「味覚異常」になると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
味覚は、食事を楽しむため、人間にとって非常に大切な役割となります。しかし、味覚に異常が起きると本来の正しい味が感じられません。
また、味覚異常により食欲不振や消化不良につながるなどの、大きな影響を及ぼす可能性もあります。味覚異常が身体に与える影響が非常に大きいのです。
そこで本記事では、味覚異常の具体的な症状をご紹介します。味覚異常が生じる原因となる病気や治療方法も併せて解説するので、参考にしてください。
味覚異常の具体的な症状
味覚異常とは具体的にどのような症状が出るのでしょうか?
味覚障害と聞くと、味が感じられないといった症状だけをイメージされる方は多いです。しかし、症状はそれだけではなく、次のようなものが挙げられます。味覚減退
味覚消失
自発性異常味覚
解離性味覚障害
異味症
悪味症
味覚過敏
合併症
まず味覚減退については、味覚異常の中で最も多い症状となり、味が鈍くなるような症状です。薄く感じるなどがこれにあたります。
次に味覚消失は、味が全くしなくなることです。味がわからなくなる症状で、食事などでは最も影響の大きな症状でしょう。
自発性異常味覚とは、口の中に何もない状態にもかかわらず、常に味を感じるという症状です。味は、苦み・渋み・塩辛味・金属味などが挙げられます。この症状は、高齢者に多い傾向です。
解離性味覚障害とは、特定の味だけわからないという症状となります。塩味が分からず、塩加減ができなくなるといった状態です。異味症とは、口に入れた飲食物が本来の味とは違うと感じてしまう症状となります。具体的には、醤油を苦く感じたり、塩味を酸味に感じたりするような状態となります。
悪味症とは、飲食物が何ともいい表せない嫌な味に感じる症状です。
最後に味覚過敏とは、味を通常よりも濃く感じる症状です。薄味のものが、濃く感じるようになります。また、味覚異常と合わせて合併症を引き起こす可能性もあります。舌先にピリピリするような違和感を覚える舌痛症・口腔内乾燥・嗅覚障害などが代表的です。
味覚異常は何が原因で発症しますか?
この病気の原因は、不明な点が多いとされていますが、次のようなものが考えられています。偏った食事による栄養不足
薬の副作用
全身疾患による影響
癌や放射線治療による影響
口腔の病気による影響
精神的ストレスによる影響
加齢
新型コロナウイルス感染症の影響
偏った食事による栄養不足によって、味覚異常が起きる可能性があります。正しい味覚を感じるためには、特に亜鉛が必要です。
通常、舌が味覚を感じるメカニズムは、舌の表面にある細かい味蕾(みらい)というセンサーが働いているためです。この味蕾の新陳代謝が十分に行われなくなると、味覚に異常をきたします。
そして、新陳代謝が十分に行われない理由が、亜鉛不足なのです。偏った食事をしていると、亜鉛不足となり味蕾の働きは不十分となるため、味覚異常を発症します。
また、薬の副作用によっても味覚症状は発症します。主に関節リウマチ・パーキンソン病・抗アレルギー薬などの薬が、亜鉛の代謝などに影響を与えるために起こると考えられているのです。
また全身疾患によっても引き起こされると考えられています。全身疾患とは、糖尿病・腎不全内分泌機能の低下などです。これらの病気の合併症として神経障害があり、その結果、味覚異常を引き起こすといわれています。
癌や放射線治療によっても、この病気は引き起こされます。放射線治療は、口の粘膜などに放射線がかかって炎症を起こすことで、味覚へ影響するのです。
口腔の病気としては、舌炎・舌苔などが挙げられます。舌炎は舌に炎症が起きる病気で、主に火傷や義歯による傷や感染症によって引き起こされます。舌苔は白い苔のようなものが舌表面に付く病気です。苔がカバーのようになってしまい、味覚を正しく感じ取れなくなってしまいます。
精神的ストレスによる影響も、原因のひとつです。うつ病などの病気でも発症することがあり、治療のための抗うつ薬などの薬によって発症するケースもあります。
さらに、加齢によっても味を感じる機能が低下するといわれています。60代~70代で症状を訴える方が多い傾向です。また、新型コロナウイルス感染症の症状や後遺症としても味覚異常が発症することがあります。
味覚異常が生じる病気と受診目安
味覚異常が生じる病気を教えてください。
味覚異常が生じる病気は、非常にさまざまです。先述したように、原因が多岐にわたっているため、多くの病気から発症する可能性があります。全身疾患系の病気であれば、糖尿病・慢性腎不全・鉄欠乏性貧血などが代表的です。また、癌からも発症する可能性があり、特に頭頚部や脳などの癌によって生じることがあります。舌炎・舌苔・シェーグレン症候群などの口腔・のどの病気でも発症します。
味覚異常はどのタイミングで受診すべきですか?
受診のタイミングとしては、異変を感じたらすぐに受診しましょう。味覚を正しく感じられないだけと考える方も多いですが、機能が低下することでさまざまな弊害が生まれます。代表的なものとしては、食欲不振による栄養不足や腐ったものを口に運んでしまう可能性です。味がわからないなどの影響で食欲がわかず、栄養不足を起こす可能性があります。
また、腐ったものを感じ取れず摂取してしまうと、命にかかわる可能性もあります。あらゆる悪影響が考えられるため、早期受診、早期治療が大切です。
味覚異常を感じた場合、何科を受診したら良いのでしょうか?
味がわからない異変や本来の味とは違うと感じた場合は、味覚異常の診療を行っている科目を受診するようにしましょう。主な診療科目としては、歯科・耳鼻咽喉科・内科・口腔外科などが挙げられます。必ずしも味覚について診療を行っていない場合もあるため、注意して選ぶようにしましょう。味覚異常の治療方法や予防方法
味覚異常は治療で完治できますか?
原因によっては、完治する可能性があります。例えば、先述した原因の中でも薬による影響の場合であれば、薬の使用を中止すれば症状は消えていきます。しかし、すぐには薬を中止できないこともあるため、治療には長い期間を要するでしょう。
また、全身疾患によって起きているのであれば、原因となる疾患が治れば味覚の異常もなくなっていきます。疾患によってはすぐに改善できるものばかりではありませんが、症状が改善することで味覚の異変も徐々に減ってくるため、完治させることは不可能ではありません。
味覚異常の治療方法を教えてください。
治療方法としては、原則として亜鉛の内服薬を使用しながら、原因疾患に対しての治療を進めていきます。例えば、薬剤の影響で生じているのであれば薬剤の中止を行い、糖尿病による影響であれば体質改善のための治療を行います。しかし、薬剤の中止が不可能な場合もあり、体質改善の治療も長期に及ぶ場合もあるでしょう。そのため、原因が特定されない場合も含めて、漢方によって幅広く治療を進めるケースもあります。
味覚異常が起こった場合の食事はどんなところに気をつけたら良いのでしょうか?
味覚異常が起こった場合の食事における注意点としては、亜鉛を多く取り入れるようにすることです。亜鉛が多く含まれる食材には、ゴマ・牡蠣・卵の卵黄・豆腐・チーズ・海藻などさまざまなものがあります。食事のみで足りない亜鉛を補うことは難しいですが、普段の食事に含まれる亜鉛の量を考えて摂取することは非常に大切です。
味覚異常を事前に防ぐことは可能ですか?
まずは、先述したような亜鉛を多く含む食事を普段からとることが、予防につながります。食事による亜鉛の摂取が難しい場合は、市販のサプリメントもあるため、内服を併用することで補えるでしょう。また、原因となる疾患にならないための予防策も必要です。食事習慣を改善して糖尿病などにならないようにすることや、口腔内を清潔に保って舌苔などの口腔の病気にならないようにすることが必要となります。原因疾患の予防は簡単ではありませんが、味覚に影響が出るほどの病気の悪化を起こさないようにしましょう。
最後に、メッセージをお願いします。
味覚異常は、本来の味を正しく感じられない病気です。食事は生きていくうえで重要な役割を持ち、楽しみに感じる要素でもあるため、この異常は大きいです。また、原因には不明な点も多いため、さまざまな可能性が考えられます。原因を特定して治療を行い、完治させることは簡単ではないでしょう。そのため、予防と早期受診が非常に大切です。些細な違和感であっても、万が一異変を感じた場合には、専門の医療機関を受診しましょう。
編集部まとめ
甘い・辛い・苦いなどの味覚を正常に感じられることは、非常に大切なことです。食事は無くてはならないものであり、正常に味を感じられるからこそ食欲がわきます。
味覚に異常があれば、正しい味を感じられないだけでなく、食欲不振を起こす可能性があるでしょう。
また、味覚が異常であれば腐ったものなどを見分けることも不可能なケースがあります。痛んだものを誤って口に運んでは、命に関わる可能性もあるでしょう。
そのような危険な状態を避けるためにも、異変を感じた場合には専門の医療機関を受診し、適切な治療を進めましょう。
参考文献
28.味覚障害を起こす薬剤