そっくりだけど違う! 引退するキハ281系と“まさか”の復活キハ283系 北海道の2大特急車両
札幌〜函館間の特急「北斗」で使用されていたキハ281系が間もなく定期運行を終了します。その一方で、すでに引退したキハ283系が、来春から特急「オホーツク」「大雪」で復活を遂げます。よく似た両形式にはどんな違いがあるのでしょうか。
「スーパー北斗」でデビューしたキハ281系
札幌〜函館間の特急「北斗」で使用されているキハ281系が、2022年9月に定期運行を終了します。キハ281系は同区間のスピードアップを目指してつくられた特急形気動車(ディーゼルカー)で、1990年代からJR北海道の“顔”ともいえる車両のひとつでした。
キハ281系はJR北海道で始めて「振子式」と呼ばれる技術を採用し、カーブを通過する際に発生する遠心力で車体を傾ける機構を備えています。これにより、カーブでも乗り心地を損なわずに高速で通過できるのです。また、各車両にエンジンを2台搭載することで登坂性能をアップさせ、気動車ながら最高速度も130km/h(現在は120km/h)に向上させています。
キハ281系気動車(上)とキハ283系気動車(画像:写真AC)。
1992(平成4)年に試作車がつくられ、北海道の極寒の気候でのテスト走行が行われた後、1994(平成6)年から量産、同年3月に「スーパー北斗」として営業運転を開始しています。「スーパー北斗」の登場により、最速でも約3時間半かかった札幌〜函館間の移動は30分程度短縮され、3時間を切る列車も登場しました。ただ、2013(平成25)年に最高速度を120km/hに引き下げたため、札幌〜函館間の所要時間は最速3時間半程度に延びています。
これまでキハ281系は、ほぼ札幌〜函館間の特急に専念する形で運用されてきました。同区間の特急はキハ281系を使用した列車を含めて「スーパー北斗」に統一されていましたが、2020年には列車名を「北斗」に改称。なお、後継車両の登場もあり、製造は30両弱にとどまります。
「スーパーおおぞら」でデビューしたキハ283系
その後継車両が、キハ281系とよく似たキハ283系気動車です。こちらは2022年の3月に引退したばかり。形式名もよく似た両者、どのような違いがあるのでしょうか。
キハ283系は札幌〜釧路間のスピードアップを目指して開発された特急形気動車です。キハ281系と比べ振子式の改良が図られており、車体を傾ける角度が6度に拡大したほか(キハ281系は5度)、カーブに応じて車軸を曲げる操舵機能を台車に備え、線路への負担が軽減されています。
2023年春に営業運転に「復帰」する予定のキハ283系(柴田東吾撮影)。
キハ283系は1995(平成7)年に試作車がつくられ翌年から量産化され、1997(平成9)年から「スーパーおおぞら」として営業運転を開始しています。
「スーパーおおぞら」の登場により、札幌〜釧路間は最速3時間40分で結ばれ、従来よりも45分短縮されました。キハ283系は後に「スーパー北斗」や札幌〜帯広間の「スーパーとかち」(現在の「とかち」)でも使用されましたが、2013(平成25)年以降は「スーパーおおぞら」のみに使用されています。この際、最高速度は130km/hから110km/hに改めたほか、2020年には列車名を「おおぞら」に改称しています。
先述の通り3月には「おおぞら」から退き、定期運行を終了していましたが、翌2023年春から特急「オホーツク」「大雪」として復活し、札幌・旭川〜網走間の特急として使用されることが決定しています。
同じ振子式特急としてつくられ、外観もよく似たキハ281系と283系ですが、性能以外にも、実は様々な違いが存在します。
内装にも細かな違いが!
分かりやすい違いは前面のライトで、前面に付く扉(貫通扉)の両脇に前照灯や尾灯を備えているのがキハ283系です。また、前面には列車名を表示する愛称表示器を備えていますが、キハ283系ではLEDによる電光表示となり、「おおぞら」で使用する際は釧路湿原の丹頂鶴をイメージしたイラストが表示されます。
キハ281系(キハ280-101)の普通車自由席の車内(柴田東吾撮影)。
側面にも違いがあります。キハ281系は出入口付近の窓横に青とライトグリーンのカラーリングを添えていますが、キハ283系では丹頂鶴をイメージした赤も添えています。
また内装も異なり、キハ283系は荷棚に覆いが付いています。さらに、「おおぞら」で使用するキハ283系では、丹頂鶴の柄が入った灰色の座席も特徴です。ただし「スーパー北斗」で使用された車両では座席の色が異なっていました。かつては普通車の指定席と自由席で同じ座席が使用されていましたが、キハ281系とともに指定席のグレードアップが行われた際、座席が交換されたのです。
両形式とも、かつては先頭車の貫通扉のところまで乗客が入れました。立った状態で貫通扉の窓越しに前面展望もできましたが、のちに貫通扉への通路が封鎖されています。
先頭車の側面にロゴマークがある点は、両形式共通です。登場時、キハ281系は「HEAT281」、キハ283系は「FURICO283」というマークでしたが、のちにキハ281系は「FURICO281」に改められています。キハ281系は2022年9月に定期運行を終了しますが、引退に際してはキハ281-901車両に、「HEAT281」のマークが復刻されるということです。
※誤字を修正しました(9月6日10時)。