飛行機に乗ると必ず視聴する「機内安全ビデオ」。世界の航空会社の中には、エンタメ度の高いオモシロビデオを流している会社もあります。いかに観てもらうかを追求した結果といえますが、その価値は“安全のため”だけではなさそうです。

乗務員がエルフ! フィットネス!! 全裸!?

 飛行機に搭乗した際、モニターのビデオプログラムなど見ないという人でも、“必ず見てください”といわれるプログラム、それが「安全ビデオ」です。ただ、「座席ベルトをお締めください」「救命胴衣は座席の下に」など、どうしても同じような内容になりがち。そこでいま、世界中のエアラインが競いあって、この機内安全ビデオを面白いものにする取り組みを進めています。
 
 そうしたユニークな機内安全ビデオはYouTube上でも公開されていて、スマホでも観られます。「座席ベルトをお締めください」といった説明を、各社どんな演出で表現しているのでしょうか。


ニュージーランド航空。機内安全ビデオのユニークさには定評がある(乗りものニュース編集部撮影)。

 なかでも有名なのが、ニュージーランド航空。数々のオモシロ機内安全ビデオがYouTube上で楽しめます。ニュージーランドがロケ地で、監督もニュージーランド出身の映画『ホビット 思いがけない冒険』とタイアップした機内安全ビデオでは、映画の登場人物がそのまま出演しています。

 エルフの姿をした客室乗務員が機内の安全について説明したり、パイプを吸う魔法使いのガンダルフは喫煙禁止のシーンで登場したりしています。また、ピーター・ジャクソン監督もビデオに乗客の役で、いわゆるカメオ出演しています。そのクオリティは、実際の映画の予告を見ているかと思うくらいです。

 そして、目が釘付けになるのが、『全裸監督』もびっくりの『全裸乗務員』の機内安全ビデオです。こちらもニュージーランド航空。タイトルが「Bare Essentials of Safety」(必要最小限の安全)。なんと、パイロットと客室乗務員が裸にボディーペイントという姿で出演しています。是非、ご自身の目でチェックしてみてください。

 さらに、ニュージーランド航空では、いきなりフィットネスのレッスンが始まるものもあります。キュートなタンクトップ&短パンで踊っているのは、フィットネス界の重鎮的存在のリチャード・シモンズ氏。一度観始めると止まらない笑える系ビデオです。

もはや飛行機出てこない映像も

 ミュージカル好きな方にオススメなのは、今はなきヴァージン・アメリカ航空(アラスカ航空と統合)の機内安全ビデオ。さすがミュージカルの聖地アメリカの航空会社、全編ミュージカルで製作されています。36人のダンサーが機内に見立てたセットの中で素敵なパフォーマンスを披露しています。同じグループだったヴァージン・アトランティック航空のビデオは、アニメファンにおススメ。上質なアニメ映画を見ているかのようなクオリティです。

 日本の航空会社にもユニークなものがあります。2021年11月までANA(全日空)で流されていた日本の伝統芸能、歌舞伎をモチーフにした機内安全ビデオは、クールジャパン・マッチングアワード2019でグランプリを受賞しています。それ以降は、日本語の手話だけでなく国際手話も盛り込んだ内容のものに変更されました。


ANAの歌舞伎をモチーフにしたビデオの撮影風景。2018年(恵 知仁撮影)。

 なかには、「実際の飛行機が一切登場しない」という機内安全ビデオも。シンガポール航空は、シンガポールの名所を紹介するビデオのなかに、さりげなく、安全設備のハウツーを盛り込んでいます。ボートの客席のシートベルトを締めるシーンで、シートベルトの締め方を紹介したり、公園のベンチで“衝撃に備える姿勢”のデモンストレーションを行ったり――。こちらも優雅な映像として話題です。

 他にも多くのユニークな機内安全ビデオがYouTube上で公開されています。是非、世界各国の航空会社の飛行機に乗った気分でお楽しみください。