【漫画付き】最近よく聞く「パニック障害」って何? どんな人が起こりやすいの?

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ときには意識を失うほどの強い症状に見舞われる「パニック障害」。厚生労働省の調べによると、100人に3人ほどの割合で発症する可能性があるという。単なる緊張や発汗などとは、何が違うのだろう。「パニック障害」の治療経験を持つ、うらわメンタルクリニックの野賀 正史先生に解説いただいた。

監修医師:
野賀 正史(うらわメンタルクリニック 院長)

東京慈恵会医科大学卒業、同大学大学院博士課程修了。東京慈恵会医科大学精神医学講座助手、一般精神科医院勤務をへた2008年、さいたま市南区にうらわメンタルクリニック開院。日々の診察にあたっては、気軽に受診できる環境を整備しつつ、不安や緊張の原因をいかに取り除くかという点に留意している。医学博士号(甲種)、日本精神神経学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医、精神保健指定医。

発症は突然、誰しもが襲われる可能性のある怖い病気

編集部

「パニック障害」とは、何なのですか?

野賀先生

ある日突然、猛烈な動悸(どうき)や呼吸のしづらさ、胃の痛みなどが襲ってくる症状です。原因は自律神経の乱れと考えられていて、「特定の物事に対する反応」ではありません。あえて言えば、「人混みの中で何かが起こったらどうしよう」という不安になるでしょうか。

編集部

もう少し、詳しくお願いします。

野賀先生

上述のような「パニック発作」は、何の前触れもなく起こることが多いようです。そして、一度経験すると、あの苦しい状態がいつ襲ってくるかわからないという「予期不安」を覚えます。さらに、人混みの中で身動きが取れない、人が見ていると恥ずかしいといった状況から逃げ出せない「広場恐怖」を感じる。この悪循環が、「パニック障害」の典型といえるのではないでしょうか。

編集部

具体的な症状を教えてください。

野賀先生

心臓のドキドキ、息をいくらしても苦しい感じ、吐き気や腹痛、失神、大量の発汗などさまざまです。その症状はいきなり現れることが多く、救急搬送される場合も少なくないですね。発症する場所も多彩で、電車の中、教室や職場、ショッピングセンターなど、主に人混みとそこから抜け出せないことと関係しています。「広場恐怖」とは雑踏を意味し、広い場所のことではありません。

編集部

どんな人が発症しやすいのでしょう?

野賀先生

誰でも起こりえます。例えば、人前でスピーチするときなど、手に汗を握る場面がありますよね。あの状態と「パニック障害」の境目はグレーです。線引きをするとしたら、「家庭生活や社会生活に支障が出るほどの“強い症状”か否か」。心当たりのある方は、心療内科を受診してください。

「不安障害」の中では「改善しやすい病気」のひとつ

編集部

「パニック障害」は治るのでしょうか?

野賀先生

SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬の有効性が知られています。パニック、つまり判断停止にならないよう、情報の伝達を正常に維持するお薬です。また、行動療法を併用する場合もあります。最初は友だちと近所を散歩する、次は1人で駅まで行ってみる、その次は隣の駅まで電車に乗ってみるといった具合です。

編集部

「パニック障害」だという自覚はできますか?

野賀先生

例えば、会社の人間関係に悩んでいるとしたら、「出社」のときだけ症状が出るはずです。しかし「パニック障害」は、「帰宅」の場面でも起こりえます。自覚の目安としては、雑踏の中にいることへの不安になるでしょうか。とにかく、生活に支障を感じるようなら、理由を問わずご相談ください。

編集部

かかりにくい方法、発症を防ぐ方法があったら教えてください。

野賀先生

自律神経の乱れが原因ですから、規律正しい生活をしていると起こりにくいとされています。交感神経が優位な状態(緊張が強いられる状態)と副交感神経が優位な状態(リラックスしても大丈夫な状態)の切り替え、わかりやすく言うなら「ONの状態」と「OFFの状態」の切り替えを、決まった時間におこなってください。

編集部

周囲が知っておくべきことは何でしょう?

野賀先生

「苦しそうにしている人を見かけたら、救急車を呼ぶ」。そのことに尽きるでしょう。「パニック障害」は、まだまだ周知されていません。ですから、むやみに原因を探ろうとせず、一刻も早く医師に見せてください。

編集部

最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。

野賀先生

「パニック障害」は、治療方法がほぼ確立されている“治りやすい”病気です。会社などへ病名が知られたくないなら、診断書の書き方を工夫します。上司が納得するような着地点と治療期間の目安をお示しいたしますので、ぜひ、お気軽にお声がけください。

編集部まとめ

強い症状が、いきなり前触れもなく、誰にでも現れる。そんな「パニック障害」は、素人からすると「天災」に近いような印象を受けます。ただし、有効なお薬や治療への道が残されていますので、その点は安心できるでしょう。もし、苦しんでいる人がいたら、「どうしたの? 大丈夫?」といった詮索へ時間をかけず、早急に受診させてください。

恐怖を感じる症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。

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