白票投票は馬鹿らしい……が? - 赤木智弘
※この記事は2014年11月29日にBLOGOSで公開されたものです
「日本未来ネットワーク」なる団体が「白票を投じることは、投票したい候補者がいない意思表示」であるとして、選挙での白票投票を呼びかけている。(*1)先に結論を言ってしまうと、分かっているとは思うが、白票になんの意味もない。サイトでは「黙ってないでNO!と言おう。」と主張するが、白票を投じることは「黙ってYES!」と同じ意味を持つ。
白票は単なる「無効票」としてまとめられ、投票する人が誰も居ないという意思表示をした人なのか、票を投じようとして投票用紙に「○○△△さんガンバレ」と書いて無効にされてしまった、粗忽者なのかの区別はされない。
サイトの漫画だと選挙区において当選者の得票数よりも無効票(漫画では白票となっている)が上回れば、当選者にダメージを与えられるようなことを言っているが、前回の衆院選挙では全国平均で小選挙区が3.31%、比例区が2.40%と、小さな数字にとどまっている。(*2)
これが仮に白票呼びかけの大成功によって小選挙区、比例ともに10万人(10万人も運動に動員できれば、文句なく大成功だろう)が白票を投じたとして、前回衆院選の数値の無効票数を10万増やして単純算出するに、小選挙区が3.47%比例区が2.56%。この数字で無効票に対する認識が何か変わるだろうか?
議員や政党が気にするのは、そんな小さな数字よりも、対立候補との得票率の差である。大きな差をつけてダブルスコア、トリプルスコアで勝てば選挙区も安泰だが、わずかな差でギリギリ競り勝った状況では、次の選挙ではなにか考える必要があるだろう。白票を入れるくらいなら、優勢な候補の対立者に票を入れたほうが、はるかに現状に対するNOという意思表示であると言える。
実を言うと、僕にも20歳になるかならないかの頃に「白票投票も自分の意思表示だ!」と思っていた時期もあった。けれどもそれは選挙を知らないが故の妄想でしかなかった。しかし、自分がそう思っていた頃に、こうしたハッキリとした後押しがあれば、僕は白票投票を正しいものとして思い込んでいた可能性はある。
ちゃんと選挙を知った身からすれば、馬鹿らしい誘導であっても、そうは見えない人がいるかもしれない。
ネット上では、無効票が増えれば強固な固定票を持つ政党が有利になることや、漫画を用いた政治宣伝であることから、この団体の支持母体は、とある極右的思想を持つ宗教団体ではないかという憶測が流れている。それが事実だとすれば、目覚めたばかりの政治意識を一定の方向に誘導することはお手のものだろう。
数年前までは笑い飛ばされていたような嫌韓という政治思想が、今では大手を振るうようになったのと同じように、数年後に白票運動がある一定の影響を持ち、浮動票を無効票へと誘導するような可能性もないとは言えないだろう。
単純に今回の白票運動を笑い飛ばすのではなく、なぜ白票投票が意志を示すこととは言えないのかを、ハッキリと目覚めたばかりの人たちに示す必要があるだろう。
*1:黙ってないで、NO!と言おう。(日本未来ネットワーク)
*2:平成24年12月16日執行 衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果調(総務省)