2022年8月25日・26日に東京都立川市で開催された「レスキューエキスポ in 立川」。そこでヤマハが新たなコンセプトのレスキューボートを展示していました。タイヤが付いたりゲート開閉が可能な次世代の救助艇とは。

ヤマハが開発中の新型救助艇コンセプトモデル

 9月は台風シーズンです。気象庁の説明によると、台風の発生数は8月が年間で最も多いものの、台風を流す上空の風がまだ弱いために台風は不安定な経路をとることが多く、9月以降になると上空の大気の影響から放物線を描くように日本付近を通るようになるとのこと。結果、過去30年間のデータによると9月が最も上陸数の多い月になるそうです。

 そういったなか、2022年8月下旬に東京都立川市で開催された「RESCUE EXPO in 立川」において、興味深いボートが展示されていました。


ヤマハの新たな「洪水・水難救助艇RS-13」コンセプト(柘植優介撮影)。

 その名は「洪水・水難救助艇RS-13」。展示したのはヤマハ発動機です。同社はこれまでも各種展示会などで救助用ボートを披露してきましたが、今回のものは改良を加えた最新型だといいます。

 ヤマハが提案する救助艇は、車いす利用者がそのまま乗り降りできるようになっているのが特徴で、艇体前面に開閉式のフロントゲートが設けられている点にあります。また、水面に浮かぶ要救助者を助ける際も、この部分を倒すと艇体の舷側を下げる形になるため、救助しやすいとのこと。なお、ゲートは前面にあるので、エンジン部分から最も遠いところで救助活動ができ、安全面からも良いとのことでした。

タイヤ付きなので人力で運ぶこともOK

 ただ今回、展示されたRS-13が従来のヤマハ製救助艇と最も異なる点、それはタイヤが付いた点です。洪水の場合、もともと河川や湖沼だった場所に水がたまるわけではないため、常に航行できるわけではありません。船底を擦ってしまうような浅い場所もあれば、目に見えない障害物が水面下に潜んでいる可能性もあります。そういったときにタイヤが付いていると便利だそう。

 またタイヤ付きのため、自動車でそのまま牽引することもできるほか、人力での陸上移動も容易というメリットを有しています。なお、このタイヤは外すことも可能で、その際も特別な器具など用いずに脱着できます。説明によると、付けたままでも航行できるものの、水の抵抗が増えてしまうため、できることなら外した方が船としての性能は向上するということでした。


ヤマハの新たな「洪水・水難救助艇RS-13」コンセプト(柘植優介撮影)。

 ほかにも艇体の内側と外側の両方にはトラックレールを装備。これにより様々なオプションパーツを増設することが可能です。たとえば、これを使って梯子を艇内に固定することで、洪水時などに建物の屋上や2階の窓から要救助者を救出したり、護岸工事が施されてコンクリートで垂直に近い形に成形されてしまった都市河川など、高低差のある場所でも乗り降りしやすくなります。

 担当者によると、現時点ではコンセプトモデル、すなわち試作品であり市販はまだとのこと。しかし、すでに静岡県内の消防機関と連携し、さまざまな実証試験を行い、開発は最終段階に来ているといいます。なお、今回展示されていたRS-13は小型船舶としての認証も得ているため、日本沿海5海里(約9.3km)までなら航行できるそうです。

 ゴムボートと比べ、より使い勝手に優れているRS-13。もしかしたら一層の改良が施されたうえで、近い将来、全国の消防・防災組織で使われ始めているかもしれません。