東京駅前に新設される東京ミッドタウン八重洲、その地下に開業する「バスターミナル東京八重洲」が公開されました。都心の一等地の商業ビルに生まれるバスターミナルは、成功するのでしょうか。

東京ミッドタウン八重洲の地下に「バスターミナル東京八重洲」

 東京駅八重洲口に新設の「バスターミナル東京八重洲」、その内覧会が2022年9月15日(木)に行われました。開業は2日後の17日(土)です。


バスターミナル東京八重洲の出発式。ミッドタウンに入居する城東小学校の児童が乗車(中島洋平撮影)。

 同バスターミナルは、同日先行開業する「東京ミッドタウン八重洲」の地下2階に設けられます。場所は東京駅八重洲南口から通りを挟んだ目の前。今回は第一期開業で、3年後には第二期、その3年後、2028年度の第三期開業で全面オープンすると、乗降用20バース、待機用8バースを備える、国内最大級の規模になります。

 バスターミナル東京八重洲は、東京ミッドタウン八重洲を含む周辺3棟のビルそれぞれの地下に設けられます。最終的に、第一期エリアと第三期エリアは一体化され、第二期エリアは大通りや地下街を挟んで離れた施設となる予定です。ターミナル部分はUR都市機構(独立行政法人都市再生機構)が整備し、「バスタ新宿」の実績を買われた京王電鉄バスが運営します。

 これにより、東京駅周辺に分散している高速バス停留所を統合。駅から徒歩5分ほどの「鍛冶橋駐車場」に発着していた高速バスも、こちらに集約される見込みです。高速バス利用者の利便性を高めるとともに、周辺交通の円滑化なども期待されています。

なぜか「11番乗り場」から始まるバスターミナル

 今回開業するバスターミナル東京八重洲の第一期は、地下2階に6つの乗り場、3台分のバス待機場が設けられています。待合スペースと車路・乗り場はガラスで仕切られており、今回はまだオープンしていませんでしたが、地下2階にはコンビニも併設されます。

 ちなみに、乗り場番号が「11」から始まっているのは、道路を挟んで駅側にある「JR高速バスターミナル」の乗り場番号が一桁なので、それと混同しないためだそうです。第二期以降の乗り場番号の付番をどうするかは決まっていないといいます。

え、チケットカウンターこれだけ!?

 地下1階がバスターミナルのインフォメーションカウンターや商業施設です。「バスタ新宿」のズラリとならぶカウンターに比べると、はるかに小規模で、バスのチケット発券機は1台しかありません。説明員によると、予約不要の便が多いほか、予約が必要な長距離路線なども、いまやほぼスマホでの利用が占めるので、この規模でも何とかなるのだそう。

 商業施設は、たとえば立ち食いの寿司カウンターや、パン店、ワンハンドで食べられる卵サンドおにぎりの店(ポーたま)など、素早さを重視した店舗が多いのは、バスターミナルならではでしょう。マッサージ店やドラッグストアもあります。モバイルバッテリーで知られる「ANKER」の直営店もあり、同社の担当は、移動する人が多い点に着目して出店したと話していました。

 なお、今回オープンする東京ミッドタウン八重洲としての商業施設は、この地下1階部分のみ。本開業は2023年3月となります。

どんなバスが?


テープカットの様子(中島洋平撮影)。

 発着便の特徴は、路上のバス停から移転した千葉方面の高速バスが多くを占めます。日常的に通勤通学で使われている高速バスです。これらは予約なしの先着順で乗車できる路線のため、乗り場の前には乗車待ちの列をつくる誘導線が引かれていました。

 付近の「鍛冶橋駐車場」などから移転した長距離の夜行便も多く発着します。その行先は、北は青森から、南は九州博多まで。この博多便の「天領ライナー」は、バスタ新宿発着の西鉄「はかた号」と並ぶ日本最長の路線です。

 現状、東京駅前の路上などで発着していた1日1200便のうち、500便がバスターミナル東京八重洲に移行、さらに新規乗り入れ100便を含めた約600便が、ここから発着します。

直接的には金を生まない バスターミナルは“何を”生み出すか

 記者会見に登壇した東京都中央区の吉田不曇副区長によると、今回の計画の発端は2002(平成14)年。東京駅周辺全体の再開発を話し合う委員会で、丸ノ内側に比べて「八重洲口の広場の交通容量が大きくない」と指摘されたことだといいます。そこから20年をかけ、民間主導による再開発ビルの地下のバスターミナルが日の目を見ることになりました。

 商業施設を運営する三井不動産から見ると、「1日90万人が利用する東京駅、15万人が通過する八重洲地下街、それに直結という得難い立地」(商業施設本部 アーバン事業部長 牛河孝之さん)だそう。

 ただ、中央区の吉田副区長は、施設としてみれば地下のバスターミナルは「採算性のあまりよくない床(フロア)」、UR都市機構も「バスターミナルを都心の一等地で運営するのは厳しいものがあるでしょう」といいます。URはバスターミナルを社会課題に対応するものとし、運営を長期的に見つめていくとしましたが、このビルのなかでバスターミナルそのものは、直接お金を生むものではないといえます。


東京ミッドタウン八重洲外観。地下にバスターミナル東京八重洲(中島洋平撮影)。

 それでも、三井不動産のバスターミナルへの期待は大きいようです。

「従来は、駅や空港から当社の施設までどうお越しいただくかを考えてきましたが、ここは全国から直接、多くの人が訪れます。1日600便が発着し、イベントなどしなくても、人が絶えず移動する場所など、当社にはこれまでにありません。初めて東京に来て、最初に降り立ったのが当社の施設、という方もいらっしゃるでしょう」(広報担当)

 ちなみに、東京ミッドタウン八重洲には、もともとこの場所にあった中央区立城東小学校も入居しています。認定こども園や、地下4階には周辺へのエネルギー供給も想定した「八重洲エネルギーセンター」なども、直接的にはあまりお金を生まないものかもしれませんが、入居テナントからは「小学校と連携して何かをしたい!」といった期待も大きいそうです。