【書き起こし】「“表現の自由”を守るためにもヘイトスピーチを規制しなければいけない」―参議院法務委員会・有田芳生議員質疑 - BLOGOS編集部
※この記事は2014年11月14日にBLOGOSで公開されたものです
法規制の必要も指摘されているヘイトスピーチ問題。11月11日に行われた参議院法務委員会で、民主党の有田芳生議員がこの問題を取り上げた。有田氏は今回、ネット上で匿名で行われる差別表現の問題についても言及した。
当該質疑を書き起こしでお伝えする。(※可読性を考慮して文章を一部整えています。また、文中に不適切な表現がございますが、当該質疑の趣旨を考慮してそのまま表記しています。)
当該質疑を書き起こしでお伝えする。(※可読性を考慮して文章を一部整えています。また、文中に不適切な表現がございますが、当該質疑の趣旨を考慮してそのまま表記しています。)
ドイツでは逮捕されるような事体が日本ではまかり通っている
有田芳生議員(以下、有田):前回、ヘイトスピーチについて質問をさせて頂きました。さらにこの問題というのはこの数年間日本社会の大きな、あるいは政治問題ともなってきておりますので、新たな課題、例えばインターネット上で匿名でいかに差別の扇動が行われているのかという所に少し重点を絞って、質問通告の順番を替えますけれどもじっくりとお聞きをしたいという風に思います。先般もお話しをさせて頂きましたけれど、今年の8月20、21日とスイスのジュネーブで国連の人種差別撤廃委員会の日本審査が行われました。実は日本からもNGOのメンバーがかなり現地に出かけまして傍聴致しました。私もその一人でしたけれども、人種差別撤廃委員会の日本審査が始まる直前に委員の方々とお話する機会がありました。
その時に日本から持っていった全国で繰り広げられているヘイトスピーチ、その現場について映像を上映しました。多くの委員の方々、非常に驚いておりました。「こんなことが日本で起きているのか」と。そういう声が上がりました。それは正式の人種差別撤廃委員会の日本審査の中でも何人もの委員の方からお話がありました。前々回でしたか共産党の仁比委員の方からも、ヘイトスピーチ問題の質問がありました。そこでどんな発言があるのかということで、例えば大阪の鶴橋では去年の二月に「南京大虐殺知ってるでしょ、ここから出て行かなければ鶴橋大虐殺をやりますよ」と。あるいは東京の新大久保では「ホロコーストをやるぞ」と「新大久保を更地にしてガス室を作るぞ」というようなことが叫ばれました。
実はその人種差別撤廃委員会の日本審査の直前に見て頂いた映像の中にも大阪の鶴橋の酷いヘイトスピーチの現状が表現されておりました。具体的に言いますと、こういうデモがありました。
「みなさんチョンコと言って差別じゃないですからね、あいつら人類じゃありませんから」と。そういう発言があってデモ行進が行われる。こんなことを、こういう公の場で言う事は憚られると思いながらも、しかしメディアなどがやはり自主規制をせざるを得ないような現状の下で、事実にやはり向き合っていかなければおけないと思いますので、もう少し紹介します。
昨年の鶴橋、昨年の3月24日に行われたデモではこんなことをさらに言っております。「糞チョンコどもを八つ裂きにして家を焼き払うぞ」「焼き払うぞ」というシュプレヒコールが重なる。「一匹残らずチョンコどもを追い込んでやるぞ」「追い込んでやるぞ」。「薄汚い朝鮮半島を焼き払え」「焼き払え」。まあ東京の新大久保の集会でも出発の時には「殺せ、殺、朝鮮人」、こんなことが白昼堂々とまかり通っているというのがこの数年間の日本社会でした。
さらに一点だけ付け加えておけば、今日皆様方にお手元に資料を配布させて頂きましたけれども、写真右側の下、これは11月9日ついこの間、南越谷で行われたデモ行進ですけれども、見ていただければ判りますようにナチスドイツの象徴であるハーケンクロイツ、これを纏った男達がデモ行進をやりました。これは今回初めてではありません。6月には千葉県の西船橋でもハーケンクロイツを使ったデモが行われました。
これはこの一年だけではありません、2012年位から大阪などでもこういうことが続いております。つまり国際社会から見れば「日本ってのは一体何なんだ」と、こんなことがドイツで行われれば即座に逮捕されるような事体が日本では堂々とまかり通っている。2020年東京オリンピック、パラリンピックを迎える国として、まあこれでいいのかと、特に海外からのメディアは厳しい目で見られております。
こうした事について、まず法務大臣にお伺いをしたいのですけれども、こういうデモ、集会というものが日本社会で続いていることについて、どのようにお考えになっているのか、これは人権問題を担当なさっている大臣としてもやはりご意見を伺いたいということ。さらには、こういうデモ・集会についての実態調査、それについて法務省のどういう部署で担当していらっしゃるのでしょうか、お聞きしたいと思います。
上川法務大臣(以下、上川):特定の人種、あるいは民族に対して先ほど委員がご指摘になりましたような、様々な暴力的な発言をしてきているということに対しては、まさに社会に対しての大変大きな課題・問題だという風に思っておりまして、極めて由々しきものだという風に理解しているところでございます。
どういう実態になっているのか、ということについての把握というのは、それに対してどう対応するかということを考える上でも大変大事な前提になるというふうに思っておりますので、そこにつきましても実態をどう把握するかということについて、担当の部局人権擁護機関が全国にもございますので、そうした所を通じてしっかりと把握をしていくと、そういうことが大変大事だと思っております。
有田:今大臣から、酷い発言という風に表現がありましたけれども、ヘイトスピーチというのは憎悪のスピーチですから発言という風にどうしても捉えられてしまうのですけれども、人種差別撤廃条約の元々の英文からいうとこれは憎悪表現というようなものではなくて、新聞などでも未だそういう使われ方がしておりますが、差別の扇動なんですよね。
ですから、ここは議論になりますからこれ以上はやめますけれども、つまり「言論表現の自由の範疇なのか」あるいはもっと暴力的な言葉そのものの暴力であると捉えるか、そういう問題もこれからも議論をしていかなければならないと思いますが、まずこの問題でしっかり立たなければいけない立場と私が考えているのは、やはり差別されている人たちがどのような苦しみを被っているか、そこを出発点にしなければいけないという風に思います。
そのことを前提にしながらもう一つ、今人権機関で調査をするとおっしゃって下さいましたけれど、実際にはこういう問題についての調査というのは進んでいるのでしょうか。あの現場からでも構いませんし、大臣からでも構いませんが。
岡村人権擁護局長:(以下、岡村)私ども法務省の人権擁護機関では、全国の法務局、地方法務局で人権相談を行っており、また被害者からのメールなどによる被害の申告も受け付けております。こういった申告などを受けて開始した、人権審判事件の調査を通じて現状を把握しているところでございます。
有田:被害者の方からメール、あるいは現場にこられて相談した時、それに対応してくださっているというお話なんですが、こういう差別の扇動行為というのは日本全国で、東京の新大久保だけではなく、この間は銀座の方でも行われました。
毎週のように行われている実態について、「被害が届かないと調査をしない」というのはやはり非常に問題だと思うんですよね。むしろこれだけ社会問題になっている訳ですから、率先して人権機関などが現場にも行ってその調査を進めるというのが、それが相応しいと思うのですがいかがでしょうか?
岡村:私どもでもできる限り実際に、ネット上ですでに載っているYouTubeなどの映像を見て確認しているところもありますが、なかなか全国すべてのネット上の、表現ないしは実際の街頭でのデモ行進などについて網羅的な調査は中々難しく行っておりません。
有田:そこをやはり前に進めなければ日本の人権問題改善にとってもやはり遅れている分野だという風に思うんですよね。今ネット上で全国各地の状況確認はなかなか難しいと仰いましたけれども、そうではなくてやはりあのかなりまとまって、自らの差別行為を在特会をはじめとする団体が今でも出してるんですよね。
もう一つ指摘をしておきたいのは、先ほど私は言葉で、大阪鶴橋の差別の実態というのをご紹介しましたけれども、映像だけでも実は残念ながら判らないんですよ。この委員会、前の委員の方々には私から国連でお配りしたような中身についてDVDをお渡ししました。前回、谷垣元法務大臣も見て下さいまして「そりゃ酷いもんだな」ということをこの場でもお答えいただきました。
だけど敢えて言えば、活字を読んでも中々判らない。残念ながら映像見ても判らないんですよ。これ現場に行けばどれほどおぞましい事が行われているかっていうのは、肌感覚で判る。在特会をはじめとする差別団体が、そういうさっきのような酷いことをやっている。それに抗議する人たちがどんどんどんどん増えて来た。2倍3倍4倍と増えて来ている現状があります。
さらには、やはりトラブルがあってはいけないので警察の方々が、非常に多く警備をしてくださっている。去年のピーク時でいえば、東京新大久保の6月、9月あたりというのはそういう差別をする人たち、それに反対する人たち、警備する警察官たち。おそらく1,000人近い人たちが白昼東京の新大久保から新宿あたりを、1,000人以上の人たちが熱気を持って動き回る訳ですよ。そこに通行人もいれば、買い物客もいる。或いは新大久保の場合には、在日コリアンの人たちが一杯いますから、目の前で攻撃がやってくる。だからそれはもう申し訳ないんだけれども皮膚感覚で感じて貰わなければ、どれほど酷いことが今日本で行われているかっていうのは、残念ながら人間の認識の限界がある。
しかし、それを何とかしていかなければ、繰り返しますけれども被害者の立場に立って差別をなくしていくという、これからの日本の新しい人権状況を作っていくということにはならないと思うんですよね。そのことを指摘して、じゃあそういった差別扇動の集会デモが行われていることについて警察庁にお尋ねしたいのですけれども、日常的な調査というものしているのでしょうか。
警察庁長官官房・塩川審議官:(以下、塩川)今、議員指摘の在特会につきましてはデモなどの活動に伴い違法行為を引き起こしており、警察は在特会について関心を持ち、情報収集を行っているところであります。
有田: もう一言お聞きしたいのですが、「関心を持って」というのはどういう関心なのですか?
塩川:今ご答弁させて頂いた通りでありますけれども、デモなどの活動に伴い違法行為を引き起こして、しばしば引き起こしておりますので、そういった点から関心を持っているということであります。
匿名でネットで如何に酷いことが続いているか
有田:警察が、そういう差別行為に対して反対する人たちに私が近くで見ていても、これはちょっと取り締まる方向が違うんじゃないかと思う事は多々ありますので、それについてはまた改めて機会があればお聞きをしたいと言う風に思います。今日私が特にこういうことを知って頂きたいし、これを何とかなくしていかなければならないということは、在特会などをはじめとする集団が路上で酷いヘイトスピーチをまきちらしているだけではなく、その背景に私達のこの社会で、匿名でネットで如何に酷いことが続いているか。そのことについての対策も考えていかなければいけないということで、ネット上のヘイトスピーチについてお話をお聞きしたいと言う風に思います。
今30代の在日朝鮮人の女性がいます。北陸地方に住んでいらっしゃいますけれども、今から2年前に子供さんが出来ました、妊娠をしました。まだまだ今に比べると牧歌的な状況がツイッターの世界でもありましたけれども、友人とツイッターでやりとりをやっておりました。そうするとそこに匿名で攻撃を仕掛けてくる人たちがどんどんどんどん増えてきた。
あの資料で皆様にお配りをしておりますけれども、右側の上、一部アカウントなどは消しましたけれども、ここに出ている写真もまったくこの人物のものではありません。読んで頂けますでしょうか。妊娠した在日朝鮮人の今30代の女性に対して匿名でこういう攻撃がなされました。
「はあ?てめえガキ産みやがるのかよ。塵増やすなよ婆」これお婆さんの婆ですね。「蛆蛆増殖しやがって害虫ども」うじゃうじゃのウジは蛆虫の蛆。「てめえごと2匹とも死ね、有害種族」。こういう事がもう当たり前のように今でも続いているんですよ。インターネット上ツイッターではこの書き込み今でも残っております。後に在特会ととても親しくてネット上でこういうことを繰り返して来た人物が別の問題で逮捕されましたけれども、今でもこのような同じような書き込みが続いております。
私はこの女性から話を聞きました、妊娠して安定期に入って友人と軽い気持ちでやりとりをしていたらこういう攻撃がなされてきた。これをきっかけに色々な人から同じような酷い攻撃が来た、誰だか判らない訳ですよね。精神的に大変な思いになって、ストレスがどんどんどんどん高まっていって一週間入院をされました。
その後無事赤ちゃんは産まれましたけれども、そういう被害を被っている女性がいる。彼女が言っていたのは「ツイッターの中でも私達は孤立しているんだ。一般社会でも差別がずっと続いてきて嫌な思いを小さい頃からやってきた。でマジョリティーで助けてくれる人はいなかった。見て見ぬふりばっかりだった」と。だからこういう攻撃をされるのも非常に辛かったし苦しかったけれども、孤立する方が辛かったと、今でも絡まれることがあるけれども、それに反対してくれる人たちが多くなってきたので、段々気分が楽になってきておりますと。そういう発言、感想を述べていらっしゃいました。
こういう事が今でもずっと続いているんですよね。これは単なる一例なんですよ。他に攻撃されたある在日コリアンの人なんかは「死という言葉が自分の頭の中から離れなかったことがある」。これは男性ですけれども、そういう人たちがこの日本社会で一杯いらっしゃる、そのことを私達、「このままでいいのか」「これじゃいけない」。そういう立場で物事を考えていかなければ行けないという風に思います。特に政治の責任としてこういうことをなくしていくこと、これは人種差別を無くすことだけではなく、やはり日本が共生社会としてしっかりとこれから立派な日本になって行くためにも必要なんだと思っております。
先にもう一点だけ指摘をさせて頂きます。今社会問題にもなり、多くの週刊誌・新聞などでも話題になっておりますけれども、朝日新聞の元記者で北海道の大学で今教鞭をとってらっしゃる方が多くのネット上、あるいは電話攻撃を受けて「大学に爆弾を仕掛けるぞ」というようなことまで起きました。これは警察庁、あとでお聞きをしたいと思っておりますが、その元朝日新聞の記者が攻撃されることも異常ですけれども、同時に家族、娘さんに対する攻撃というのは酷いものがあるんですよ。
上川大臣も二人の娘さんがいらっしゃると聞いておりますが、今17歳の女子高生がネット上で顔写真を晒されて、とんでもない差別表現がなされてる。例えば「お父さんは売国奴です。お母さんは密入国朝鮮人の売春婦です」「私はとても誇りに思います」「おい涙ふけよ」「娘は関係ないと言うなよ○○」ここで固有名詞が入っておりますけれども、「晒すことで抑止力が高まる」「こいつ死ねばいいのに」「このガキにもとたんの苦しみを与えないとな」「一族血を絶やすべき」「自殺するまで追い込め」というようなことが異常な程、今でもやられている。これは本当に異常な事体で17歳の少女がどれほど心を痛めているか。ご家族だって大変な思いをしている。これが今の日本の現状なんですよ。
これに対してどうしていいのか、どうしていけばいいのか、まず総務省にお聞きをしたいんですけれども、プロバイダー責任法でどういう対処ができるのか、あるいはどういう限界があるのか、まずそのことをお答え頂きたいと思います。
総務省・吉田総合通信基盤局電気通信事業部長:インターネット上に流通いたします、いわゆる各種の権利侵害の情報につきましては、今委員ご指摘のプロバイダー責任制限法によりまして、プロバイダーの責任範囲を明確化しているところでございます。
具体的には、ある情報がインターネット上に流通することにより、その個人の権利が不当に侵害されたと認めるに足りる相当の理由がある場合にはプロバイダー等が、そのような情報を削除したとしても損害賠償責任を免れることとされております。また名誉等の権利を侵害されたとされる方からプロバイダー等に対して、当該情報の削除の申し出があったような場合には、プロバイダー等が発信者に対しまして削除に同意するか否かを照会いたしまして7日以内に反論がない場合には、その情報を削除したとしても、プロバイダーは損害賠償責任を免れることとされております。これがプロバイダー責任制限法の概要でございます。
このような制度の下におきまして、実際にはプロバイダー等が権利侵害情報等の違法な情報の流通に対応するにあたりましては、例えば約款ですとか利用規約の上で、プライバシー侵害や名誉毀損等を禁止事項として定めまして、これに違反する場合には迅速に削除等の対応を行っているというのが一般的であるという風に承知をしております。
またさらにプロバイダー等の事業者団体におきましても個々のプロバイダー等のですね、そういう円滑な対応を、対応に資するようプロバイダー等と利用者との間で適用される、契約約款のモデル情報というものを作りまして、このような約款の普及に努めるとともに権利侵害への該当性への判断基準となりますガイドラインを策定しているという風に承知しております。
有田:だけどそれでは、先ほどのような書き込みってのはいまだ残っていることを含めて放置されている。それに対しては個人がプロバイダーに依頼をするというプロセスのことは今お話になりましたけれども、私はこの委員会が始まる前に、この17歳の女子高生、元新聞記者の娘さんについて今ネット上でどうなっているかを調べて来ました、相変わらず何にも変わっておりません。こういう事体に対してはどうしたらいいのですか、被害者は?
吉田:私どもと致しましては、現在のプロバイダー責任制限法と、その法制度の枠組みの元で、プロバイダー等の事業者が只今申し上げました約款、あるいは利用規約、ガイドライン等の元で、不適切な権利侵害等の情報につきましては、可能な限り迅速に削除等の対応がされることを期待をしているということでございます。
平成25年のネットを利用した名誉毀損の検挙数約120件
有田:期待しても変わってないんですよ。インターネットを皆さんご存知だと思いますけれど、こういう匿名の書き込みというのはどこの誰だかさっぱり判らない。しかも広範囲に渡っている訳ですよね。だからそういう状況の元で迅速かつ効果的な措置といっても、何にも迅速な効果生まれていないんですよ。先ほどの在日朝鮮人の30代の女性についての書き込みは2012年から2年間ずっと放置されっ放しなんですよ。だから今お話になったことを踏まえてですね、やはりあのインターネット上の様々な問題も新たな段階にやはり進んでいかなければいけないという風に思うんですよね。
札幌の17歳の女子高生の場合、さきほど、本当一端だけお伝えしましたけれども、刑法230条の名誉毀損だけではなく、刑法231条の侮辱だけではなく、刑法222条の脅迫にあたるという風にこれは思います。で告発もなされることでしょうけれども、やはりそういった新しい問題に私達が立法府として、どのように新しい問題解決の道を考えていくか。そこが非常に大事だと思います。
さらに言えば個別の削除要求をしても、イタチごっこで、もう追いつかない現状なんですよね。それで精神的に17歳の女子高生だけではなく、多くの人たちが精神的に追い詰められていってしまうっていう、これが現状ですから、やはりあの新しい問題を前に進めて行かなければいけないと思います。ご存知のように名誉毀損や侮辱罪についても申告罪ですから、被害者自身が警察に行かなければならない、手続きをしなければいけない。そういうことをなかなか普通の人は大変ですから、そういう差別扇動行為がネット上で今でもずっと吹き荒れている以上、それに対して現行法に基づいて適正、迅速に削除する仕組みを作ることも大事ですけれども、後ほどお話しをしますけれども人種差別撤廃条約に基づく、新しい法規制というものも考えていかなければいけないだろうという風に思います。
警察庁にそこでお聞きをしたいのですけれど、先ほどのような、色んな差別扇動の匿名による書き込みがあった時に、現行法を用いて適正迅速にそれを削除していく仕組みっていうのは今あるんでしょうか? 或いはこれから何か検討されるということはありますでしょうか?
塩川:取締りという観点からのお答えになりますが、警察は在特会によるものも含めまして、ネット上での言動について個別の事案にはよりますが、今ご指摘のように刑法の名誉毀損罪や脅迫罪などが成立する場合には、法と証拠に基づき厳正に対処することとしております。
警察におけるインターネットを利用したここ数年の名誉毀損罪、脅迫罪の検挙件数でございますが、平成23年が名誉毀損約80件、脅迫も約80件。平成24年が名誉毀損約100件、脅迫が約160件。平成25年が昨年でございますが、名誉毀損約120件、脅迫約190件、こういった検挙件数となっているとこでございます。
有田:先ほどの北海道の17歳女子高生の場合は名誉毀損、侮辱あるいは脅迫にあたると私は判断しますけれども、警察庁としてはどのように理解されますか? 個別のことにはお答えできませんということでなくて、お答え頂きたいのですが。
塩川:正に個別具体のケースでございますので、ここではお答え差し控えさせて頂きます。
有田:あの朝鮮学校襲撃事件、京都地裁大阪高裁の判決が出ましたけれども、やはりあの新しい法規制というのを検討していかなければいけない段階に日本社会は入っているという風に私は思います。
これはあの後で時間があったらまたお聞きをしたいと風に思いますけれども。もう一度総務省にお聞きをしたいのですけれども、例えば最近社会問題になった脱法ドラッグの規制について、与野党を含めて議論が進んでおりますけれども、これは今の段階でもインターネット上の違法な情報への対応に関するガイドラインなどが変更されてますよね。その経過をちょっと教えてください。
吉田:先ほど申し上げましたように、事業者団体等ではですね、総務省も相談にあずかってございますけれども、いわゆるガイドライン、あるいはそのモデル的なその契約約款というものを作っておりまして、様々な社会的状況に応じて随時改定等を行っております。委員ご指摘の危険ドラック、脱法ドラッグ等につきましても、近時の社会的状況を踏まえまして、関連する情報は違法なものであって、これは禁止事項としてプロバイダー等において削除の対応が可能となるような形のですね、改定を事業者団体等に行っていると風に承知をしております。
有田:確認をしたいのですけど幾つかの団体で協議会を作って、そこに総務省もオブザーバーとして参加をされているという理解で宜しいですか?
吉田:委員ご指摘の通りでございます。
有田:そこで各団体との関係ですけれども、総務省がそこで指導的役割を果たすことはできるのでしょうか?
吉田:オブザーバーという立場でございます。また、インターネット上のその情報の流通に関しましては、いわゆる表現の自由の問題、それと議論になっている趣旨に添いますれば、いわゆる権利の侵害の問題、あるいは違法は情報の流通の問題、さまざまな問題がございます。色々慎重な対応を要する問題がございます。 そういう意味で言いますと総務省が場で指導的な役割というよりも、オブザーバーとして参加させていただいて、行政の立場から事業者団体、民間の事業者の方とも意見交換をさせていただきながらですね、より良い適切な対応が図られるように、そういう風に務めているということでございます。
有田:私は表現の自由を守るためにもヘイトスピーチを規制しなければいけないという立場ですけども、やはり具体的に被害者が苦しい思いをしている、自ら命を絶とうかと思うようなところまで追い込められる。あるいは妊婦さんが一週間入院せざるを得ないような匿名の広範囲の攻撃が行われる。やはりこの新しい課題に対して、脱法ドラッグの問題とは次元が違いますけれども、こういう問題についても、総務省でも積極的にイニシアチブをとって頂いて、新しい問題解決の道を探って頂きたいという風に思っております。
このヘイトスピーチのネット上の問題についてはもうここで終わりにしたいと思いますが、最後に上川大臣、先ほどお伝えしましたけれど2人の娘さんをお持ちのお母さんの立場としても、こういう事体に対してこのままではいけないと風に思われるでしょうけれども、どうお感じになりましたか?
上川:先程来、有田先生から実際に現場の中で、どんなに酷い状態にあるかということについては、文章とかあるいは映像等でも限界があるという、大変適切なご発言がございました。正に現場に行かないと判らないことというのは、沢山あるということでございまして、そういうことを踏まえた上での今日のご指摘であったと、そういう意味では色々な形で考えるということについての大変大きな示唆を頂いたと思っております。
もとより差別的言動が外国人の方をはじめとして、また在日の方も含めまして色んな形で他人の、他の人の人権を侵害するということについては、これはあってはいけない大変大きな問題だと思います。そして今17歳の高校生の娘さんのお話や、また同時に妊娠をしながら大変苦しい状況の中で、しかし見事に赤ちゃんが生まれてお子さんを育てるという今度は母親の立場で、というようなことを考えた時に、そういうことをそのままで置いてはいけないという思いでございます。
色々な人権の侵害案件がございますが、これまでいわゆるヘイトスピーチというところに焦点を当てて、このことについて向き合って来たかといえば、私はそれについては、新しい人権侵害ということの事態であると、まさに仰った通りだという風に思っております。
こうしたことを気にしながら、いわゆるこのヘイトスピーチについての実態がどうなっているのかということにつきましても、特に先ほど申し上げましたけれども、人権の擁護に関する法務省の中での様々な機関がございますし、また省庁との間の連携も含めまして実態の状況についての把握ということ、そして申告をされた事案がどのくらいヘイトスピーチに係る案件としてあるのかどうか、こういうことも含めてしっかりと取り組んでいくということについて指示をしたところでございますので、そういったことも踏まえまして適切に対応することができるように、しかも早急に対応することができるようにして参りたいと思っております。
※この後、有田議員は朝鮮学校の授業料などの問題についても質問を行っている。
発言者:有田芳生参議院議員(民主党)、上川陽子法務大臣、警察庁長官官房・塩川審議官、総務省・吉田総合通信基盤局電気通信事業部長、岡村人権擁護局長
出典:11月11日参議院法務委員会 -参議院インターネット審議中継
出典:11月11日参議院法務委員会 -参議院インターネット審議中継
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