名神高速「2枚並ぶキロポスト」の謎 数字に400mのズレ 正しい距離はどっちなんだ!?
道路の起点からの距離を表すキロポストは、非常時に自分の位置を知らせる目安にもなりますが、名神高速には、数字の異なるキロポストが1か所に2枚、立っているところがあるのです。
なぜキロポスト2つ? 名神「今須トンネル」の怪
高速道路の本線上では、路肩に「キロポスト」と呼ばれる数字が書かれた板が設置されています。この数字は基本的に、路線の起点からの距離を表しており、ハイウェイラジオなどでは「〇〇キロポスト付近に故障車が停まっています」といった放送がある場合も。道路管理のうえでも、また利用者が非常時に自分の位置を知る目安としても使われます。
このように大切なキロポスト、普通は同じ場所に1枚しかありませんが、名神高速には、数字の異なるキロポストが2枚、並んでいるところがあります。その場所は岐阜県関ケ原町の「今須トンネル」です。
名神 今須トンネル上り線(乗りものニュース編集部撮影)。
今須トンネル上り線の入口には、「393.2」のキロポストの上に「392.8」のキロポストが表示されています。なお、名神のキロポストは東名高速の起点、東京都世田谷区からの通しの数字となっています。
実はこれ、かつて行われた改良工事の名残です。
そもそも開通当初の名神に、今須トンネルはありませんでした。この区間は今よりもやや南側を走っており、曲線半径280mという、現在の基準では考えられない急カーブが存在し、事故が多発。「魔のカーブ」とまで言われていました。そこで1978(昭和53)、現在の今須トンネル経由の新ルートに付け替えるという線形改良がおこなわれたのです。
これにより、名神の全長は400m短くなりましたが、ここでひとつの問題が発生したのです。
キロポストどうしよう…せや、2つ付けちゃえ!?
今須トンネルルートの開通により全長が短くなると、トンネルの出口から京都側は、キロポストを全て取り替えなければならない、ということになります。
そこで、トンネルの出口(京都側)に2枚のキロポストを設置し、全て交換しなくていいようにしたのです。つまり、上り線トンネルの入口の「393.2」キロポストは改良前の、その上に設置されている「392.8」キロポストは改良後の数字ということになります。
こうしたズレがあるとはいえ、全体で見れば、前出したキロポストの役割を損なうことはないかしれません。しかしなかには、このズレが顕在化しているものがあります。それは、SAなどで配布している“紙の地図”です。
NEXCO西日本が配布している「高速道路ガイドマップ」で、名神は東名からの通しのキロ程が記載されており、今須トンネルより京都側の米原JCTは「405.5」キロ地点とされています。一方、2022年春に配布を終了したNEXCO中日本の「サービスエリアガイド」では、名神は小牧ICからの距離でキロ程が記載され、米原JCTは「58.4」キロ地点となっていました。これに東名から小牧ICまでのキロ程346.7を足した数字は「405.1」。つまり、今須の改良による400m短縮が反映された数字になっています。
今須トンネル周辺はルートの付け替えが行われている(乗りものニュース編集部撮影)。
全国各地に存在するキロポストは、一見して機械的に設けられている印象があるかもしれませんが、よく見ると、そこには人間らしい戸惑いや、努力の形跡がうかがえることがあるのです。