※この記事は2014年10月03日にBLOGOSで公開されたものです

BLOGOSは、10月5日でオープンから5周年を迎えます。
初月は30人のブロガーの皆様と、300万ページビューでスタートしたBLOGOSも、おかげさまでこれまでにご参加いただいたブログ・メディアの数は950を超え、アクセス数も月間で約3500万ページビューを数えるまでになりました。
また、月間の来訪者数は約600万、そのうち8万人がコメント投稿が可能なログインユーザであり、1日平均で900件を超えるコメント投稿を頂戴しております。

開設5年にあたり

BLOGOSは、参加して頂いているブロガー、メディアの皆様、そして読者の皆様に支えられ、10月5日をもって開設から5年を迎えます。

2009年10月、当時廃刊が相次いでいた"論壇誌"をインターネット上に作りたいという思いから、それまでlivedoor ニュースに提供していただいていたブロガーの皆様のエントリを集約し直し、"オピニオン・提言が主体のニュースサイト"として開設しました。

インターネット上には、現実に起きている諸問題の当事者や専門家によって発信された無数のコンテンツがあるにも関わらず、その多くが人々の目にあまり触れられることのないままに埋もれてしまっているという、日々ニュースサイトを運営していての実感。また、そうしたコンテンツを欲している読者が大勢いるにも関わらず、探すこと自体が難しいという実情。BLOGOSの開設当初に私がお話させていただいていたのは、そんな"ボトルネックの解消"でした。

政治報道の領域で言えば、"紙幅の都合"や、一定のスタンスによる編集・カットのない、本人発のありのままの情報を提供することだけでも、価値があるのではないか。一部の関係者やマスメディアだけが一次情報に触れることができる、情報が非対称だった状況に何らかの問題があるのだとしたら、政治家の方々のブログを集約していくことだけでも、そうした現状を変えるきっかけになるのではないかと考えました。

インターネットのニュースサイトは24時間、365日が基本ですし、日刊、週刊、月刊というように、常に動きを続ける世界をうまくパッケージしていくことは難しく、かえって読者の理解を困難にしてしまう側面もあるのですが、ともかくも、私たちは5年間、失敗や誤りを繰り返しながらも、なんとか、"今日、読んでおきたいエントリ"をお届けできるよう、運営を続けてきました。

おかげさまで開設以来、多くの方に読んでいただけるようになりましたし、幸いにも取材などを受け入れて頂きやすくなったという実感を持っています。私自身は、livedoor ニュースを担当させていただいた時代も合わせると約9年、ニュースサイトの運営に携わってきて、あらためて成長し続けることだけでなく、継続させる事自体の難しさ、重要さを感じています。



さて、ソーシャルメディアの普及は、情報の量や、それらの"流通のさせやすさ"を増幅させた一方で、自らにとって興味・関心のあるもの、心地いいものはより見えやすく、自らの興味・関心から遠いもの、見たくないものを見えにくくしていると感じます。

「泣けた」とか「笑えた」ではなく、本当の意味で知らなかったこと、"どうにかしなければいけない"と思うこと。人にも伝えたいと思うこと。意図して自らのタイムラインを飛び出して、他のメディアに触れ続ける努力をしなければ、そうしたコンテンツに“偶然に”出会える機会は、ますます少なくなっていると言っていいのではないかと思います。
私たちBLOGOSが主に扱う政治・経済、社会問題の分野においては、多様な見方や反対の意見に触れることが難しくなってきていると思います。

自らの考えを補強することはますます手軽になっていると言えるでしょう。それはともすると、自らの考えを相対化する機会を失うばかりか、閉ざされたインナーサークルの中で優等生的な意見を発信することへの圧力を高め、自然、異論・反論に触れることを避ける、排除する方向につながると言えないでしょうか。これはネット以外のメディアも同様かもしれませんが、この5年間、ネット上ではこうした傾向は更に強まっているように感じます。

それは、多様な情報を発信し続ける責任を負う(と私は考えます)メディア自身がどうあるべきか、という問題においてもそうだと感じています。
新たなサービスやプラットフォームが出るたびに、いわゆる"業界"では"メディアの未来"についてさかんな議論が交わされます。それらの大半は言葉の定義=そもそもメディアとはなにかといったメタ的な議論、そしてそれらがどうすれば成功できるのか、といった方法論、技術的な議論であり、ビジネス的な観点からの、"中の人"のための議論でありました。

もちろんそれらを疎かにしていては事業の継続も覚束かないわけですから、こうした議論はとても大事です。私たちも、考えないわけではありません。

他方、ではそのメディアを通して何を伝えて行きたいのか、何が伝わったのかという、"読者"のための議論はどうだったかと言えば、極めて少なかったように思います。私達自身も、ネットを離れ、多くの方の意見やメディアに触れ、現場に足を運び、多くの方の話に耳を傾ける努力していますが、反省点は多いにあると思います。誤った情報を拡散させてしまったこともあります。

また、インターネット専業のメディアは未だ取材等に参入できない領域もあり、それについては働きかけや、私たち自身の信頼性向上にも取り組まなければなりません。



"メディアの未来"ということを書きましたが、もう一度BLOGOSが主に扱っている政治の分野で考えてみますと、それを語ることは、"読者の未来"や"政治の未来"とも言えると思います。政治とメディア、有権者と視聴者・閲覧者は、まさに合わせ鏡ではないでしょうか。

少し変な言い方ですが、メディアは、開設され、誰かが担当者になった時点でメディアになるのではなく、努力し続けることでメディアになる(する)、そこにこそ価値があるのではないかと思います。その意味では、メディアに"完成"というものもなく、すでに知名度や読者の信頼があっても、何かに固執したり、動きを止めてしまってはいけないのだと思います。

メディアが"発信し続けること"同様、民主主義における政治もまた、選挙期間だけが政治なのではなく、それ以外の期間こそが政治なのであり、みなが常に考え、議論を続け、ベターな着地点を見つけていくというプロセスの繰り返しこそが、その本質なのだと思いますし、それは解禁された"ネット選挙"が静かに、けれども着実に浸透していくことによって、今後明らかになっていくように感じています。

そのために私たちのようなサイトが取るべきベストな在り方は、やはり開設当初からのポリシーでもある、あくまでも"両論併記"をできうるかぎり目指し、考え、議論するための材料を提供していくことだと思います。
現在、極めて曖昧、あるい先鋭化している右/左、保守/革新、リベラル、といった立ち位置や、批判のための批判、議論のための議論にとらわれることなく、多様な意見に触れられることを何より大切にすることだと思います。読者の趣味嗜好に合ったものだけを提供することではないと考えます。

一人でも多くの読者の方々に"オピニオン・リーダー"となっていただき、BLOGOS上、ネット上で、またそれ以外で対話し、議論をしつづけていただくきっかけであり続けることだと思います。
そのために必要なのが、ブロガー・各メディアの方々からBLOGOSに寄せられた貴重な記事の一本一本です。

ですから、決して綺麗ごとばかりが並ぶサイトでもなく、決して"売れ筋"なサイトではないかもしれません。流行という観点から見れば、ずいぶん古風なことをしているサイトにも見えるかもしれません。
しかし、サイト上に掲出させていただいているキャッチコピーの「意見をつなぐ、日本を変える」とはそういうことであり、それが私たちがBLOGOSというメディアを通じて実現していきたいことです。開設から5年が経ち、今、ますますその思いを強くしています。



ここまで、理想を縷々述べてしまいましたが、まだまだ私たち編集部は至らないところばかりです。もちろん、一次情報と二次情報の境界、ブログとマスメディアの記事の境界が次第に曖昧になってきていますし、スマートフォンでの読者の方も増えております。そうした、記事の届け方の課題にも応えてまいりたいと思っています。
今後ともBLOGOSに対し、読者、ブロガーやメディアの皆様のご叱正をたまわりますよう、よろしくお願いいたします。

2014年10月3日
編集長 大谷広太、編集部員一同


ライブドアがブログメディア『BLOGOS(ブロゴス)』をオープン - サイト立ち上げ時のプレスリリース

5年間を振り返る記事を配信

今回、ひとつの大きな区切りとして、これまでの5年間を世の中の動きと、サイト上で話題となった記事とを併せて振り返る記事「BLOGOSで振り返る日本の政治・社会」として配信していきたいと思います。

■関連記事
・2009年下半期、民主党・鳩山由紀夫政権の誕生