【漫画付き】細菌とウイルスって何が違うの?

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ともに病原微生物の仲間といえる「細菌」と「ウイルス」。名称が違うからには、その正体も異なるはず。しかし、いったい何が違うのでしょう。そして、その差は私たちにどんな影響をもたらすのでしょうか。そんな疑問を虎溪医院の虎溪先生へ投げかけてみました。この機会に、正しい知識を身につけておきましょう。

監修医師:
虎溪 則孝(虎溪医院 院長)

獨協医科大学医学部卒業。獨協医科大学越谷病院にて循環器内科助教や循環器内科講師を努める。2014年、埼玉県草加市に「医療法人虎溪医院」設立、院長に就任。医学博士、獨協医科大学越谷病院循環器内科非常勤講師、日本内科学会認定内科医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本不整脈心電学会認定不整脈専門医、日本医師会認定産業医、身体障害者福祉法指定医師(心臓機能障害)。日本心電学会、日本心臓病学会所属。

ウイルスには細胞がないという事実

編集部

細菌とウイルスの違いについて教えていただけますか?

虎溪先生

一番大きな違いは、生物か否かという点でしょう。細菌は単細胞生物で、学校の授業で習ったような構造をしています。また、自分の力でエネルギーを生み、増殖することができます。ちなみに「真菌」といわれるものは多細胞生物で、カビやキノコなどが含まれます。

編集部

ウイルスは生物に含まれないのですか?

虎溪先生

生物の最小単位である細胞を持っていないので、非生物に分類する場合が多いです。大きさにして10万分の1mmから1万分の1mm程度。細菌の10分の1から100分の1くらいのサイズです。ただし、人や動物の細胞の中に入ると、自分の遺伝子情報をコピーして増殖することができます。その意味で、生物的な側面も持っています。

編集部

細菌の代表格とその症状は?

虎溪先生

病気に関連した細菌では、肺炎を起こす肺炎球菌、結核を起こす結核菌、咽頭炎を起こす溶連菌、食中毒の原因とされるサルモネラ菌病原性大腸菌赤痢菌コレラ菌などですね。胃がんの一因とされるピロリ菌も細菌です。

編集部

ウイルスの代表格とその症状についてもお願いします。

虎溪先生

インフルエンザを起こすインフルエンザウイルス、胃腸炎を起こすノロウイルスなどは日常よくみられます。ヘルペスウイルス水痘(みずぼうそう)帯状疱疹ウイルス麻疹(はしか)ウイルス風疹ウイルス、各種(A型, B型, C型)肝炎ウイルスなど疾患名がそのままウイルスの名前になっています。また子宮頸がんのようにウイルス(ヒトパピローマウイルス)によって起きるがんもあります。

編集部

細菌なのかウイルスなのか、区別できない微生物は?

虎溪先生

肺炎を起こすマイコプラズマは、細菌なのに細胞壁を持っておらず、ウイルスのような増殖の仕方をします。また、狂牛病の原因とされるプリオンは、ウイルスより小さいタンパク質の塊です。

両者の違いから起こりえること

編集部

風邪っぽい症状が起きたとき、細菌かウイルスかを自分で判断できますか?

虎溪先生

まず、風邪の原因は基本的にウイルスです。しかし風邪に似た疾患では細菌が原因のこともあります。とても大まかな傾向ですが、ウイルスの場合、症状が複数の箇所にでます。せき、鼻水、のどの痛みが一様にあればまず風邪(ウイルス)です。一方で、肺炎やかぜに似た溶連菌感染症の原因は細菌で、それぞれせきだけ、のどの痛みだけといったように症状が一か所に集中し、かつ高熱がでる傾向にあります。

編集部

医院では、どのように診断しているのでしょう?

虎溪先生

風邪または風邪に似た病気の診断では、基本的に上記の原則が大事です。加えて、インフルエンザや溶連菌、マイコプラズマなどは迅速キットがありますので、必要に応じ使用します。また、細菌感染症なら白血球の数値が上がるはずです。採血検査による白血球数の所見で、細菌かウイルスかおおむね見当がつきますので、症例によっては行うこともあります。

編集部

細菌かウイルスかで、治療に違いはありますか?

虎溪先生

まず抗菌薬(抗生物質)は細菌感染症に対して作られた薬なので、ウイルスには無効です。したがって風邪とわかれば、抗菌薬は投与せず自然治癒を待ちます。ウイルスに効く薬は抗ウイルス薬といいますが、インフルエンザウイルス、帯状疱疹ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVウイルス(エイズ)といったごく限られたウイルスにのみ開発されているだけです。

感染症防止には、手洗いが一番

編集部

いままでのお話を伺うと、ウイルスに対する予防が難しそうです。

虎溪先生

たしかに、かぜを含め多くのウイルス感染症には特効薬がなく、自分の免疫力で治癒するしかありません。しかし日本脳炎、麻疹、風疹、水痘など予防注射によってほぼ確実に防げるものもあります。防げるときには防ぐことも大事です。

編集部

家庭での衛生管理で注意したいことは。

虎溪先生

かぜの予防には手洗い水やお茶によるうがいがある程度有効です。また同居者に罹患者が出た場合には、ドアノブなどよく触れるところをアルコールなど(ノロウイルスは塩素系消毒剤)で小まめに消毒しましょう。また自分がかかってしまった場合には、咳やくしゃみが飛ばないようにマスクをして二次感染を防ぎましょう。

編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

虎溪先生

細菌やウイルスと人間は切っても切れない共存関係です。人間にとって必要不可欠な細菌もいれば、人間を絶滅させる可能性があるウイルスもいるかも知れません。せっかくいい抗菌薬が作られても乱用すればすぐに耐性菌が現れます。私たち医師も含め、細菌、ウイルスとの「良いつきあい方」を考えて行かなければならないかもしれません。

編集部まとめ

細菌は生物だから一部の薬が効く、ウイルスはモノの性質を持っているから薬がほとんど効かない。したがって、ウイルスによる不調は、原則として自己免疫力で対処するしかないようです。また、はしかや水疱瘡などのウイルス性疾患にかかると、体の中で抗体がつくられます。だからこそ、再発しにくいのです。細菌とウイルスの違いは、「薬で治すか免疫で治すかの違い」と言ってもいいのではないでしょうか。