※この記事は2016年03月23日にBLOGOSで公開されたものです

3月23日、東京地検による捜査を受け、田母神俊雄氏が釈明会見を開いた。以下は、冒頭発言の全文。

横領したとはまったく思っておりません

みなさん、こんにちは。

このたびは私は東京地検の強制捜査を受けたということで、3月7日、政治資金を横領したと疑惑で強制捜査を受けております。

これは私が都知事選、これを戦った後に資金が、終わった時点で6000万強の金が残っていたわけでありますが。これが衆議院選が終わったときになって残高がなくなって借金が払えないという事態になりました。そこで部内的に事務所の中で、どうしてだ、ということで追求を始めたわけということであります。

そして、私はこの政治資金を会計責任者によって奪われた被害者ということで認識しておりましたけれども、今回、私が横領、私も横領しているということで強制捜査を受けたということであります。

私は最初に言っておきたいと思うのですが、横領したとはまったく思っておりません。これは全面的に否定をしたいと思います。今から説明しますけれど。

3月7日、私は毎朝、腹筋とか腕立てとかした後に、外でジョギングをしたりしているのですが。ちょうど、外に出て走ろうかなと思うときに、ピンポンと朝8時早朝にインターフォンがなったわけです。「こんな朝早く誰かな」と思って、応対したところ、東京地検特捜部ですということで、入ってこられました。

そこですぐにパソコンとかスマホとか差し押さえになって、外部との接触ができなくなったという状況から始まりました。だいたい4時間の家宅捜索を受けて、事務所の方も受けて、だいたい午前中で終了して、その日の午後から事情聴取にはいったという状況であります。

私はですね、政治資金を横領したという疑惑をかけられておりますが、私がどんな金の使い方をしていたのか、というと。私は会計係から政治資金として預かって、そしてこれを使って、領収書を会計係に提出をすると。こういう方法でお金を使っていました。

そして、会計係の説明によると、「政治資金というのはきわめて応用範囲の広いものだから、一部私的な領収書であっても、状況によっては政治資金によっては支出できる場合があります」と。私が「これが使える」「使えない」と区分するのは大変なので、会計係が「全部私にください。私の方で使えるか使えないか判定します」ということで、彼の方にすべての領収書を渡していたということなんですね。

それで会計係が、それを年末に全部精算をしますということでありました。したがって、年末になって会計係が精算をしたところ、使えない領収書が120万ほどありました。「これは現金を返してください」ということで、私はこれを振込みで会計係に返しました。

今回、東京地検の強制捜査を受けてわかったことは実は120万ではなくて、450万。使えない、政治資金を充てられない金があった。だから、120万では、あと残り330万ぐらいが私的なものになります。これは私的に使ったことになるのではないかという疑惑なんですね。

ただ、私としては、「120万返してくれ」と言われたから、会計係を信じて120万を返した。もし当然「450万返せ」と言われれば、450万返したわけです。返す能力もありましたし。だけど、私はそれを知らなかったということなんですよね。

ただ、その後会計係がお金を使い込んだことによって「田母神としおの会」の全体のお金がなくなって衆議院選の後にお金が払えないという事態になりました。そして、私がしょうがないので、そこにお金を次から次へと補填をしたんですね。合計で1500万ぐらい金を補填しています。

それを口座に残っていましたので、今から言います。 私はまず2015年1月21日に250万円、としおの会に入れています。次に2月3日、400万円入れてます。2月16日、100万円入れています。3月18日、200万円入れてます。3月26日、100万円入れてます。4月13日、100万円入れてます。6月30日、100万円入れてます。7月26日、50万円入れてます。8月21日に、さらに50万円。去年の12月27日に10万円を入れています。

その他、会計係が私に対して「120万返してくれ」といったお金、120万6557円。これを1月30日に 今のとは別に返金をしています。その他にも

「450万返せ」と言われれば当然返していたし、その後、これだけのお金を私は戻して言うわけですから、「政治資金を横領した」と言われるのは私としては非常に心外なんですよね。そういうことで、政治資金横領について全面的に否定したいと思うのですけれども。

いままでは検察で捜査を受けて、「できるだけノーコメントで通してください」というような状況もあったものですから、なかなかしゃべりたいけれど、しゃべることもできなかったわけです。今も若干そういうところがありますけれども。

それでも私がまったくしゃべらないでいれば、「やっぱり田母神は悪いことをしたからしゃべることができないのではないか」と国民がみんな思ってしまうわけですよね。それはもう私にとっては非常につらいことですし、耐えられないことでもあるんですね。ですから、今日こうして皆様方に釈明の場を設けさせていただいたということであります。

政治資金の領収書関連で、チャンネル桜の水島社長が中心になって、「田母神は使えない領収書を政治資金で使った」というような報道をしておりますけれども、私が会計責任者に渡した領収書は、公用・私用含めて全部渡しているわけですから、いわゆる「使えない」と分類された領収書があるわけですよね。その「使えない」と分類された領収書を取り上げて、「こんなことに使ってます」という報道をチャンネル桜なんかでやられたんですよね。

それは別に私が「政治資金から出してくれ」と言ったわけではないし、「それを使ってくれ」と言ったわけではないんですね。私は分類をしてもらうために会計責任者に渡して、会計責任者が全部それを仕分けをして「年末に精算」をしますということで渡してたわけです。

その「使えない」と分類されたものが取り上げられて、「こんなことに使った」と言われているので、私としては非常に心外なんです、これも。ちょっと調べてもらえばわかるはずなんですけれども、そういう形で報道されているということで、なんか私が大悪人みたいになっているということなんですね。

さらにですね、私はこの会計責任者に対して渡した領収書、使えない領収書が、どうしてチャンネル桜の水島氏に渡っているのかも不思議なんです。私はですね、選挙が終わった後に、チャンネル桜の水島氏がですね、残った残金を『頑張れ日本!全国行動委員会』に移してくれ」といったことがありました。そして、それを私が記者会見のときに、ちょっと言ったら彼はなんか激怒したんですよね。

私はなんでこんなことで怒るんだろうと。うつすならうつすと言えばいいじゃないかと思ったのですが、彼が激怒をしてチャンネル桜で「田母神の大嘘つき野郎」と。「そんなすぐにバレるうそを言ってとんでもないやつだ」と。私を女性のキャスターといっしょにののしったんですよ。「そんなことありうるわけがない」とののしりました。

私はその時、彼が何でこんなことで起こるのか。こんなに腹を立てるのかということがよくわからなかった。しかし、もうひとつの事実は、彼が後に、「そういえばスタッフに言われてそういうことがいったことがある」ということを認めました。彼がチャンネル桜で私の攻撃を13時間半にわたってやりました。13時間半です、ちょっと異常だと思います。通常のニュースとして、5分、10分やるならわかりますけれども、よほど何か恨みがなければ、こんなことやるわけないですけれど。

そういった水島氏がそれをいったことを聞いている証人もいるわけです。証人もいて、さらに私がそれを会計責任者の鈴木にも話したんですよね。「水島さんが、お金を『頑張れ日本!全国行動委員会』にうつしてくれと言ってるよ」と。彼は「いや、それはできません」と答えていたんですね。

私は今回の捜査があって初めてわかったことが、何かというと、実は都民の会の政治資金、これはそのまま都民の会が解散してしまうと法的には私、個人に帰属するものになるんだそうです。これを頑張れニッポンの口座に移してしまえば、『頑張れ日本!全国行動委員会』のものになってしまうと。こういう背景があるんだそうです。

そして、これは事実ではなくて推測ですけれども、水島氏はその政治資金を自分が自由に使える口座にうつしておきたいと考えていたのではないか。そこを指摘されたから、彼は激怒したのではないかと。私は今回の強制捜査が始まって初めて気がつきました。

一方のこの会計係ですけれども、これは政治団体を残しておかないと、このお金にアクセスできない。政治団体を残しておきたいから彼は「水島氏に渡すことはできません」といって、自分が継続的にアクセスできる体制をとりたかったのではないのかなと。これは私の推測です。

そういうことがあって結局、水島氏が私を攻撃を始めたということで、最初は「なぜ私を攻撃するのか」がわからなかったのですが、最近やっと合点がいったというような状況であります。

私はこの政治資金をですね、私用に使うというような意識はまったくなかった。それは会計係がキチンと処理をしてくれて、その領収書をうまく使ってくれるのであれば、そうしてほしいという思いはありました。でも、「使えないものを無理やり政治資金から出せ」と言っていたわけではないんですね。

さらに、ずいぶん私も攻撃をされましたけれども、「200万円の背広を買った」とか。200万の背広ってどんな背広かわかりませんけれど。あとは「家の墓を政治資金で直したんじゃないか」とか。そんなことは通帳を見てもらえばすぐにわかることなんですけれども、なんか悪態の限りを尽くしてやられたという感じですね。

検察の方が、水島氏の告発で動いたとは思っていませんけれど、強制捜査によって、私が「政治資金を横領するようなズルい奴」というイメージが国民に広がってしまう。これはなんとしても私は避けたいという思いで、今日こういう会見を開かせていただきました。

この政治資金がですね、私がむちゃくちゃに使ったためになくなったという風に国民の皆さんはおもっているかもしれませんが、決してそんなことではないと釈明をさせていただいております。

もう一度整理をしますと、私が領収書相当分の政治資金を会計係から預かって、これを使って領収書を彼に渡す。それは私用・公用、私がいちいち区分していたら大変ですから、これを彼に全部渡して、彼が「私が全部分けますからまかしてくれ」というから渡したんですね。

それで「使えないものは年末に整理をします。精査します。」ということで私はわたして、年末、平成27年の1月に入って12月で〆て、そして120万は使えませんということで、彼は私に返してくれと言ったわけですね。私は120万を返した。ところが、今回の強制捜査で実は使えない領収書が450万円分ありましたと。すると、120万返しても330万、これは私用に当たりますと言われるわけですね。それは繰り返しますけれど、それを私用に使ってくれと言ったのではなくて、450万返してくれと言われれば当然返したのです。でも、450万と言われなかったので、私はまったくわからないのです。

その上で、さらに27年になって資金が不足をして、私が1500万円に近いお金をとしおの会とか後援会に入れているということを考えればですね、私は横領とか言われる筋合いではないのではないかと思います。

ということで、だいたい状況を皆さんにわかっていただいたのかと思います。これが「横領」と言われている実態なんです。ぜひ、国民の皆さんにこれをわかってもらいたいし、私は絶対に横領なんかしていないということを声を大にして訴えたいです。

今この汚名を着せられて、本当に実際、私にとっていろんなことが起きるんです。通常の社会活動ができませんから。今日、こうして弁明をさせていただかなければ講演もできない、キャンセルになるし、本の出版も延期になるし、メルマガとかの解約、Twitterのフォロワーも3000人も減るし、いろんな私にとっては障害が出てるんですね。

ですから、ここで弁明をさせていただいて。「私は決して横領なんかしてません。皆さん信じてください」ということを言って、再び社会活動を始められる基盤を作りたいという思いで本日こういう会見を開かせていただいたということであります。

再び国政への意欲も示す

質疑応答では、記者たちから時間軸や金額についての確認の質問が続いた。最後の「この問題が解決したら、政界に再び挑戦するのか」との質問に田母神氏は、「私も歳は歳でして、前期高齢者ですから、年々選挙には出にくくなると思います。ただ、なんとかこの日本をいい国にしたいなという思いはありますね。ですから、可能性は常にゼロではないですね」と答え、会見を終えた。

田母神氏の支援者「水島聡氏は日本人、あるいは男の風上にも置けない不届きな男」

田母神氏が退出したあと、株式会社KBM(金沢市)を経営する諸橋茂一氏が登壇、「水島氏に関連する話というのは田母神さんも言い難かったのではないかと感じましたので、番外編ということで…」と語り始めた。

田母神氏が航空自衛隊小松基地の司令をしていた18年前に知り合ったという諸橋氏は、一昨年の東京都知事選でも田母神陣営で支援活動を行ったという。その頃から同氏は「水島総という人物の問題点を非常に強く感じていた」と言い、「都知事選が近くなって、田母神さんが水島総を連れて石原慎太郎元都知事のところにご挨拶に伺ったところ、何と水島総は田母神さんよりも上座に座り、石原慎太郎氏に対して延々と喋りつづけ、石原氏に"君が話をするんじゃない、黙りなさい"と注意されたこともあったらしい」と明かした。

また「選挙期間中、水島総は選対本部長として、朝礼を仕切っておりました。そのときの彼のボランティアへの言動、物の言い方が非常に悪いので、"君はボランティアへの言い方がなってない。ボランティアは君の部下でもなんでもないよ。仮に部下であったとしても、実るほど頭を垂れる稲穂かな、そういう態度が必要だ。考えなおしなさい」と注意したこと、西新宿での田母神氏の"第一声"の際には「司会者の立場でありながら、彼は街宣車にのぼって30分くらい延々としゃべり続けたんです。水島総という男が選挙に出るのではないかと勘違いしてもおかしくないくらいの言動だった」と振り返った。

その上で、「根本的に金銭的な問題があったとすれば、選対本部長である水島総にも責任あるということを忘れているのではないか」と水島氏に疑問を呈する。

さらに諸橋氏は「10年ほど前、水島氏が映画『南京の真実』3部作をつくるために3億数千万が必要だということで、私も一部寄付をした。5、6000万円をかけて第一部だけ作りました。"残りの3億円どうしたんですか"と聞きましたが、未だに全く説明はありません」「尖閣に行く船を買いたいということで集めた資金の残り約3000万円についても同様」などと証言。

今回の強制捜査のきっかけについても、「逆恨みして異常な田母神叩きを続けてきた。しかし田母神さんが失脚しない。そこで最終手段として東京地検に告発したという流れであると思っている『頑張れ日本!全国行動委員会』に田母神さんを祭りあげ、自分が取り仕切って運営しながら、田母神さんの名声・信用を利用するだけ利用したにも関わらず、6000万円を自由にできるかと思ったら出来なかったことで、それで徹底的に誹謗中傷しながら今に至っている。日本人、あるいは男の風上にも置けない不届きな男だという憤りを感じております」と水島氏を厳しく批判と締めくくった。