日本会議とは″ニッポンのオッサン会議″だ~菅野完氏がメディアの報道に指摘 - BLOGOS編集部

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※この記事は2016年07月20日にBLOGOSで公開されたものです

20日、日本外国特派員協会で、話題を呼んでいる「日本会議の研究」 (扶桑社新書)の著者、菅野完(すがの・たもつ)氏による会見が開かれた。

日本会議をめぐっては、同団体の議員懇談会に安倍内閣の閣僚が多数所属していることから、国内外のメディアで注目を集めている。 同協会では先週、日本会議の田久保忠衛議長による会見が開かれたばかりだ。

菅野氏は、日本外国特派員協会に所属する海外メディア記者や、日本の一部メディアによる日本会議に関する報道について、「政権をあやつる黒幕がいる」「国家神道を復活させたい勢力がいる」「狂信的な集団が政権を支えている」といった印象からくる"誤解"が背景が存在していると指摘。そのような視点からは「とても面白い記事がかけると思うが、それは少し子どもじみた陰謀論。"そんなやつ、おらへんちゅうねん。冷静に事実だけ見ていかなあかんでしょ"」と訴えた。

糾合軸は「女・子供は黙ってろ」というメンタリティ

菅野氏は、安倍政権に対して日本会議が強い力を持っているのは事実だとしながらも、「まるで神道政治連盟が日本の政治を動かしているかのような記事もあるが、単独で議員を当選させられるだけの集票力を持ってはいない」と指摘。日本会議を構成するのが「郷友会」「英霊にこたえる会」といった"旧来の保守的な運動体"にとどまらず、新旧様々な宗教団体、それも神道系・仏教系だけでなく、キリスト教系までを包含する多数の団体が日本会議系の議員の後押しをしていると説明。

そうした「憲法改正に全く興味のないの宗教団体」までもが日本会議系の改憲運動に参画している理由について、90年代以降、日本会議が様々な"反対運動"を繰り広げてきたことを挙げ、「従軍慰安婦は黙ってろ」「子供の権利 女の権利抑圧」「夫婦別姓なんかありえない。女は黙ってろ」「男女共同参画事業、絶対潰す!」という5点が"糾合軸"なのではないかと推測した。

その上で「この"女・子供は黙ってろ"、というのは、日本会議だけから聞く話ではないですよね。ということは日本会議って、"ニッポンのオッサン会議"なんではないか。こういうメンタリティというのは、日本では右翼や保守だけでなく、僕も含めた、"おじさん"が持ってしまっている悪癖なんだと思います。」「なぜ日本会議のことを報道しないのか、という批判がメディアに対して寄せられます。それは"女・子供は黙ってろ"というところにメディアも対応してしまっており、その問題性に気づけなかったということが理由の一つだと思います」との見方を示した。

さらに「僕の中にも"ニッポンのオッサン"はいます。最低な人間なんで、色濃く"ニッポンのオッサン"を内蔵していると思います。それを卒業し、理性的に考えるのを目指そうというのが、この本を書いた一つの理由でもあります」と執筆の動機についても言及した。

"保守派を開放する運動"という自己認識がある

菅野氏は、「左翼系の日本のメディアと海外メディアの悪い癖でもある、"戦前から一本につながる、日本を右に持って行こうという勢力があって、それが時々の政権に色々な影響を与えている"、という見方を捨てなければならない」「危険なのは、思想的な左・右にかかわらずもっている、排外主義、女性蔑視、子どもをバカにする点を見過ごしてしまうことだ」とし、憲法改正についても、9条だけではなく、婚姻や選択的夫婦別姓制度などに関わる24条についても射程に入れていると指摘した。

また、日本会議の思想について日本会議が理念として掲げる「皇室崇敬」「憲法改正」「愛国教育」「歴史認識」「伝統的家族観」の中には「彼らの本音はない」とする。

2000年以降の"保守派"に共通する考え方として、「日本はリベラル・左翼がメディアや行政を牛耳っているという基本認識のもと、保守派を開放する運動だという自己認識がある」と分析。例えば教育基本法改正についても、「子どもたちに愛国者になってほしいから改正したのではなく、左翼やリベラル、日教組から子どもたちを開放する"リアクション"・"カウンター"に近い運動ではないか」と話す。そのような中で、安倍首相は日本会議を、日本会議は安倍首相を相互に利用し、リベラル勢力に対抗しているのだとの見方を示した。

そんな日本会議の思想について、菅野氏は「彼らの思想はとても空虚だ。」と批判、「(日本会議とも関連がある)日本青年協議会の事務方の人々はいま70代です。あと15年もすれば、そこで運動は本当に止まると思う。ただ、それよりも前に憲法改正はやってくるだろう」とした。

日本会議は"とんでもない不忠者"

記者からは、「日本会議の理念には"皇室に対する崇敬"とあるが、今の憲法を体現したような今上天皇や皇室ご一家に対して日本会議は違和感を持っており、別のあり方を実現したいと思っているのか」との質問が上がった。

菅野氏は「日本会議の議論を見ていると、彼らが理想とする家族像を皇室典範によって実現しようとしているように見える。だから彼らは女系天皇の議論にすごくこだわった。ご指摘のように、田久保さんは昭和天皇の言葉は全て正しいとおっしゃいましたが、本来の右翼であれば、天皇陛下が"白"と言えば黒いものでも"白"なんですよ。そういう態度は日本会議にはない。そういう意味では彼らはとんでもない不忠者だと思う」と述べた。