※この記事は2014年10月31日にBLOGOSで公開されたものです

30日に行われた衆議院予算委員会で維新の党の木下智彦議員が質問に立った。木下議員は、主に「政治とカネ」をめぐる問題を取り上げたが、質疑時間の最後5分ほどをクールジャパン機構の投資先についての問題点を指摘した。木下議員の質疑の当該部分を書き起こしでお伝えするとともに、関連する情報をまとめて紹介する。

クールジャパン機構の15億円の出資先は適当なのか

木下智彦議員(以下、木下):あと5分ほどしかないので、最後もう一つ質問させていただきます。これも実は、今日ここにパネルを置いてお話ししようと思ったのですが、できないんです。理事会でハネられてしまいました。なぜハネられたかというと、あまりにもどぎつい表現がある写真を掲示しようとしたからなんです。

何かと言うとですね、経産省が進めているクールジャパン機構で、向こう3年間で15億円投資をしようとしている事業があります。それについて、私そこの会社のホームページを見てみたんです。すると、アメリカの市場に対して、オタク文化のフィギュアみたいなものを売っている。それ自体は、私は問題ではないと思っているのですが、少し、少しと言うか相当ドギツイ表現のあるような、そういった商品がたくさん売られていました。

私が、その写真のパネルを造ろうと思ったら、「ちょっとあまりにもひどいので」ということで見せられないという話になりました。おそらく、経産大臣も見られていると思うのですが、ああいった写真を見て、どう感じられたか、一言いただければと思います。

宮沢経産大臣:クールジャパンというのは、大変大事な重要な政策だと思っております。委員のおっしゃった写真は、これまで委員会でお配りになったものは拝見をいたしました。正直言って、あまり気持ちのいいものではなかったです。

木下:手元にあったんで、ちょっとこちらには見せられないんで、こういった写真なんです(※手元の資料を議場に見せながら)。こういったものが売られておりました。あまり見せると…。すいません。

実は私が経産委員会、内閣委員会で、この質問をさせていただいたら、その翌日に、そのサイトから削除されていたということなんです。私は別に削除を頼んだわけではないんです。というのは、そういうものも市場の中に出回っているのは、法律の範囲内であれば正しいと思っているので。そうではなくて、これをクールジャパン機構、政府が15億円も入れることがどうなのかと。そういう話をしたんですね。こっちの方が私は大きな問題だと。

文化については、どこまでがよくてどこまでが…というのは、なかなか線引きは難しいと思ってはいるんですが、これ何故削除したのかということをお聞かせ願いたい。それからどなたが削除されたのか。

経済産業省商務情報政策局長・富田健介氏:委員ご指摘の商品でございますが、先日来、国会等でもご議論をいただいております。私どもといたしましては、表現にかかわる事業というのは、表現の自由とのバランス。それから社会通念上許容される範囲であるということが基本的に重要だと思います。

そういう考え方の元で先般来のご議論を踏まえまして、クールジャパン機構に対して、「こういった商品については様々なご意見がある」ということを充分踏まえるよう申し伝えたところでございます。

こういったことを受けまして、クールジャパン機構と事業会社のTokyo Otaku Modeという会社でございますけれども、ここが具体的に今後こういった表現に関わる商品というものを、どう事業としてやっていくかということについてもガイドラインを社内できちっと整備をすると。それから審査体制も社内的に整備をするということで検討を進めているということでございまして。その上で、あくまでTokyo Otaku Modeの自主的な判断として、しばらくの間、こういった検討が進むまでの間、販売を一時停止をしようと。こういう風に考えているという報告を受けております。

木下:時間がもうなくなりましたので、もうとにかくですね、クールジャパン機構、800億円ぐらいの中の15億円を入れるという話なんです。国民の皆さん、これ見たら怒ると思うんですよ。もっと生活に密着したようなことにしっかりとお金を使っていただくようなことを考えなきゃいけないと私は思っているので。ここに何も出せなかった時点で、具体的な話が出来なかったんで、大変申し訳なかったですけれども、とにかくそういうことに、しっかりと目を見張らせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

クールジャパン機構の概略と木下議員の問題意識

クールジャパン機構は、政府が300億円、民間企業が85億円出資して2013年11月に設立された官民ファンド。経産省の資料によると、事業の内容は以下のように説明されている。
機構は、リスクマネーを供給することで、民間部門では成し得なかった、海外需要獲得の基盤となる拠点や流通網の整備などを率先して展開することとしており、機構に寄せられた投資案件(約100件)の精査・検討を行ってきた。

平成26年10月「クールジャパン機構について」(※PDF) - 経済産業省

木下議員は、以下のTweetのように30日の質問に立つ前からクールジャパンの投資先について問題意識を持っていたことがうかがえる。
木下議員が提示した写真は、「削除されている」とのことなので、Tokyo Otaku Modeのサイト内のどの部分か特定する事はできないが、サイトを見てみると、どのような部分が問題視されているのか、イメージをつかむ事はできそうだ。

木下議員は、15日に行われた内閣委員会でも、同趣旨の質問を行っている。サイト内の写真を示して、「女性視点からご意見を」と松島法務大臣(当時)と山谷えり子国家公安委員長に尋ねたところ、二人はそれぞれ以下のように答えている。

松島大臣(当時)

なんら法務大臣として法務省とつめたものではございませんが、これ所見にいたしまして、これ「児童ポルノ」とは言いがたい年齢かなとは思うのですが、いろんな欲情の誤った形の扇動になるというものは、言い逃れることはできないだろうと思っております。それを日本の企業が販売するとしたら、非常に残念であります。もちろん「表現の自由」ということはあるにしてもそう思っております。

同時に私自身、私の後援者の方たちから言われているのは、 「日本ほど、ビニ本といったり、あるいはビニ本にもなっていない週刊誌なんかで、あられもない恰好の女性がいっぱい写っているのがこれだけあると。観光立国、東京オリンピック・パラリンピックに向けて恥ずかしい。何とかしてくれ」という声を聞いているのも事実であります。

2014年10月15日 (水) 内閣委員会 - 衆議院インターネット審議中継より書き起こし

山谷えり子国家公安委員長

個人的な感想でありますが、女性の尊厳という視点から見て残念だと思います。

2014年10月15日 (水) 内閣委員会 - 衆議院インターネット審議中継より書き起こし

また、30日の予算委員会において、こうした資料の提出が認められなかったことについて、維新の党の政調会長の柿沢未途議員は、以下のように述べている。

■出典・関連リンク
・2014年10月15日 (水) 内閣委員会 - 衆議院インターネット審議中継
・2014年10月30日 (木) 予算委員会 - 衆議院インターネット審議
・平成26年10月「クールジャパン機構について」(PDF形式) - 経済産業省
・Tokyo Otaku Mode