首都圏の新線・新駅開発はすでに一段落した感がありますが、確実に変化が続いている地域があります。それが相模鉄道株式会社(以下相鉄)、東急電鉄株式会社(以下東急電鉄)が相互直通運転を行う相鉄・東急直通線。注目は、既存駅の近くに新駅ができる東急東横線綱島駅界隈です。

綱島街道沿いの新駅建設現場(筆者撮影)

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新線・新駅で神奈川東部エリアが便利に

新線・新駅開発には時間がかかります。現在、ようやく完成が見えてきた相鉄・東急直通線の計画がスタートしたのは20年以上前の2000年1月。運輸政策審議会答申第18号で、神奈川東部方面線の整備についての答申がなされたのです。

この計画は2つの直通線を造って、相鉄線が走る神奈川県の東部エリアを都心に直結させると同時に東海道新幹線へのアクセスを向上させ、地域の鉄道ネットワーク機能を充実させようというもの。何度か、工事の遅延はありながらも、ようやく2023年3月に完成する予定です。

この2つの直通線について簡単に説明しておきましょう。

新たに開通する路線と都心各駅との位置関係を示す路線図。相鉄・JR直通線はすでに開業しており、相鉄・東急直通線は2023年3月に開業予定(都市鉄道利便増進事業 神奈川東部方面線 相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線より)

ひとつは2019年11月30日に開業した相鉄・JR直通線で、これは相鉄本線西谷駅からJR東海道貨物線横浜羽沢駅付近間の約2.7キロメートルを繋ぐもの。これによって海老名駅からは直通で、湘南台駅からは二俣川駅で1回乗り換えるだけで新宿方面へ行けるようになりました。羽沢横浜国大駅も新設されています。最近、新宿駅で相鉄線の濃いブルーの列車を見かけるのはそのためです。

もうひとつが現在最終的な工事が進められている相鉄・東急直通線で、相鉄・JR直通線で新設された羽沢横浜国大駅から東急東横線日吉駅を繋ぐ約10.0キロメートルを繋ぐもの。この区間で新設される駅は新横浜、新綱島、日吉で、そのうち、新横浜、日吉は既存駅を工事して新駅を作っています。

所要時間短縮に新幹線利用も便利に
相鉄・東急直通線が開業すると、すでに新宿方面に直通となった相鉄線が新たに渋谷方面、目黒方面に直通することになり、神奈川東部エリアは一気に便利になります。

新線・新駅開発に携わる鉄道・運輸機構、相鉄、東急電鉄が作成しているホームページによると、完成後にはさまざまな効果が期待されます。相鉄線二俣川駅からJR新宿駅へは15分ほど所要時間が短縮され、同様に東急目黒線目黒駅へは16分ほどの短縮に。乗り換えも少なくなり、相鉄線・JR横浜駅の混雑が緩和されそうです。

相鉄線二俣川駅から新宿駅、目黒駅への所要時間が10数分短縮され、横浜駅での乗り換えも不要に(都市鉄道利便増進事業 神奈川東部方面線 相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線より)

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新横浜駅付近に新駅ができることから、東海道新幹線へのアクセスも向上します。相鉄線経由で大和駅からなら約23分、東急東横線渋谷駅からなら約11分程度新横浜駅への所要時間が短縮され、JR・東急東横線横浜駅、菊名駅での乗り換えも不要に。荷物を持って出かける時に乗り換えがなくなるのは助かります。

新幹線へのアクセスは神奈川方面からも、都心方面からも所要時間が短縮され、乗り換えも不要になります(都市鉄道利便増進事業 神奈川東部方面線 相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線より)

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鉄道でも車利用でも便利な街・綱島

このように神奈川県の東部エリアの利便性を大きく向上させる新線ですが、4つの新駅エリアのうちで期待が集まっているのが東急東横線綱島駅の近くに新綱島駅ができる綱島エリアです。

新線の新横浜、日吉は既存駅と同じ駅とみなしても良いほどの場所にあり、相鉄・JR直通線の羽沢横浜国大駅はまだ周囲にほとんど何もない状態のため、今後変化はあるとしてもそれまでにはかなり時間がかかりそう。そのため、新駅開業をきっかけにさまざまな開発が行われている新綱島駅周辺には大きな期待が寄せられているのです。

近隣住民の声でも東急東横線の利便性を挙げる人が多数。渋谷のみならず、東京メトロ副都心線との乗り入れで池袋や新宿などへのアクセスも向上、利用しやすくなったと評価されています(筆者撮影)

東急東横線の急行停車駅綱島(横浜市港北区)は、急行で渋谷からは約20分、横浜へも10分ほど。都心、横浜方面のどちらにも便利な場所に立地しています。東急東横線の特急停車駅で知名度としては全国区と言っても良いほど有名な自由が丘駅よりも乗降客数の多い、活気のある街です。

交通では綱島街道が東横線に平行して走っており、第三京浜の都築インターチェンジ、港北インターチェンジ、東名高速道路の横浜青葉インターチェンジ、横浜環状北線の馬場ランプなども近いため、車の移動にも便利。その地の利を生かして横浜、新横浜や川崎、鶴見、日吉など多方面へのバス路線も出ています。

明治期は桃の産地、昭和期は温泉街だった綱島

東急東横線綱島駅は、開業時は綱島温泉駅でした(筆者撮影)

すでに利便性は高く、新駅誕生で今後さらに便利になる綱島エリアですが、面白いことにかつては東京の奥座敷として知られた温泉街でした。大正初期に温泉(実際には鉱泉)が発見され、戦前、戦後は大変にぎわったのです。

駅西口前の通り。右の掲示板に綱島温泉町と古い町名が残されています(筆者撮影)

ところが、高度経済成長期に新幹線や東名高速など、より遠くへ早く行ける交通網が整備され、観光客は綱島を通り越して、伊豆や箱根などへ足を延ばすようになります。それでも東急東横線に平行して走る綱島街道沿いには日帰り温泉施設がありましたが、新駅の予定地に立地していたことから2015年に閉鎖。現在は塀の奥で新駅建設の工事が進められています。

街角にある花壇に綱島の歴史が記載されていました(筆者撮影)

また、温泉発見以前、明治期の綱島は桃の名産地で、「西の岡山、東の神奈川」と称された時代もあったのだとか。現在でもその歴史を伝えるために街角の花壇などに桃のイラストを見ることができます。また、3月には綱島桃まつりなるイベントも開催されています。(コロナ禍につき最終開催は2019年)

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商店街充実、自然も豊富な綱島の問題点は?

綱島駅周辺には7つの商店会、約400店舗が集まり、買い物、外食に便利な街となっています(綱島MALLNET 綱島商店街より)
西口の商業エリアの中心部。スーパーのほか、創業から数十年以上の古い店舗もあります(筆者撮影)

住宅地としての綱島を語る上で欠かせないのは、駅周辺に7つの商店会、約400店舗が集積、交通の利便性に加え、買い物の利便性も高いという点です。中心になっているのは駅の西口側で、スーパーを中心に広場もあり、歩道も整備されています。ところどころには彫刻が飾られてもいます。

街頭にはいくつもの彫刻が。子どもが楽しそうに眺めていたのが印象的でした(筆者撮影)

このエリアは、元々は旅館街。それが開発されて現在の姿になりました。開発にあたっては地元の人々が1976年に街づくり憲章を作り、それに従って統一感のある街区がつくられてきました。そのため、実に整然とした歩きやすい街になっているのです。

天気の良い週末、川べりは大にぎわい。買い物に行く人、散歩する人、走る人、自転車に乗る人、デイキャンプをする人とそれぞれに楽しそうでした(筆者撮影)

自然のある環境も欠かせないポイント。綱島エリアは駅の南側に鶴見川が流れていて、西口側の河川敷は広くなっており、デイキャンプや日なたぼっこを楽しむ人が多い一画。天気の良い日には多くの家族がテントを持ち出し、音楽や読書を楽しんだり、川辺を散策したり。また、駅の北側には花見の名所・綱島公園など緑に満ちた公園もあり、都心にも近い立地でありながら、のんびりした雰囲気もある街なのです。

バス路線は複数あって便利な一方、バス停周辺が狭く、交通整理の人がいないと危険を感じるほどです(筆者撮影)

一方で、綱島にも長らく問題とされてきた点があります。それが綱島駅周辺の道路の細さ。駅東口側には高架下にバス乗り場が設けられているのですが、非常に狭く、バスと車の往来があると歩いている人が危険を感じることがあるほど。駐輪場なども不足しているようです。

いつも渋滞していると言われる綱島街道ですが、4車線化などが進めば、スムーズに流れるようになってくるはずです(筆者撮影)

また、東急東横線と並行して走る綱島街道も渋滞が常態となっており、長年、改善が模索されてきました。こうした問題を新駅開業で駅周辺が変わるのを機に一気に解決しようというのが、現在行われている新綱島駅周辺地区土地区画整理事業、新綱島駅前地区市街地再開発事業です。

道路拡幅に広場の新設など駅前の風景が変わる

新駅周辺で進んでいる土地区画整理事業。左側の道路が綱島街道(かながわの土地区画整理事業)

土地区画整理事業では綱島街道を20メートルに、直行する綱島日吉線を15メートルに拡幅、地区内を南北に走る都市計画道路綱島東線を新設(幅16.75メートル)。合わせて道路沿いに複数の広場を設けることになっており、これまでの窮屈な幹線道路沿いにゆとりが生まれます。また一部のバス停は、新設される綱島東線に移設することになっています。

再開発で生まれる建物は住宅、商業施設、公益施設からなる複合施設に(新綱島駅前地区第一種市街地再開発事業 横浜市パンフレット)
綱島街道の東側が新駅、再開発エリアになります。西側も現在再開発が検討中で、いずれは変化していくことでしょう(筆者撮影)

再開発事業では新綱島駅に直結する高層棟、低層棟の建物が建設されています。高層棟は住宅、低層棟の1~3階、高層棟の一部は商業施設になります。また、低層棟の4階~5階に港北区の区民文化センターが入り、400席程度のホールやギャラリー、音楽ルーム、練習室が作られる計画です。住宅は252戸(非分譲住戸73戸含む)という計画で、すでに多くの問い合わせが寄せられているそうです。

綱島駅と新綱島駅周辺で現在進んでいる計画などを現した図(横浜市 綱島駅周辺地区 地区の状況)

また、これに留まらず、綱島駅東口駅前地区市街地再開発事業も検討が始まっており、再開発エリア区域に面した場所以外の綱島街道の拡幅も進行中。狭い駅前が広がり、交通渋滞が解消される日も近づきつつあるというわけです。

近隣住民が評価しているポイントは?
では、近隣住民は綱島のどのような点を評価しているのでしょう。TownU(タウニュー)からいくつか口コミを紹介しましょう。

電車がストップしても、バス等で迂回できる交通網がある。来年には新線も開業し、新横浜まで1駅で繋がり、新幹線の利用がより便利になる。また、徒歩圏内に大型店舗は少ないが、車で10~20分圏内には大型商業施設が複数あり便利。適度に下町チックで、商店会や自治会の活動、お祭りも盛んで、新参者にも割とオープンな雰囲気がある。(56歳男性 2021年時点)

東横線沿いなので、横浜にも東京にも行きやすく交通の便がいいです。駅の近くにファストフードやカフェなど気軽に立ち寄れるご飯屋さんもたくさんあるし、スーパーなどもあるので買い物にも便利です。治安もいいので安心です。(20歳女性 2021年時点)

土地が平坦で徒歩や車での移動が楽なところ。車では第三京浜の入口が近く、綱島街道や中原街道にすぐ出られるので都内や横浜市街への移動が楽に出来るところ。駅前や周辺にドラッグストアやスーパー、100均など生活に必要な店はほぼ揃っており、病院も各診療科ごとに複数あるので生活に困らないところ。都心のターミナル駅(渋谷、新宿、池袋、横浜)に乗換なしで行けるところ。ターミナル駅以外にも、東横線と、隣駅から並走する目黒線を使えば都内のほとんどの場所に少ない乗り換えで行けるところ。最寄り駅の路線の運行本数が多く急行停車駅のため、駅での待ち時間がなく電車に乗れること。職場の最寄り駅まで15分で到着するところ。東急線以外にも横浜市営地下鉄グリーンラインの駅が近くにあり、バスターミナルもあるので複数路線が利用可能なところ。(34歳女性 2021年時点)

一方で道路の幅の狭さ、混雑についてはネガティブな意見もいくつか見られました。

道路の幅が狭く、車の運転が苦手な人は慣れないと厳しいと思う。また、幹線道路が綱島街道のみであるため慢性的に混雑している。(57歳男性 2021年時点)

駅周辺の道路整備が遅れており、平日週末問わず慢性的な渋滞がある。大型商業施設に行く際に駅周辺を通るため、不便である。(56歳男性 2021年時点)

新駅エリアから離れたところでも綱島街道拡幅の計画は着々と進んでいます(筆者撮影)

幸い、この点に関しては2023年以降開発が進展していけば解決していくことはここまで説明した通り。新駅開業に向けては街に活気が増してきたという声もありました。

新駅が出来る予定のため、新しい商業施設や店舗、住居も増え、街に活気が増してきた。また、利便性も向上している。駅近にスーパーや飲食店も多く、綱島公園や鶴見川土手のように緑を感じられるエリアもあるため、生活に便利。(34歳女性 2021年時点)

それ以外では図書館や子どもの遊び場が少ないなどの声も。どんな街にもプラス、マイナスはあります。どこを良いと思うかはその人次第。変わりつつある綱島を訪れてみて考えてみてはどうでしょう。

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