エンジンで曲がるのを感じるお尻

峠道で右に左にとカーブが連続するワインディングロード。曲がってることそのものが怖い時間を経て、ふとカーブに安心と不安の違いがるのを気づくのが、上り勾配のコーナーと下りのコーナー。
なぜか上り勾配のほうが安心できるのは、曲がりながらスロットルを開けているからだ。上っているので加速して速度が出てしまい曲がりきれなくなる心配もない。
このエンジンの駆動力で後輪が路面を蹴る状態を、慣れたライダーはトラクションと呼んでバイクに乗る楽しさでかなり上位にランクしているはず。
実はバイクのリヤまわりは、チェーン駆動でもシャフト駆動でも、駆動力が働くと後輪を路面に押し付ける仕組みに設計されているのだ。
その感じを掴むには、エンジンをアイドリングのままクラッチを切ってローギヤへ入れ、フロントブレーキを握ったままクラッチを徐々に放してみると、半クラッチがはじまるあたりから僅かにシートを持ち上げようとする動きがわかる。
これがトラクションが働いたときの反応で、これを感じられるのがシートに座ったお尻ということになる。加速をすると加速Gでシートへ体重がのめり込むように感じていたかも知れないが、これからは後輪が路面を蹴るレスポンスをお尻で感じられるよう、まずはカーブではなく真っ直ぐな道で試しながら慣れておこう。

次はタイヤを潰す感じをスロットルでつくる

この加速することで後輪を路面に押し付ける安心感と、曲がっていく旋回方向を確実に強める安定性は、スロットルの開け方(捻り方)とエンジンのどの回転域を使うかで効果がまるで違ってくるのだ。
ご存じのように、エンジンは高い回転域ほどパワーが出て、鋭いダッシュや速い最高速度に達することができる。
しかし内燃機関であるエンジンの面白いところは、低い回転域からピークパワーを発生する高回転域までの半分くらいまでに、トルクという粘るチカラが最大になる領域が存在するのだ。
これは人間の足にたとえると、俊足で駆ける脚力と、階段を上っていく踏ん張るチカラとの違いのようなもの。
この踏ん張るほうのトルクで、路面を駆るのに効果的なのが、3,000rpmあたりから5,000rpmくらいまでの回転域。
ただ徐々に捻っていく丁寧な開け方だと、このチカラは呼びだせない。低い回転域でジワッと大きめに素早く捻るのがコツ。もちろんいきなりダッシュしないか警戒心もあるだろうから、前後に交通がない場所で真っ直ぐな道で確かめておこう。
何度か試すうちに、後輪を路面へ押し付ける感じ、つまりタイヤが潰れる感触が、どんな捻り方だと強まるかが掴めるようになる。

カーブで長く安全に路面を駆るには

上り勾配のカーブで得た安心感とちょっぴり醍醐味を感じられる楽しさを、平坦なカーブで得ようとすると加速の区間が長ければ当然スピードも上昇してしまい、曲がりきれないとか後輪がスリップするかも知れないリスクが高い状況を生んでしまう。
これをクリアするのが、曲がりながらシフトアップして、いきなり加速はせずに路面を蹴るチカラが強い回転域を繋いでいく乗り方。
いやいや、車体が傾いたままスロットルを戻してクラッチを切り、ギヤをシフトアップしてまたクラッチを繋ぐという操作は、そのショックでグラついて危険なだけ、そう思われるかも知れない。
しかしイラストにあるようなクラッチも触る程度にしか切らず、スロットルも戻すというよりピクッと手首のスナッチをきかせるだけの僅かな動きで済ませれば、ほとんどショックのない、後輪が路面を蹴る駆動力を途切らずに、効果的なトラクションの区間を繋いで曲がれるのだ。
これミッションのギヤもクラッチにとっても、通常のギヤチェンジより負荷が少なくスムーズな動作であることも知っておきたい。
これもまずは真っ直ぐな道で繰り返し練習して、ショックのない連続的な加速を身体で覚えてしまえば、それほど難しいことではないのがわかるはず。
因みにスーパースポーツには、この操作をスロットルは開けたまま、シフトペダルを操作するだけで可能なパワーシフトやクイックシフトと呼ぶ機能が装備されるようになってきた。
あたらしくバイクを買うなら、これもチェック項目に入れておくのもお忘れなく。

RIDE HI(オリジナルサイト)で読む