小泉進次郎氏「日本は世界から取り残される」と危機感露わに - 田野幸伸
※この記事は2017年11月22日にBLOGOSで公開されたものです
11月17日、自民党の小泉進次郎氏が都内で行われた「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2017」に登壇し、経団連や国会の「ムダ」に対して苦言を呈した。講演内容を抜粋してお届けする。経済界がイエスマンでいいのか
小泉:今日は自民党の中で動きがありました。経団連と(経済)同友会と日本商工会議所の3者に自民党本部に来ていただいて。幼児教育の無償化とかに2兆円の政策パッケージを作る中で1.7兆円は消費税を充てるのですが、その足りない3000億円を企業のみなさん出してくれませんか?という総理からのお願いに対し、事実上の決着をみました。経団連は3000億円を受け入れる。そしてその最優先にすべき課題は待機児童対策に充てて欲しいという思いを述べました。経済同友会は3000億円を受け入れると。最優先は保育士さんの待遇改善とかに充ててもらいたい。
日本商工会議所は受け入れるとは言わず、仮に3000億を受け入れるとしたら中小企業に配慮して欲しい。そういう話がありました。
今日ここの会場にいる、従業員のみなさんを抱えていて、労使折半で社会保険の負担をしている事業主の方も含めて、これからそれは負担することになります。
私は今回、幼児教育の無償化に至る過程でどうやったら社会全体で子供を支える、子育てを応援する形ができるかということで去年からずっと「こども保険」の提言などもしてきました。
それは働く方も負担をする。企業側も負担をする。そしてこれから少子化対策含めて、子供を社会全体で支えるためにはみんなで支えようじゃないかということを、どうやったら出来るのかというのを考えてきました。
今回実現したのはこども保険ではありませんが、これから2年後に消費税の増税という形で個人のみなさんが負担をする。そして企業の皆さんが3000億円の負担をする。
いわば広い意味での労使の折半のような、個人と会社が負担をするような形でこれからこの財源が進むという見通しが今日事実上見えてきました。
そのこと自体は私はよかったと思っています。社会全体で子供を支えよう。それを共有できたこと。ただし、みなさんに考えてもらいたいと思ったのは世の中の様々な意思決定のあり方が本当にこのままでいいのかということです。
今回、3000億円を出すことを決めていただいた企業のみなさん。私はそれはそれで1つの決断だとは思いますが、本来「社会全体で子供を支える」という企業の役割として、何%負担をするのか、いくら負担をするのかという議論があったうえで落ち着いたのが3000億円というのが、私は議論の順番としては本来の姿だと思います。
宿題として残ったのは、なんでその声が経済界から上がらないんだろうかと。政治の世界は安倍総理一強で誰も物を言えないじゃないかという声があります。
しかし今の現状を見ていると、一番物が言えないのは経済界じゃないですか。私はそういう現状を今回強く感じて。ソーシャルイノベーションフォーラムですから、この日本の中に様々なイノベーションを生むには政治の顔色を伺っているような経済の在り方だとイノベーションなんて生まれるわけがないと思います。
賃上げをしてくれと言ったら賃上げをする。足りないからお金を出してくれと言ったらお金を出す。そういった現状に甘んじていて、本当に日本にイノベーションは生まれますかね。私は今回の一件で深く考えさせられたのはそのことでした。
政治に正しいプレッシャーを
今日お集まりのみなさん。ソーシャルイノベーターの皆さんに期待をするのは、新しい経済人として日本の経済を変えて下さい。経済界を変えて下さい。おかしいことはおかしいという経済界であって欲しいです。そういう経済界がいるから政治は緊張感を持つんです。中曽根総理時代の経団連の会長であった土光(敏夫)さんはかつて言いました。
「政治に対してはあれやってくれ、これやってくれというのはやめよう。それは卑しい。これだけは邪魔をしないで欲しいということだけを言う経済界であろうじゃないかと」私はその通りだと思う。
かつて財界総理というほど存在感を示し、政治の側もいつもその方をみると背筋が伸びるような。そういった方々が出て来ることこそがソーシャルイノベーションフォーラムの今後に私が期待をすることです。
ぜひみなさん、ここから将来首相官邸に経済人代表として日本の経済を語るリーダーとして出てきてください。意思決定の在り方、変えなきゃいけないことは国会も同じです。
結果が決まっている投票をするのは時間のムダ
経済界にも言う以上、我々政治の側も変わらなければならない。今日総理は所信表明の演説の中で最後にこう言いました。「日本の未来をしっかりと見据えながら今、何を成すべきか。与野党の枠を超えて建設的な政策論議を行い共に前に進んでいこうではありませんか」
明日・明後日の分科会で議論される1つのテーマが既存の枠を超えることです。今日総理が言ったことは与野党の枠を超えること。与野党の枠を超えて何をすべきか。私は国会改革を成し遂げるべきだと思っています。
どういうことか。11月1日、衆議院選挙から初めてとなる特別国会の初日に我々国会議員が国会の衆議院の本会議場でやったことは3つです。
1つ目。内閣総理大臣を選ぶ選挙。首班指名選挙を行うこと。2つ目。議長を選ぶ議長選挙をやる。3つ目。副議長を選ぶ副議長選挙をやる。この3つです。
この3つをやるのに掛けた時間。1時間50分です。内閣総理大臣を決めることは私は一人一人が投票用紙に名前を書いて本会議場をグルッと回って投票してやるという今のやり方。それは私はアリだと思います。
しかし実は議長と副議長というのは事前に慣例で与野党で合意があります。与党第一党から議長は出すこと。だから野党の議員であっても自民党の大島(理森)さんの名前を投票用紙に書いて投票することになっています。
副議長は野党第一党から出すことになっている。だから我々、与党・自民党の議員であっても立憲民主党の赤松(広隆)さんの名前を書いて投票をします。つまり結果は決まっているのです。それなのに3回周るんです。
私はその時、本会議場で自分が3回周りながら考えていたのが、もしもプーチンが1時間50分を与えられたら何をやるかな。もしも習近平が1時間50分あったら何をやるかな。もしもトランプが1時間50分あったら何をやるかな。まあ、トランプはツイッターかもしれませんが(笑)。
いずれにしても私はそこで強い危機感を覚えました。こんな意思決定の場を続けている限り、日本は世界から取り残される。ありえない。そして日本はこれだけ内閣総理大臣という国のトップが国会に張り付けさせられる。そんな議会は他にはありません。
首相を年100日も国会に縛り付けるな
日経新聞がこの前書いてましたけど、日本の首相は年間で100日以上国会に出ます。そしてイギリスは約30日です。ドイツ、フランス約10日です。トランプ大統領、ほぼゼロです。そして今、世界で何が起きているか。今回のトランプ大統領のアジア歴訪から見ても分かる通り、今の時代、次の新しい世界の秩序をどの国がどれだけ自国の利益を追求する形で利益を獲得していくかという、むき出しの権力闘争と世界の中での力による政治が間違いなく色が濃いと思う。
日本の行方を決して誤らないような内閣総理大臣にしか出来ない決断を誤ることなくしてもらうために、日本国民にとって最善の形とは100日以上国会に貼り付けることでしょうか?
総理大臣にしか答えることができないもの。そこはいくらでも答えてもらえばいい。だけどそうではないテーマやそうではない質問に対して、世界がこれだけ激変の中で国会に出ることが説明責任を果たしている。出ること自体が目的化している今の現状を続けていくことが日本の国益になるとはどうしても思えない。
そういった形で世界の中の日本を考えた時に強い危機感を今持っています。そういったことを改めて考えさせてくれたのは、今日のソーシャルイノベーションフォーラムに出席をしている全国、北海道から沖縄まで。少しでもいいから地域の課題を解決していきたい。必死で汗をかいているみなさんとの出会いがあり。
この前の衆議院選挙で北海道から沖縄を周る中で、東京で小池さんは満員電車をゼロにしたいという公約を掲げましたけど。秋田県に行った時、秋田の方から「小泉さん、満員電車を見てみたいぐらいだよ」。
そういう風に言われた言葉を聞いて、やっぱり都会のことだけを考えていては国造りを誤るなと。地方のことだけを見ていてもいけないな。北海道から沖縄までどこに住んでいてもどんな立場であっても決して置き去りにされない。
声が届くと思ってもらえるような国作りをやるのがこれからやらなきゃいけないことだなと思い。そして今これだけ世界が激変している中で考えることはさらに日本のことだけを考えていても、日本の国作りは誤るなと。
渋谷区長から贈られた「スカジャン」
スピーチ後、小泉進次郎氏と共に基調講演をおこなった渋谷区の長谷部健区長から、小泉進次郎氏の地元横須賀ゆかりの「スカジャン」が贈られた。その場でさっそく着替える進次郎氏。まさかの「生着替え」に会場はどよめく。さすがのサービス精神だ。選挙中もスカジャンで活動していた進次郎氏。胸には忠犬ハチ公と「渋」の刺繍が。
背中には大きく「Shibuya」の文字。
スカジャン姿のまま、会場からの質疑応答に答えていた。
ちなみにこのスカジャン、お値段は23,760円(税込)とのことだ。
・”SHIBUYA” リバーシブルスカジャン(MA-1 TYPE) ~2ND Ver.~