不動産投資のシミュレーションとは?

不動産投資におけるシミュレーションは、その投資に対する収益性(収入としての見返り)がどれくらいあるのかを確認するために必要なステップです。例えば、投資用の一棟賃貸マンションを購入した場合、年間家賃収入から賃貸運営に経費としてかかる年間支出を差し引いたときに、いくらのキャッシュ(現金)が残るのか。こうした投資物件の収益性やキャッシュフローは、シミュレーションを行うことでざっくりと把握することができるのです。

もちろん、投資対象物件によってそれぞれ家賃相場や土地価格といった現況が異なるため、必ずしもシミュレーション通りになるとは限りません。それでも、収益物件ごとにシミュレーションを行うようにしておけば、利回りや物件価格の相場観が投資対象の指標としてつかめるようになり、収益の予測もしやすくなってきます。

また、こうしたシミュレーションは、個人の不動産投資家だけが行っているわけではありません。投資用マンションの開発を行っているデベロッパーや不動産仲介会社、建築会社等も必ず事前にシミュレーション行い、物件の収益性やそれに付随するリスクをしっかりと調査したうえで投資を行っています。

不動産投資のシミュレーションに必要な項目

不動産投資の前に行うシミュレーションとしては、まず以下のような項目の確認が必要です。

・利回り

利回りには、「表面利回り」と「実質利回り」の2つがあります。利回りの具体的な内容については後述しますが、不動産投資を行っている個人投資家や不動産会社がはじめに注目するのは「表面利回り」です。投資対象の物件が「新築」か「中古」か、によって指標となる利回りは異なります。

・年間家賃収入

家賃収入は、賃貸マンションに投資をしていくうえで、最も重要なポイントです。投資対象の賃貸マンションは、1年間あたりいくらの収入があるのか、さらに空室は何室あるのか、といった点をチェック。基本的に、収益物件の家賃収入は、レントロール(賃料等一覧表)を見ることで確認できます。また、レントロール自体は、物件の仲介を行っている不動産会社から入手可能です。もし気になる物件があったときは、まず不動産会社に問い合わせてレントロールをもらうことをおすすめします。

・物件価格

物件価格は、利回りを計算するために必要ですが、自己資金や不動産投資ローンを含んだ投資予算を把握するためにもチェックしておきたい部分です。せっかく良い収益物件を見つけても、投資予算オーバーで買えなければ意味がありません。そのため、「自分の投資対象となる物件価格はいくらまでなのか」というのを、シミュレーションの段階で確認しておくとよいです。

不動産投資の利回りをシミュレーションしよう

物件価格や初期にかかる費用(登記費用や保険料など)、想定賃料および空室率、ローン返済額などを記入すると、表面利回りと実質利回りが計算できるようになっています。

サンプルのシートも準備されていて、物件価格2,300万円と物件取得にかかった費用、ローン金利が1.5%、家賃収入105万円ほどで、表面利回りが4.58%、実質利回りが3.92%となっています。

投資物件の購入後にも使える

利回りの計算はもちろんのこと、入力する項目を増やすことによって購入後のデータ管理にも活用できます。例えば、滞納情報を入力すれば滞納者とその期間が明確になります。滞納家賃回収に向けた対策を練りやすくなるでしょう。

また、部屋の入退去情報を付けておくと、どの部屋の入退去が多いのか、どの部屋が空室になりやすいのかを把握することもできます。

複数物件を所有する場合には、1件目から収支管理をすることで、2件目以降のシミュレーションにも多いに役立ちます。

収支シミュレーションが大事な理由

不動産投資は、予測が立てやすい投資だと言われています。それは想定されるリスクがあらかじめ把握しやすい傾向にあるからです。そのため、安定した不動産投資を行うには、リスクを加味してどのくらいのランニングコストが発生するか、そして返済計画に問題はないのかを把握・管理することが重要です。

不動産投資のコストを可視化してリスクを把握

不動産投資においてリスクになりうる変動要素として、例えば、家賃・管理費・修繕積立金というものは、市場環境や建物の管理状況に応じて、変動します。数値の変動に伴い、利回り自体も変わるので、定量的な分析には不可欠となります。

また、入居者の有無により、収益は大きく左右されますので、全体の稼働率、空室期間、その際の募集条件などについても記録を残しておくことが不動産投資の成功には非常に重要な要素となります。

不動産投資をより複雑に感じさせるのは、入出金の経路が多数に分散するためです。管理会社からの家賃送金、銀行からの融資金引落、建物管理会社への管理費・修繕積立金の支払、自治体からの税金の徴収といったものを1つのシートで確認できるように努めましょう。

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修繕積立金に注意

修繕積立金は、長期的に積立をして対応しなければならないものの、物件選定時には念頭から外れてしまいがちです。

多くのマンションでは、将来的には修繕積立金は値上がりすると言われています。大きな費用が発生するリスクがあることも考慮しておきましょう。

不動産投資の利回りとは

不動産投資における利回りとは、物件への投資額に対する1年間の家賃収入の割合のことを指します。一般的な金融商品における利回りは、投資金額に対する利子を含めた年間収益の割合を意味しますので、両者は同じように捉えられるようにもみえますが、異なります。

そして不動産投資における「利回り」には以下2つの意味があり、まずはそれらを理解する必要があります。

表面利回り 実質利回り

それぞれの違いを見ていきましょう。

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不動産投資の利回り1.表面利回り

表面利回りは簡便に利回りを計算できる方法として重宝します。グロス利回りとも言われます。不動産会社が情報として販売図面(マイソク)に出している利回りも、一般的には表面利回りとなります。

表面利回りの計算方法

想定する年間家賃収入 ÷ 不動産購入価格 × 100 = 表面利回り

たとえば、不動産購入価格が2,000万円の物件に対して、毎月の家賃が10万円、年間の家賃収入が120万円なら、

120万円 ÷ 2,000万円 × 100 = 6.00%

となります。とてもシンプルです。

不動産投資は、購入してからも修繕費や管理費などの複数の支出が発生します。入居者が退去した場合には一時的に空室期間も発生します。上記利回りは、年間を通して満室を想定した家賃収入で算出しますので、想定利回りと言われることもあります。

本来利回りを算出する場合は、さまざまな費用を組み込んだ利回り、つまり実質利回りを使うべきです。しかし、実質利回りは不確定な要素が含まれているので、算出に時間がかかります。

不動産を検討する際には、多くの物件から物件を探し出す必要があるため、物件の状態を簡便に判断できる表面利回りを使って、物件比較の指標の一つとして用います。

不動産投資の利回り2.実質利回り

実質利回りは、細かい収益性を把握したいときに使う指標です。ネット利回りとも言われます。

前出の表面利回りは、税金、管理組合費、修繕積立金などの運用にかかる諸々の費用を組み込んでいないため、最終的な収益性が確認できません。この費用を組み込んだのが実質利回りです。

実質利回りのほうが、表面利回りよりもさまざまな経費を組み込んで計算するため、実情に合った利回りが算出できます。しかしこの実質利回りでも実は不十分です。なぜなら空室のリスクが考慮されていません。年間を通して「満室だった想定」での利回りということを認識しておく必要があります。

実質利回りの計算方法

(年間家賃収入 - 年間経費)÷(不動産購入価格 + 購入時諸経費)× 100 = 実質利回り

年間の家賃収入は120万円ですが、管理費や修繕積立金など毎月かかる経費が年間で20万円だったとします。

家賃収入からその経費をマイナスします。

また物件購入価格2,000万円についても、購入時は物件の登記費用やローンの手続き手数料など諸々の費用がかかっています。ここでは50万円かかったとして、その50万円をプラスして計算します。

(120万円 - 20万円)÷(2,000万円 + 50万円)× 100 = 4.87%

表面利回りで計算したときよりも、実質利回りで計算したときの方が利回りが低くなりました。

表面利回りでは儲かっているようにみえても、実質利回りでみると利益がでていない可能性もあります。そして本来であれば、空室発生までシミュレーションしたいものです。

物件購入時は、実質利回りをシミュレーションしてみてから売買契約するべきでしょう。

後述しますが、空室リスクやローンの返済額なども含めてシミュレーションできる利回り計算テンプレート(Excel)をご用意しました。ぜひご活用ください。

不動産投資で目指したい利回りの目安

東京の区分中古マンションの表面利回り

不動産投資、特にサラリーマンや初心者に向いているのは、「堅実な利回りの物件」です。このような物件は、東京都内の好立地にある中古の区分マンションに多く見られます。

中古物件は新築に比べて、家賃が中長期で安定しており、かつ、物件価格は新築より安価なため、利回りが新築より高くなります。また、好立地なら入居ニーズが高いため、空室リスクも抑えられます。人口が増加している都心エリアでは、底堅い賃貸需要があります。

都内の好立地にある物件の購入目安としては、表面利回りで3~4%です 。これくらいの利回りがあり、長期の融資を組むことができれば、実質利回りでも黒字化が可能でしょう。

月々の家賃収入では利益が限られていますが、東京都内の中古物件は売却価格も安定しているため、最終的な「家賃収入+売却の合算」で考えると、トータルのリターンが期待できるでしょう。

ワンルームマンション投資の利回り相場

上記の利回りが高いのか安いのかを判断するために、投資家がどのくらいの利回りを期待しているかの調査データをみてみます。

引用:第46回 不動産投資家調査(PDF)|一般財団法人 日本不動産研究所

日本不動産研究所が2022年4月に行った不動産投資家調査によると、 ワンルームマンション投資の期待利回りは、東京の城南エリア4.0%です。横浜は4.5%大阪4.5%となっています。

利回りが突出して高い物件は、地方に多い傾向があります。

東京、横浜、大阪に比べて、地方都市は札幌5.3%仙台5.3%広島は5.5%と高い割合であることがわかります。

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不動産投資を利回りだけで判断するのは危険

利回りが高いほど投資の回収スピードが速まるからと、「利回りが高い物件」を探したくなるかもしれません。

ただし、利回りだけで投資する物件を判断することは危険です。利回りが高い物件が投資に適しているかというと、そうとも言い切れません。

利回りが高い投資物件

例えば、一般的に、地方の物件は都市の物件よりも安い傾向です。家賃はだいたい同じだとすると、利回りは地方の物件の方が高くなります。

しかし入居率を考えた時、地方の物件にリスクがないか、数十年間、入居者が絶えない周辺環境かどうかを見極める必要があります。

賃貸需要が低い物件は、リスクに見合う売出し価格を設定しないと購入希望者が現れません。つまり物件価格が割安なので、利回りが高くなるのです。

人口が流出しているエリアでは、数百万円どころか、時には数十万円の物件も存在します。 こうした格安物件を購入して、10%台、20%台といった脅威の高利回りを実現している「大家」力の高い不動産投資家も中にはいます 。しかしこのような掘り出し物件をみつけるのは、初心者にはハードルが高いです。

高利回り投資物件のリスク

利回りがよくてもキャッシュフローが安定したものでないと結果的に損をする可能性もあります。検討している物件のエリアの賃貸需要を把握し、入居率や家賃下落リスクをきちんと理解した上で、投資の判断をすることが重要です。

また、家賃設定を高めにすることでも、利回りは高くなります。ただ気をつけなければならないのは、家賃が高くて空室期間が増えると収入が減り、空室対策として家賃を下げると結果としてさらに収入が下がっていくという現象が起こります。

最初に家賃を高めに想定して、実際の入居率とかけ離れてしまうと、後になって想定していた利回りを大幅に下回ってしまうリスクがあります。

不動産投資はシミュレーションが不可欠

数多くの物件から良い物件を見つけ出すためには、感覚ではなくしっかりとしたシミュレーションが不可欠です。しかし、どれだけシミュレーションをしても、実際の投資はそう簡単ではなく、 利回りはあくまでも目安にすぎません。現時点では利回りが高い物件でも、空室や家賃下落が発生すれば一転、利回りは低下してしまいます 。

少しでもその確率を下げるためにも、周辺の賃貸マーケットの動向を把握した上で、リスク回避することが必要です。 空室リスクの低い物件や、家賃の下がる可能性が低い賃貸需要の高いエリアへの投資、又は、新築プレミアムから一定の範囲で家賃が下がった中古物件の購入などを検討しましょう。

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利回り&ローン返済シミュレーションのExcel(エクセル)テンプレート

不動産投資の利回りの計算は、下記のリンクからファイルをダウンロードしてシミュレーションすることが可能です。無料ですのでぜひ使ってみてください。

RENOSYの不動産投資利回りシミュレーション(Excel)

ローン返済シミュレーションもあります。2つの返済方法をご用意しました。ぜひご活用ください。

RENOSYのローン返済シミュレーション(元利均等返済、元金均等返済)(Excel)

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