おときた氏「批判を恐れずに発信を続けて『政治家の楽しさ』も伝えていきたい」 - BLOGOS編集部

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※この記事は2018年02月05日にBLOGOSで公開されたものです

ネット選挙運動が解禁され、政治家がブログやSNSで発信をすることは珍しくなくなった。その一方、ネットでの情報発信にはリスクもあり、頻度を保ちつつ、継続することは難しい。そのため、途中で発信をやめてしまう政治家も少なくない。

そんな中にあって、1年365日、毎日ブログを更新し、「ネット上で情報発信を続ける政治家」として先駆者であり続けているのが、昨年のBLOGOS AWARDで金賞を受賞した都議会議員のおときた駿氏だ。同氏に情報発信の重要性と激動の一年となった2017年について聞いた。(取材・文:永田 正行)

情報発信の重要性を再確認した2017年

―これまでブログで積極的な情報発信を続けてきたおときたさんですが、昨年は苦境に立たされることも多かったのではないでしょうか?

おときた駿氏(以下、おときた):ご存知のように、私は昨年、都民ファーストの会という組織に所属していました。その組織の中で、7月の都議選終了後ぐらいから、かなり厳しい情報統制、言論統制が行われてきました。その結果、ブログに書けることが非常に限定されてしまったのです。

具体的には、原則として党内で議論されていることや、まだ決まっていないこと、あるいは小池都知事の意にそぐわないことは書くなという暗黙のルールが存在し、中には明文化されていたものもありました。

普通の議員なら、そうした状況下であれば、黙っていればよいでしょう。しかし、私のようにブログを書くことを義務としている人間にとっては非常に厳しいことでした。

例えば、「小池都知事が明らかにおかしいな」と思う発言をすると、ネット上では大きな話題になります。そのタイミングで私がそうした話題にまったく触れずに雑談の記事をアップしていたら明らかに不自然に見えてしまう。読者から「逃げているのではないか?」と思われてしまうので、そういった状況下でブログを書き続けるというのは非常に苦しかったですね。

ただ、こうした経験をすることで改めて情報発信の価値に気づくことができたとも思います。

―これまで多選を批判していたにもかかわらず、千代田区長選挙では、当時所属していた「都民ファーストの会」の方針として現職候補の応援に回ることになりました。このように、情報発信を続けることによって、過去の発言との矛盾を突かれてしまうというリスクも実感されたのでは?

おときた:過去との整合性については、発信を長く続ければ続けるほど問われることになると実感しました。実際、千代田区長選挙では、「これまで多選批判をしていたので、何故そこに乗っかるんだ」と厳しいご指摘を受けました。

もちろん過去から主義主張が変わらないというのがベストだとは思います。ただ、転向する場合もあるでしょうし、その時は説明責任を問われることになります。私は、考え方を変えた理由や、その時々の選択の理由についてもブログで書かせていただいたつもりです。「今回はベストではないけどベターということで選択した」という説明をさせて頂きましたが、これもそれまで情報発信をしていなければ、なかったことにしたり、言いっぱなしで終わったかもしれません。そうではなく、しっかりと説明責任を果たしていくことは重要だと思います。

政策実現の過程で様々な壁にぶつかり、軌道修正をせざるを得ないことがあるということは、約5年間の政治家生活の中で痛感しました。であれば、「なぜ変わらざる得なくなったのか」を説明しなくてはなりません。考え方が変わった理由や経緯を有権者が観測できるようになっていれば、政治家に対する不信感も少しは和らぐのではないかと思います。その意味でも、情報発信は続けてきてよかったと考えています。

―ネット上ではよく「謝ったら死ぬ病」などという揶揄がありますが、考え方を変わったことを説明したり、謝罪するというのは政治家としては非常に勇気がいることではないでしょうか。

おときた:謝った瞬間に「ならば議員辞職しろ!」の大合唱になりますからね(苦笑)。先程挙げた多選の例もそうですが、考えを改めたなら改めたことをしっかり説明をして、謝罪が必要であれば謝罪をする。その上で、新しい方向に進んでいくことが必要だと思います。

もちろん有権者が政治家の二枚舌を批判することは健全だと思います。ただ「過去はこういう理由で間違っていた」「変えざるを得ないから変わっていくんです」と変化していくことまで、「二枚舌だ」「議員辞職だ」と批判するのは間違っているのではないでしょうか。

政治の世界は100点満点の解答があるわけではありません。状況が変われば正解が変わってくることもありうる。政治家が変わることを許さない有権者ばかりになってしまうと、間違ったまま突き進む政治家をたくさん輩出してしまうことにもなりかねません。

それは民主主義においては良くないことでしょうし、正しい転向や軌道修正を寛容に認める世論を作っていくべきだと思います。

―築地市場の豊洲移転が遅れたことをめぐっては、議員報酬の一部を返上し、豊洲地区の「風評被害対策」を行う活動や団体に寄付することを明らかにしました。政治家の場合、誤った行動をした際の責任の取り方というのは、非常に難しい問題だと思いますが。

おときた:大前提として、政治家の判断の可否については次の選挙で問われることになるというのが、最も一般的な回答だと思っています。法に触れるようなことをすれば別ですが、例えば、不倫をした政治家に対して、「やめろ」と言う声もありますが、私は不倫したことも含めて、その人の政治家としての質を判断する材料にすれば良いと思います。「不倫をするような人間は政治家にふさわしくない」と思えば、次の選挙で落とすというのが正しい民主主義の在り方でしょう。

なので繰り返しになりますが、何らかの政治的な判断を誤った、不道徳なことをしたという場合、その責任は次の選挙で負うというのが原則だと思います。ただ、これは理想論であって、政治家は理想だけでは出来ません。感情と理性のバランスを取って、有権者に納得感を持っていただく必要がある。

そうした考えに基づいて、私は今回、「議員バッジを外すことは出来ないけれども議員報酬を返上させていただきます」という選択をしたということです。

昨年、国政に出たら「ポジション政治家」になるしかなかった

―昨年の後半に行われた衆議院総選挙では、希望の党の誕生と失速が注目を集めました。失速の原因の一つにおときたさんが、希望の党と同じく小池知事が中心となって立ち上げた都民ファーストの会を離脱し、その内情を明らかにしたことがあると思います。自身の行動が状況を動かしたという実感はありますか?

おときた:少なからず影響はあったのかなと思います。民進党からの合流者に対する、いわゆる「排除発言」が契機になったなどと言われていますが、恐らくそれだけでは、あそこまでの失速は起きなかったと思います。

小池都知事は「言葉が強すぎた。一人歩きをした」とおっしゃっていますが、実態として、考え方の違う議員を排除したり、党内で言論統制をしていたわけです。

我々が都民ファーストの会を離党して、内情を明らかにしたことでその実態が有権者に初めて可視化された。小池知事の発言と我々の告発した実態が、1つになって大きな影響があったのかもしれません。

―その一方で、おときたさんはブログで小池知事の政策を評価することもあります。SNS上などでは、党派性が出やすくなっているので、是々非々のスタンスをとるという立場は、理解されづらいと思います。双方から叩かれる要因にしかならないのではないでしょうか。

おときた:だからこそ私は新しい道を作ろうとチャレンジしているのです。「是々非々」というのは、本来政治において最もあるべき姿ではないでしょうか。

単純に政治家を続けたいのであれば、ポジションを決めて「自民党を支持します」「小池都知事を支持します」とやっていた方が楽ですし、支援者も一定数ついてきます。おそらく選挙でも有利でしょう。

「是々非々」のスタンスを支持するような浮動層には、実際の選挙には行かないという人も多く、その一方で強固な信念を持つ方から「裏切り者が」などといわれる。結局、敵をつくることにしかならないので、「是々非々」というのは、確かに政治戦略としては不合理だと思います。

ただ、その不合理を避け続けてきた結果、しがらみだらけの政治、ポジショントークばかりの政治になってしまい、半数以上の人が選挙に行かない状況になってしまいました。そうした現状を変えたいと思っているからこそ、私は「是々非々」のスタンスを貫こうと考えています。

―昨年は、希望の党から衆院選に出馬するという可能性もありました。政治家である以上、国政への進出は非常に魅力的だったのではないでしょうか?

おときた:私は、将来的には、「国政に行きたい」「総理になりたい」と明言していますから、衆議院選挙への出馬の打診については、本当に魅力的でした。都民ファーストの会の件で小池都知事に不信感があったとしても、「そこに付いていった方がいいんじゃないか」と思わされるほどの強い誘惑があったのは事実です。

しかし、これは先程の話とリンクしてくるのですが、もしこの流れで出馬してしまったら、それこそ「ポジション政治家になる未来しかない」と思ったんです。これまでのように是々非々を貫いて行きたいと思う気持ちを完全に捨てて、小池都知事、希望の党の方針、ポジションにそった情報発信をしていくことになったでしょう。そして、それは果たして自分のなりたい政治家だったのかということを自問自答した時に、「それは全く違うだろう」という答えになったのです。

政治家の職業の楽しさも伝えていきたい

―政治家という職業は批判も多いですし、モチベーションを保つのが難しい部分もあると思います。おときたさんのモチベーションの一番の源泉はどこにあるのでしょうか?

おときた:現状では「他にやる人がいないから」「自分にしかできないから」ということが大きな理由の一つです。このまま、多くの人に「政治家は汚くてウソをつくもの」「政治は閉鎖的なもの」だと思われ続けるのは、非常にもったいないことだと思うので、 そうしたイメージを払拭できるのは、自分しかいないという謎の義務感をもって、やっています。

私たちの世代は、前提として20年後、30年後の日本の状況を悲観的に見ています。いっそ今、破綻してくれた方が、よほど楽かもしれません。ただ30~40年後に破綻してしまったら、私達は息子や孫から「おじいちゃん達こうなること分かっていたでしょ?なんで変えてくれなかったの?」といわれることになる。それだけは絶対に嫌だと思っているんです。

SFのような表現になりますが、70歳の自分が40年前にタイムスリップした時に何をするかを考えると、どんなにきつくても政治から逃げちゃダメだろうと思うんです。バカだ・アホだと言われても立ち向かって、40年後のあるべき未来を変えるために戦う人が絶対いないといけない。そういう気持ちで、何を言われようとも続けています。

―より政治家を目指す人たちのすそ野を広げるためには、どんなことが必要だとお考えですか?

おときた:ありきたりですが、政治を身近にしていくことが重要です。私自身も最近バラエティ番組にも出演したことで、よく叩かれるのですが、そういう部分も含めて政治家を楽しそうにやらなければならない。「政治家になったら芸能人に会えるんだ」「政治家になったらテレビに出られるんだ」といった明るいイメージも一緒に発信していく必要があると考えています。

クソ真面目なことを毎日ブログで発信しても政治家になりたい人は増えないでしょう。たまには美味しいものを食べてもいいし、家族と旅行に行ってもいい。そういうことを、批判を恐れずに発信していって「政治家って楽しいですよ」と伝えていきたいと考えています。

「面白いですよ」「楽しんでやってる」なんていうと、即座に叩かれます。「お前ら税金で食って何楽しんでるの?」と言われたりもします。ただ、そういう意識も含めて、現状を変えるために発信していって「何が悪いんだ」といえるようになりたいですし、新しい政治家のロールモデルを作っていかなければいけないと考えています。

政治家も人間だから旅行にだって行きますし、安倍総理だってゴルフをしただけで批判されるのは可哀想じゃないですか。どんな政治家だってサイボーグじゃないんですから休暇は必要です。私も去年は「新婚旅行にようやく行けました」とプーケットに行った時のことをブログに書きました。それに対して、厳しいご意見も来ますが、そういうことも当たり前にやっていかないと政治家になりたい人は増えないと思います。

―最後に、今年2018年に、特に注力していきたい活動はありますか?

おときた:幸いなことに、おそらく今年は選挙がない1年になるので、政策を実現していく1年にしていきたいと考えています。ただ来年4月には統一地方選挙があります。このタイミングで、政治の世界に新しく出たい、ポジショントークばかりの政治にうんざりしているという方々、新しい政治に挑戦するプラットフォームがないということに問題意識を感じています。

そのため、今年3月に地方からのボトムアップに重点を置いた政治塾を立ち上げようと準備しています。この取り組みを通じて、新しい政治の息吹を作る1年にしていきたいですね。

プロフィール

東京都議会議員(北区選出)。早稲田大学政治経済学部卒業後、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループにて7年間のビジネス経験を経て、議員の道へ。ネットを中心に積極的な情報発信を行う、通称「ブロガー議員」。

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