ZOZOマリンスタジアムとチケットリセールサービスの担当者【写真:PLM】

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ロッテは昨年開幕前に「公式チケットリセール by チケ流」を開設

 プロ野球の観戦チケットを取得するために、少しずつ定着してきたチケットのリセールサービス。急な用事で行けなくなってしまったチケットをリセールするための受け皿としても機能を果たしている。今回はロッテのチケット担当者と株式会社ウェイブダッシュの担当者、計3人による座談会を実施。ロッテのチケットセールスの現状や、公式チケットリセール開設から1年半を経ての手応えなどを語っている。

 対談に出席したのは「株式会社千葉ロッテマリーンズBtoC本部 コンシューマビジネス部 チケットグループ グループ長」の九里裕一郎さん(以下、M九里)、「株式会社ウェイブダッシュ 経営企画部 スポーツビジネスアライアンスリーダーの薗田好豊さん(以下、W薗田)、「株式会社千葉ロッテマリーンズ BtoC本部 コンシューマビジネス部部長」飯田健太さん(以下、M飯田)。

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――昨年を振り返って

M九里:2021年は開幕してから5000人または1万人での販売となり、最終的には50%以内(ZOZOマリンは1万5000人)になりました。2021年の開幕前にウェイブダッシュさんの力をお借りして「千葉ロッテマリーンズ公式チケットリセール by チケ流」を立ち上げたことで、来られなくなったファンの方がチケットの出品(掲載)をされて、プライマリー(1次流通)で購入できなかったファンの方々に対してセカンダリー(2次流通)をご案内でき、より多くのファンにリアル観戦いただけるようになったと思います。

M飯田:入場制限によってチケットの需要が高まった感覚です。注目度の高い試合に関してはプライマリーで完売するケースが多かった印象です。その中でも球団公式のセカンダリーサービスを展開させていただくことで、ファンの方々が安心して売買を行うことができる場を提供できていたのかなと思います。

――コロナ禍でチケット販売の取り組みとして変わったことは

M飯田:2020年シーズンからダイナミックプライシング(以下、DP)を導入しました。従来のプロ野球のチケッティング事業においてはフレックスプライスがスタンダードで、開幕戦やゴールデンウィーク、シーズン最終戦といった球団にとって特別な試合は、ファンの皆さまにとっても特別な試合ですので価格差がありました。ただ、実際の需給バランスとのギャップが生じることもありました。多くの方にZOZOマリンスタジアムでのマリーンズ主催試合に興味を持っていただき、チケットをご購入いただいて、そこで初めて、チケットの価値というものが明確になります。需要が高まってくればもちろん価値変動し、需要が低ければ逆の価値変動が生じるというところが、DPの大前提になります。

W薗田:DPを導入されているというのは、先進的な考えだなと思っています。DPはある意味、球団の動向にファンの皆さまがその価値を決めていくということだと思いますので、関わる球団の皆さまも緊張感があると思います。“その日の適正価格を決めていく”という意味では、チケットが比較的取りやすい平日は週末と比較すると需要が低いため、平日こそ球場に行きやすくなるというのが私たちのDPのイメージです。

――セカンダリーに期待していたことは

M九里:1度ご購入いただいたチケットはキャンセルできませんという前提のもとで販売しており、急な用事などで試合観戦が難しくなったという方の救済は我々では難しいため、ウェイブダッシュさんの力をいただいて、チケットをお持ちの方もウェイブダッシュさんもマリーンズもWin-Winになることを期待しました。結果的に期待通りの取り組みができているのかなと考えております。

佐々木朗希の完全試合で上がった注目度…チケット購入に直結

――ユーザーの声や意見をどのように受け止めているか?

M九里:出品された方々のコメントを見ていると、お子さまが骨折をしてしまって、家族連れで本当は行きたかったのに行けなくなってしまったので、泣く泣く出品しますというケースもあります。そういった方々が、行けなかった悔しい気持ちを少しでも和らげることができればと思っています。

W薗田:今回のロッテをはじめ、2020年に西武ライオンズ、2021年に日本ハム、オリックスの4球団が公式・公認としてサービスを始めたことで、パ・リーグ4球団の取り扱いが飛躍的に増加しています。球団が公式チケットリセールを整備することでリセールサービスへの障壁が取り払われ、行けなくなったチケットを売りたい・譲りたいという潜在的なニーズに対して適切なサービスを提供することができ、ファンの皆さまに気軽にご利用いただけるようになったのではないかと思います。

――2021年とも状況が異なる2022年。現況は

M飯田:今年は入場制限がなくなりましたので、事業規模も昨年と比べ大きくなっているというのは事実ですが、コロナ前に戻っているかといわれると、まだそこまでは至っていません。今年のマリーンズ主催試合の来場者数はコロナ前2019年の約90%で推移している(7月末時点)状況です。今後、事業として向き合ううえで特に重要なことは、この3年間で足が遠のいてしまった方々とのコミュニケーションです。多くの方にマリーンズ主催試合に足を運んでいただきたいので、興味を持っていただけるような企画、情報発信を継続的に行っていく必要があります。

W薗田:実際今シーズンもマリーンズさんの一番の特徴であるファンの声出しの応援がまだ聞けないのが悲しいですね。

M飯田:これまでZOZOマリンスタジアムでのマリーンズ主催試合は、外野席の観戦ニーズが高い状況でしたが、声出し応援が困難なご時世ですとこれまでの売れ方とは変化が生じています。

――2022年のセカンダリーの現況は

W薗田:既に去年を超えていくペースです。もちろんこれは、プライマリーの販売数が増えているので、当然のことですが。

――2021年がイレギュラーだった分、2022年がこれからのセカンダリーの指標になっていく

M飯田:チケットをご購入いただく方は、チケットそのものにお金をお支払いいただいているのではなく「そこに行きたい」という動機が存在し、そのための手段としてチケットを購入されています。現在チケットやグッズをご購入いただく際に「マリーンズID」にログインいただくようにしていますが、今年4月に佐々木朗希投手が完全試合を達成した際は注目度が上がりました。佐々木投手をひと目見たい、応援したいという思いから、チケットを買ってみようかなというきっかけとなり、本当に多くの方に新たにマリーンズIDを取得いただきました。このサイクルが、そのほかのマーケティング施策でも生まれていくと良いなと思っています。

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 プロ野球観戦とは、まずはチケットを入手しなければ始まらない。その入手経路の選択肢が増えたことの裏側には、チームと観客の架け橋として奮闘するプライマリー、セカンダリーそれぞれの担当者の尽力があった。(「パ・リーグ インサイト」海老原悠)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)