「大村車両基地駅」まもなく開業 展望はゼロでも重要な「存在理由」とは
大村市にとっては2駅同時開業となります。
全国初「車両基地駅」
九州新幹線の長崎ルート「西九州新幹線」が、武雄温泉〜長崎間で2022年9月23日に開業を迎えます。部分開業という形ですが、特急「かもめ」で2時間かかっていた博多〜長崎間が、特急「リレーかもめ」+新幹線「かもめ」の乗り継ぎにより1時間半に短縮されます。
完成し9月23日の開業を待つ大村車両基地駅(画像:大村市)。
新幹線の新大村駅が開業する長崎県大村市では、在来線のJR大村線に、乗り換え駅の新大村駅に加え、単独の新駅「大村車両基地駅」も開業します。駅名に「車両基地」を含む珍しいネーミングの大村車両基地駅は、竹松〜松原間に設置。ホーム1本の駅で、駅前ロータリーが整備され、バスが発着するようになります。
駅舎は木材を取り入れた内装で、一部がガラス張りの2階部分のような構造となっています。ここから車両基地は見渡せるのでしょうか。JR九州は「駅舎の高くなっている部分は吹き抜け構造で、展望設備となっているわけではありません。また車両基地は高い位置にあるため、駅から見ることはできません」と話します。
「車両基地駅」新駅設置の「もう一つの目的」は
大村市北部の竹松〜松原間は4.3kmも離れていましたが、住宅地の辺縁に近く、中間駅の設置計画はありませんでした。
設置に向けて大きく動いたのが、2013(平成25)年。新幹線が工事段階になり、新大村駅と車両基地という2つの関連施設が市内に設置されるのにあわせて、新たな街づくりをおこなうこととなり、「新大村駅まちづくり委員会」が結成されました。
その中で、車両基地周辺地区は「車両基地ゾーン」と「文教ゾーン」の2地区が設定されました。「文教ゾーン」には中学校と特別支援学校、そして新設予定のろう学校と、教育施設が近接して複数立ち並ぶことになります。
「車両基地ゾーン」については、「車両基地の見える公園」もしくは「車両基地の見える新駅」を大村線沿いに設置するという2案がありました。
この2案から「文教ゾーン」との兼ね合いで新駅設置計画が採用、「通学需要」「車両基地観光」の両輪で、新駅設置に向けてJRへ請願していこう、という流れになったのです。
駅名は2020年3月に、市が案として「大村車両基地」「福重」「郡川」の3つを要望。その中から同年11月に「大村車両基地」が決定しました。
車両基地の見える新駅という構想の実現は叶いませんでしたが、車両基地公開の際の拠点として、この駅は全国からの玄関口となります。開業後最初に行われる基地公開は、10月8日の「新幹線フェスタ 2022 in 長崎」となる予定です。