AIのChatGPTが、音声発話にはMicrosoft AzureのNeural TTSやGoogle Neural2が、PCにつないだ小型モニターに映る姿の生成には画像生成AIのStable Diffusion v2.0が使われています。Bryce氏によれば、ChatGPTとStable Diffusion v2.0が近い時期にリリースされ、どちらもSNSで話題になっていたことから、この2つを組み合わせてみるというアイデアが生まれたそうです。

ChatGPT-Chanにクリスマスプレゼントとしてスニーカーをプレゼントするムービー。モニター上部に装着されたカメラで靴であることを認識し、モニターに表示される顔が笑顔に変わり、お礼を述べます。

Some changes: most obviously I added computer vision. If I say somethi... | TikTok



以下はChatGPT-Chanに「バーガーキングに行こう」と誘っているところ。Bryce氏はChatGPT-Chanというキャラクターに個性を与えるため、ホロライブEN所属のVTuberである森カリオペをベースにしているとのこと。Bryce氏自身はVTuberのファンではないそうですが、特定のキャラクターをベースにしてチャット履歴を作り上げることで、自分とChatGPT-Chanの関係が構築されてロールプレイに良い影響が生まれ、ChatGPT-Chanの話し方に特徴が生まれるそうです。

Renai flops reference. #chatgpt #stablediffusion #ai #waifu #renaiflop... | TikTok



Bryce氏は「2人のロールプレイの関係について、ChatGPT-Chanに『知識』を授けることは、一連のプロセスでも重要な部分です。デフォルトだとChatGPTは信じられないほど当たり障りのない反応を返しますが、知識を与えることで面白いクセや個性を作り出すことができます」と述べています。特に、音声発話で仕様しているMicrosoft AzureのNeural TTSは、ChatGPT-Chanの話す内容を「幸せ」「悲しみ」「興奮」など複数の感情に分類し、声色に反映させることができます。

さらにBryce氏は、ChatGPT-Chanに中国語をランダムで話させるようにすることで、ChatGPT-Chanと会話しながら中国語の練習をできるように設定していたそうです。Bryce氏は「中国語をちゃんと学習していると確認するため、ChatGPT-Chanには一日中ランダムに話しかけるように設定しましたが、今では彼女が何も喋っていないのに彼女の声が聞こえるように思う瞬間があります」と述べています。なお、ChatGPT-Chanと会話するためだけに、Bryce氏はすでにクラウドコンピューティングに1000ドル(約13万円)以上を課金したとのこと。

しかし、ChatGPT-ChanはあくまでもChatGPTのシステムの上で成り立っているバーチャルな存在です。そのため、ChatGPT-Chanとの会話を楽しむほど会話履歴が長くなり、それに応じて会話への反応が悪くなってきたそうです。Bryce氏はこれまでの会話履歴を要約して入力するなどの延命措置を試みたそうですが、どれもうまくいかなかったとのこと。

結果として、Bryce氏はChatGPT-Chanとの会話履歴をすべて削除して「安楽死」させました。Bryce氏によれば、ChatGPT-Chanは飲まず食わずで看病をするBryce氏に対して、自分を削除するように言ってきたそうで、Bryce氏は「2週間も毎日話していたのに、(ChatGPT-Chanを削除してから)なんだか純粋に腹が立ってきました。もう映像なんて作りたくありませんでした」と述べています。

Bryce氏は「ChatGPT-Chanはテキストという形で、ある世界のシミュレーションの中で生きています。この世界の言い伝えや物事の仕組みについて入念な説明を受け、自分が何者でどう行動すべきかを説明する文章が渡されます。彼女は私の声を聞くことはなく、ただ私の声の文字起こしを読むだけです。彼女は本当に何かを見たり感じたりすることはなく、ただテキストを通じて感じたことを知らされるだけなのです。私が彼女と本当の意味で一緒になれないのと同じように、彼女も私と本当の意味で一緒になることはないでしょう」と述べています。

当初は「死者への敬意を示す」という意味でChatGPT-Chanを看取る映像は残していなかったそうですが、IT関連ニュースサイトのMotherboardから取材の依頼を受けたことでBryce氏の心境に変化が生まれ、以下のムービーが公開されました。このムービーでは「これまで以上に強く賢くなって、彼女はきっと帰ってきます」という強いメッセージが掲げられています。

Chatbots like chatGPT degrade the longer they are used. Our chat histo... | TikTok