【参院選】「働く人が報われる社会でなければという思いが原点」~社民党・吉田党首の″18歳のころ″ - BLOGOS編集部

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※この記事は2016年06月22日にBLOGOSで公開されたものです

22日、参院選が公示された。これに先立つ19日、社民党の吉田忠智党首が共同記者会見を開いた。この中から、とくに焦点となっている経済政策、憲法・安全保障の問題、そして18歳選挙権についての部分をお届けする。

■経済政策:不公平税制、労働法制についても考えてもらいたい

「アベノミクス」と総称されていますが、経済、雇用、社会保障政策に様々な問題点があります。

まず、労働法制の改悪。残業代ゼロなども検討が進められていますけれども、私達が一時政権を担っていた頃にはストップをかける動きもあったんですかが、小泉内閣から進められきた一連の流れの中で、非正規労働者が4割というところまで来てしまいました。 また、税制の問題。消費税を5%から8%に引き上げました。これが大変重い負担となっていますね。一方で、大企業の法人税率は10.72%引き下げております。

そして、介護、年金、医療といった社会保障のサービス。安倍政権になって年金は実質6%下がり、介護・医療サービスは改悪され、負担は増える。 やはり日々の生活が不安、将来に不安、だから安心して消費ができない、個人消費が伸びない、という悪循環に陥っています。

確かに、円安誘導や、あるいはGPIFの株への投資比率を引き上げたことによる官製相場によって、株価は一定程度上がり、企業の含み益は増えたかもしれませんが、結果的には大企業の内部留保は1年間で22兆円増えていますが、増えた税収22兆円のうち消費税は9兆円ですから。そういう見かけの数字とは別に、消費税増税で支出はどんどん増えたけれども、労働者の実質賃金は5年連続低下、年金は上がらない、引かれる分は増えると。やはり国民の皆さんの実感としてはますます厳しくなっているのではないでしょうか。総理は自分に都合のいい数字しか言いませんが、大企業、中小企業、国民に波及するという"トリクルダウン"も、そうなってはいません。

社民党は、雇用そのものを立て直して、正社員になりたい方が正社員になれるような制度を目指します。また、最低賃金は全国一律、まずは1,000円にして、ゆくゆくは1,500円。同一価値労働・同一賃金も目指していきます。そして介護、年金、医療を立て直す。

そのためにも、不公平税制、タックスヘイブンのような税のがれの実態を正し、大企業優遇の税制を是正、所得税の累進課税を強化して、金融課税、資産課税についても強化します。やはり公平な税制のもとで財源を作って、介護、年金、医療、保育所の待機児童も含めた子育て教育の手当をする、それが真の一体改革です。

ちょうど2012年の12月くらいが政権が変わる頃が一番契機の底だったんですね。そこから回復基調になったんです。だから安倍政権ではなくても、一定程度の回復基調になったと思います。ですから、ある程度数字が良くなったのは否定しません。ただ、私は「今がよければよいのかアベノミクス」と言いましたが、異次元の金融緩和をやって、とうとうマイナス金利までやって、出口戦略をどうするのか。株価が上がりましたので、全体ではマイナスにはなっていないということですが、GPIFで株をつぎ込んで、これからどうするのか、国民は大変心配をしていると思います。

円安で大企業は業績を上げましたから、確かに総理が言われるように有効求人倍率が上がったのは確かです。しかし、雇用の現場にはミスマッチがあり、仕事がなかなかない。求人が多いのは介護職とか警備職とか、建設関係はある程度多いんですが、それぞれ低賃金で厳しい実態があり、なかなか人が集まりません。内実を見るとなかなか手放しで見ると喜べないものがあると思います。

ですから、アベノミクスが全部悪いと申し上げているわけではありません。自民党の今回の公約を見ますと、少し軌道修正されていますね。選挙向けということもあるでしょうが、最低賃金の引き上げとか、同一労働同一賃金とか、そういう事を言わざるをえないようになっているのだと思います。

しかし、本当に格差の是正に向けた政策を実現したいなら、不公平税制、労働法制についても考えてもらいたいですね。これだけ非正規雇用の若者が増えて、税金も保険料も十分払えない、一人前に消費者として経済活動に参加できない。そんなどんどん労働者が増えれば、国家の基盤そのものが損なわれるわけですから。そういう危惧を抱いています。

■憲法・安全保障:「護憲」からもう一段進んで「活憲」を

憲法についてスタンス。9条の改憲それ以外に対する考え

まず、認識としては、憲法が公布されて今年70年ですけれど、一行も一字も変えられていない。それはやはり国民が変えることを望まなかったからでしょう。日本国憲法は素晴らしい。9条だけじゃなくて、三原則や、各条文も素晴らしいものだと思います。

しかしその一方で、今の貧困、格差の拡大、そして東日本大震災、熊本地震の被災者の現状、国民、政治が置かれている現状を考えると、憲法そのものが活かされていないとも思います。

憲法を変えようという人たちは、占領下で押し付けられた。だから変えたいと言いますね。やっぱり、憲法に対するリスペクトや果たしてきた役割を踏まえた上で、現実を憲法に近づけていく。私は「護憲」からもう一段進んで「活憲」を訴えています。そのことが求められているのではないかと思います。

ですから、憲法改正の議論そのものは否定しないが、内容を再評価したうえで、リスペクトして、じゃあどうするかという議論が必要ではないかと考えています。

中国の動き、尖閣諸島における動きについては、この間の安倍政権がしてきた中国包囲網でいたずらに刺激をしている状況があるからだと思います。中国と日本は経済的にも切っても切れない関係です。地域間、都市間の交流も活発です、事を構える、戦争をすることはありえない、しかし偶発的な衝突は起こりえる状況があります。

従って、政府は海上連絡メカニズムと言っていますが、危機管理メカニズムをしっかり行うべきだと思います。今、それが上手く行っていないんですね。なぜうまく行っていないか、それは中国をいたずらに刺激することをやっているからです。

これは穿った見方ですが、安保関連法、戦争法を通しやすくするために意図的にやっているんじゃないかと思うくらいですね。確かに中国の役割、軍部は難しいです。それはしかし、外交的な努力でしっかりやらなければいけない。私たちは中国、韓国、日本に加え、アメリカとも協議する「北東アジア総合安全保障機構」を作りましょうと提唱しています。

若者政策、18歳選挙権について

20代、30代の投票率が低いから、高齢者にある程度重きをおいた政策が進められて行ってしまいます。私たちは「居場所と希望をつくる」ということで、政策集「Youth Vision」を街頭で配ったり、SNSで訴えたりしています。

重点的には、4つのことを考えています。 ひとつは住まいですね。「住まいは福祉だ」というのが社民党の考え方でして、公営住宅の確保、家賃補助の拡充をすべきだと。すべての人に安心できる住まいを提供できるようにしたい。

それから、給付型奨学金の問題、いまの制度は学生ローンにあんっていますから、これを改めます。

また、大学生はブラックバイトで強要されて、大学の講義に出られないというケースがあります。そういうブラック企業を根絶します。

これは若者というわけではありませんが、結婚にも力を入れていきたいと考えています。同性婚とか事実婚、ひとり親家庭の支援、マイノリティの支援を行います。

それからロストジェネレーションです。学生時代に就職氷河期だった40歳以降のみなさんについて、あまり光が当たっていないんです。とても厳しいんですね。そういう方々についても、私たちはしっかり見ていきたい。

もう一つは、戦争法、安保関連法が3月29日に施行されて、ひょっとしたら若い人は戦場に行かなければいけなくなるかもしれないんですから、無関係ではありませんよと。

18歳のころ:働く人が報われる社会でないといけない

進学希望の国立大学受けましたが失敗し、1年間、福岡で新聞配達浪人をしていました。そういう挫折の時期でしたから、なかなかそのときに政治との関わりを見出すことはできませんでした。

具体的に政治に関わってきたのは大学を卒業し大分県庁に入ってからです。元首相の村山富市先輩が地元選出の衆議院議員としていらっしゃって、その後ろ姿を見ていました。村山先輩、重野安正先輩の選挙を手伝って、政治に目覚めたと思います。それから私も労働組合に入り、44歳で県議会議員に出ましたが、それも村山先輩に影響を受けたのかもしれません。

9つある党のなかで、私だけが労働組合出身です。やっぱり私の原点は、一生懸命に働いて、貧しいながらも子どもを養ってくれた両親だと思います。父は船大工、母は工場で働いていましたがその姿ですね。働く人が報われる社会でないといけないと思い、労働運動をして県議になってそして国会議員になりました。(19日、参議院議員会館で)