「コオロギ入り機内食」どんな味? ZIPAIRの国内初「衝撃メニュー」実食 昆虫入りの“メリット”とは?
コオロギがタンパク質不足問題の救世主に…どういうこと?
わずか4か月で実用化に…昆虫の利点とは?
JAL(日本航空)グループが展開する国際線LCC(格安航空会社)、ZIPAIRが2022年7月より、機内食の分野で国内初の取り組みを展開します。原料に、国産食用フタホシコオロギを粉末化した「グリラスパウダー」を入れたメニューを提供するというものです。
ZIPAIRが提供を始める「コオロギパウダー入り機内食」(2022年7月、乗りものニュース編集部撮影)。
ZIPAIRではこれまで、たとえば機内食を事前予約制とすることで、客室での食品ロス削減、機体重量軽減による燃料削減による環境負担の削減などを実施。今回のものはそういった同社のSDGsの取り組みを一歩進めたものといいます。
今回提供が始まる、「コオロギパウダー」入りの機内食は社員発案のアイデアをもとに2022年3月から本格的に計画をスタートしたのち、わずか4か月で新メニューの実装に移行。通常機内食のメニュー開発は半年から1年を要するなか、異例のスピード感といいます。
この「コオロギパウダー」を開発したグリラス社によると、世界的に動物性タンパク質の需要が増加する一方で、それらの動物が食べる餌の供給量は増えていないといいます。そのようななか、昆虫は体重を増やすために必要な食料や、水の使用量が牛など比べて圧倒的に少ない生物なのだとか。とくにコオロギは昆虫の中でも早く育ち、体が大きく、そして雑食性をもつ昆虫であることから、タンパク質不足の解決に適任なのだそうです。
コオロギ、そしてコオロギ入り機内食を実食
グリラス社の「コオロギパウダー」の原料となるコオロギは、食品残渣(人間の食べ残しなど)100%で育てられるようにしているのが特徴です。「食料残渣を食べたコオロギが育ち、それ加工して人間が食べる」というループによって、人間がタンパク質を摂ることによる環境負荷を軽減する効果などが期待されています。また「味よく育てたい」(グリラス社社長)のこだわりもあり、餌によって味が変わりやすいコオロギに与える食物も工夫しているとのことです。
「原料となるコオロギを食べたんですが、豆と干しエビをミックスしたような感じで、ビールのおつまみに合いそうな感じなんです」と話すZIPAIRの西田真吾社長。つられて筆者も食べてみましたが、味はまさに西田社長の話すとおり。実物を見ないと、まず昆虫、ましてやコオロギだとは思えません。
「コオロギパウダー入り機内食」を持つZIPAIR西田社長(2022年7月、乗りものニュース編集部撮影)。
今回、ZIPAIRが提供する「コオロギパウダー入り機内食」は2種類。「トマトチリバーガー」と「ペスカトーレ」です。「トマトチリバーガー」はバンズとパティに、「ペスカトーレ」はソースに「コオロギパウダー」を入れています。量は4〜5g。小さじ一杯とほぼ同程度です。外観上はパウダーを混ぜたことにより、普通のメニューよりも少し灰色がかった色合いをしています。
食べてみると、2品ともに若干、食感にザラつきがあるかなといった感覚。コオロギの味を知ってからメニューを食べても、「ほんのわずかに香る」程度のレベルです。「ペスカトーレ」は魚介風味の増強に「コオロギパウダー」に一役買っているといった感じであるほか、バーガーのバンズなどはパウダーが入っているからか、「全粒粉入りの香り高いおしゃれパン」の様相すら呈しており、人によっては、むしろ通常のバンズより美味しいと感じる人もいるかもしれません。
ZIPAIRでは今回の「コオロギパウダー入り機内食」をはじめ、20種類以上のメニューを提供。「『チキン・オア・ビーフ』ではなく、他社の0.5歩先の取り組みをし、新しい選択肢をもつ、航空会社として認知していただければ」と西田社長は話します。