「扇風機付き上着、飛行機に預けられる?」 自由過ぎる客の質問… 羽田のANA精鋭地上係員どう対応?
「出発10分前に空港着いた!ゴルフがあるから飛行機遅れるのは困る!」これを英語で…。
約1800人の頂点を極めるグランプリ
「扇風機付きの上着を預け荷物に持ち込みたい」
「ガスコンロを機内に持ち込みたいんだけど」
「窓際を取っていたのに機材変更で席が変わってしまった。メールだけで連絡してくるとは一方的だ。一言言いたい(※すでに家族が予約センターへ連絡し機材変更対象便で再度の座席指定手続きを完了済み)」
「手荷物の返却まで返却場で待ちたくないので、大型スーツケースを機内に持ち込みたい」
「出発10分前に空港に着いた。(英語で)到着地でゴルフがあるから乗れないと困る」
――これらは、羽田空港で働くANA(全日空)の地上係員約1800人のなかから、最高の旅客対応スキルをもつスタッフを選ぶ社内イベント「Haneda’s Prideコンテスト」に出場したスタッフへの実技審査で、旅客に扮したANA社員から投げかけられた質問・意見です。
「Haneda’s Prideコンテスト」の様子(2022年9月、乗りものニュース編集部撮影)。
「羽田のANA地上係員ナンバーワン決定戦」ともいえるこのコンテスト、今回は18名が参加しました。実技審査は1人5分程度で、大勢のスタッフが見守るなか、さまざまなケースの旅客へ対応します。内容は出場者が本番に挑むまでどういうケースに遭遇するかわからない“ぶっつけ本番”スタイルで、日本語だけではなく、英語を用いて対応を求められるケースもありました。
なお、冒頭の扇風機付きの上着のケースについて出場者は「内蔵されているバッテリーを取り外せば受託手荷物として預けられる」と回答。ガスコンロのケースでは、出場者はガスボンベを取り外したか聞いたうえ、コンロ部分にガスが残留していない事を入念に確認し、機内に持ち込みを許可する対応を取りました。乗り遅れのケースでは、振替先の便の到着予定時刻を最初に案内するといった“機転”もみられました。
「おもてなしの最高峰」を獲得した接遇は?
こういった出演者の高い接遇スキルに、ANAエアポートサービスの小山田 亜希子社長をはじめとする審査員も「堂々と持てる知識や接客力を発揮されていて、採点するのは本当に難しい作業でした」「知識の深さ、丁寧さはもちろんのこと、多様なフレンドリーさを維持しながら、品格も感じられる接遇でした。こんな難易度の高いコンテストをされてるとは思わなかったです」と総評しました。
グランプリを獲得したのは、パリ行きの日本人と見られる旅客に対し、顔認証を用いた最新の搭乗手続き「Face Express」の説明や、有料機内食メニューの質問などに対応した4課の阿部美月さん。「緊張なく自然体で迎えられたのがよかった」とし、「コロナ禍において、接遇を求められる方、非接触を求められる方がいらっしゃると思うので、どちらのニーズを求められているかを汲み取って接遇できればと考えました」とコメントしています。
「Haneda’s Prideコンテスト」の様子(2022年9月、乗りものニュース編集部撮影)。
なお阿部さんのほか、準グランプリ1人、特別審査員賞2名の地上係員が表彰をうけました。受賞者は普段の接遇で気をつけているポイントを「お客様のニーズは私達からでないと引き出せないので、声色と表情に着目する」「コロナ禍も3年目になって、ついつい忘れてしまいそうになるのですが、マスク越しでも笑顔が伝わるように……というのを心がけています」と話します。
小山田 亜希子社長は「その人その人、そのタイミングでふさわしい接客があり、お客様を観察して、“七変化”していくのが地上係員の楽しさであり難しさでもある」としたうえ「難しいケースも多い仕事ですが、心を砕いて創意工夫し、研鑽していくことが大切です」話します。