道の駅が負うべき役割 - 赤木智弘
※この記事は2014年09月27日にBLOGOSで公開されたものです
滋賀県の道の駅で、食べられるヒラタケと毒キノコであるツキヨタケが間違えて販売され、被害者が出ている問題。(*1)厚労省のデータによると、ツキヨタケの毒性は致命的なものではなく、下痢や腹痛、幻覚けいれんなどが、数日続くようである。(*2)
道の駅は、競争も激しいようではあるが、地方が自分たちの土地の特産物や食品などを扱う場として市民権を得ている。近頃では、車で通り掛かる観光客だけではなく、地元客なども盛んに利用しているようだ。
お目当ては、そこで売られている新鮮な野菜や魚などの食品である。全国から商品が集まるスーパーなどと違い、地元の農家などが作っているということで「顔が見える安心感」が受けているのだろう。
しかし、本当に顔が見える食品だから「安全で安心」なのだろうか?
スーパーなどに行くと、よく「どこそこの◯◯さんが作った安全安心お野菜」みたいなのが売られていて、生産者のおっちゃんおばちゃんがニッコリと微笑んでいる。
しかし、生産者の写真が貼ってあれば安全安心なのだろうか?
たしかに生産者をはっきりさせることが、トレーサビリティという点で安全につながるとは言える。しかし、スーパーで売られているそれらの商品が安全である根拠は、決して農家のおっちゃんの顔写真ではない。
生産段階では、その写真のおっちゃんが長年培った技術が安全を保証する。流通段階では農協や出荷組合などが、生産物の安全を保証する。そこからスーパーや卸売市場そして近所の八百屋が商品を扱って安全を保証する。
このように、私たちが口にする食品の多くは、何重もの多くの人や機械の目を通してはじめて安全性が保証されているのである。
今回道の駅で毒キノコが売られるという事故が起きてしまったのは、人の目が少ないからであろう。
道の駅では生産者が直接商品を持ち込む形態であることが多いようだ。道の駅を紹介するテレビなどで、なんどか生産者自ら商品を並べているシーンを目にしたことがある。道の駅での検品等はされていないに違いない。
つまり、道の駅で売られている商品は、生産者とそれを販売する道の駅店員しか目にしない可能性があるということだ。
今回の事件以前にも、青森県の道の駅で、スイセンをニラとして販売。女性二人が食中毒になるという事故があった。(*3)
これも今回と同じく「生産者と販売が近い道の駅だからこそ、人の目というリスクヘッジが足りていない事例」と言えよう。
今回の問題に対して「生産者がしっかりしろ」と言うのは簡単だ。しかし、どうしても人はミスをするものである。今回の生産者だって、お客に毒キノコを食べさせようとしたのではなく、美味しいヒラタケを食べてもらいたかったのだろう。それでもミスは発生してしまった。
そうしたミスを極力無くすためには、道の駅は単に販売の場を用意するだけではなく、道の駅側がコストを払って、生産者とともに市場流通品に負けないような十分なリスクヘッジを行える体制を整える必要があるのではないだろうか。
*1:高島・道の駅毒キノコ、被害者14人に増 滋賀県が販売停止命令(京都新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140922-00000025-kyt-l25
*2:自然毒のリスクプロファイル:キノコ:ツキヨタケ(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/kinoko_06.html
*3:自然毒のリスクプロファイル:高等植物:スイセン(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/higher_det_09.html