「財源はどーすんの?」18歳選挙権に向けた模擬授業で高校生から政策に鋭いツッコミ - BLOGOS編集部

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※この記事は2016年06月28日にBLOGOSで公開されたものです

「政治家については、悪いニュースばかり。だから良いイメージなんて持てない」
「でも、政治家は良いことするのが当たり前だから、悪いニュースが目立つのは仕方ないのでは…」。

参院選を間近に控えた6月中旬、東京都立駒場高校の教室では、参院選で初めて投票を行うであろう18歳の高校生たちが、「政治」に対するイメージを語り合っていた。これは、区選挙管理委員会とNPO法人YouthCreateが連携して、高校生に選挙や政治についてのレクチャーを行う“出前授業”の一場面だ。

公職選挙法改正により、新たに選挙権を獲得する18、19歳は約200万人。彼らは政治や投票について、どのようなイメージをもっているのだろうか。出前授業の様子から、そのヒントを探った。

「政治」は人前で話すものじゃない?!

授業の冒頭、講師を務めたユースクリエイトの原田謙介氏が、参議院選挙で投票に行くかどうかを生徒たちに尋ねたところ、クラスの半分ほどが手を挙げた。「迷っている」とした生徒たちもいたが、「いかない」と明言した生徒たちはほとんどいなかった。

原田氏は、こうした模擬授業を実施する際の注意点について、以下のように語る。

「高校の現場で政治をテーマにした授業をするときはいつもチャレンジですね。生徒の皆さんの反応はだいたい2パターンに分けられます。『真面目に取り組もう』と固くかしこまっている人、あるいは逆に『政治なんて関係ないし』と他人事のようになっている人。

自分の役割は、まず皆さんを自然体に戻すところから。笑いも交えながらも政治の話題を絡めてアイスブレイクを行います。その後は、自然体の空気を保ったまま、政治や選挙に関しての思考や議論を進めていってもらう。そういう風に、政治を『特別なものとさせないこと』が大事です。色々と知識などを教えることも重要ですが、『政治に関する授業面白かった』と思ってもらえれば、一番うれしいですね」

「政治に対してどんなイメージをもっているか」をグループごとに自由に議論するパートへ移行すると、教室のあちこちから「特権階級」「猪瀬さん」「野々村」といった声が飛び交う。

さらに、「新たに都知事選を行うと45億かかると聞いて驚いた」「国会で何が話し合われているのか、伝わってこない」「野党は批判ばかりで具体策が見えてこない。聞いていて腹が立つ」など会話が高校生のグループ内で交わされる。一方で、「政治の話は人前でするものじゃないと思う」などの、政治に関する議論を行うことに戸惑いを感じる姿も見られた。

「若い人向けの政策だけでいいの?」

授業の後半では、架空の候補者と公約を元に、実際の投票先を選びが行われた。それぞれの候補者の政策については、高校生ながらも鋭く、的確な論評が相次いだ。

例えば、一番若い候補者については、「初出馬で実績はないが、やらせてみてもいい」という意見もあった一方で、「高齢者が増える中で、若い人向けの政策だけでいいのか」という声もあり、実際に投票先として選んだ生徒は少数にとどまっている。当然だが、若いからといって、若い候補者に親近感を覚えるといった単純な図式にはならないようだ。

また、子育てなどの社会保障の充実を打ち出した候補に対しては、「補助金を出すのはいいけど、財源はどーすんの?」と素朴ながらも的確な指摘をする声が挙がっていた。消費増税の延期に伴い財政再建が課題となっていることを把握した上での意見と言えるだろう。

ある生徒は、災害対策を全面に押し出した候補を投票先として選び、理路整然と「消費増税の先送りは熊本地震が原因。こうした災害は、東京でも起きるので、今のうちに対策をしておいた方がよい」と説明した。このように、全体として入手した情報を自分なり咀嚼した上で、投票先を選ぼうとする姿勢が感じられた。

実際の投票日までは、日数は残りわずか。全体の有権者からみれば、18、19歳の割合は2%に過ぎない。それでも、初めて投票に参加する10代が今回の選挙で示す“民意”に注目が集まっている。