アニメの世界のハナシが今後現実に?

自律飛行で全電動

「ウーバー(海外で主流となっている配車サービス)と同価格帯、『1マイル(約1.6km)を3ドル(約393円)』で乗ることができる。これが究極の理想です」――ボーイングらの合弁によって設立されたアメリカのスタートアップ企業、Wiskが開発を進めている次世代エアモビリティ「空飛ぶクルマ」について、ボーイングのバイス・プレジデント兼チーフ・エンジニア(サステナビリティ&フューチャーモビリティ担当)を務めるブライアン ユトゥコ博士はこのように紹介しました。


Wiskが開発を進めている次世代エアモビリティ(画像:Wisk)。

 Wiskが手掛ける「空飛ぶクルマ」は、ヘリコプターのように離陸して、飛行機のように水平に飛行するスタイルを採用。このことで、滑走路を必要とせず運用を可能にするといいます。また全電動とすることで二酸化炭素を排出せず、パイロットを要さない「自律型飛行」とすることにより、パイロットエラーの可能性を排除し、安全性を高めるとのことです。

 Wiskの「空飛ぶクルマ」は、既存の航空機よりも運用コストを大幅に下げることができるとブライアン博士は話します。自律型飛行による人件費削減などに加え、そのポイントとなるのはメンテナンス費。「通常のヘリコプターであれば1000以上ある可動部品が、Wisk機は12しかないので、保守の部分が劇的に安くなる」とのこと。同氏はこの「空飛ぶクルマ」について、「経済的に豊かな人だけのためではなく、誰でも使えるというのがミッションだ」と話します。

Wisk「空飛ぶクルマ」実用化へのカギとは

 これまでWiskでは5タイプの「空飛ぶクルマ」を開発してきました。これらについで2022年秋には、6タイプ目の機体を発表する予定です。この「第6世代機」で同社は、航空機の実用化における重要な認証「型式証明」を取得し、この機で商用化へ動く予定としています。

 型式証明は、FAA(アメリカ連邦航空局)など当局側が、その機体のモデルそれ自体の性能・安全性を保証する制度で、これにより1機ごとの検査項目を大幅に省略できるというもの。その一方で、型式証明を取得するための検査項目は多岐にわたり、新型機を実用化させるうえでの最大の壁の一つともされています。

「Wisk、そしてパートナーシップを組む(旅客機での型式証明取得をはじめとする、このプロセスに関する知見が豊富な)ボーイングによるコンビネーションによって、この機の型式証明が取得できると考えています」ブライアン博士は、次のように話します。


ボーイングのブライアン ユトゥコ博士(乗りものニュース編集部撮影)。

 実用化の時期については「型式証明がどうなるか次第だが、2020年代をめざす」とのこと。当初はインフラや航空機運用経験などが整備されている空港を起点に街を移動する用途で用いるところからはじめ、その後は都市間移動、街中の移動などにすそ野を広げていく予定とのこと。ブライアン博士は、「最終的に自動車と同じように使える日がくれば」とコメントしています。

 ちなみに日本市場への参入について同氏は「チャンスを見つけて関心を持っていく」と話します。