家事をしようと言っても、時間が足りない - 赤木智弘
※この記事は2014年08月09日にBLOGOSで公開されたものです
国立社会保障人口問題研究所の調べによると、2013年に夫婦での夫の家事負担の割合は、全体を100とした時に、14.9%であるという結果が出たという。(*1)この数字は過去最高ではあるが、いまだに夫の家事負担割合は少ないようだ。
まぁこんなものだろうとは思う。
そもそも、夫婦として成立する場合は、大抵の場合が男が家族を養える程の収入を得ている場合が多く、仕事の負担であれば逆に女性の負担が14.9%くらいだという数値が出るに違いない。なので、問題は負担が平等か否かというよりは、男性側が収入の得られる仕事に就いている場合にしか結婚関係が結ばれていないということである。
育児や教育に詳しい、ジャーナリストのおおたとしまさ氏が「イタメンの3大勘違い【お風呂編】」というコラムを掲載している。(*2)
これによれば、夫の育児というのは、どうしても妻に前後の細かなことをさせた上で、中の一部分だけをお膳立てさせてもらっているような状況になってしまうらしい。
僕は一人暮らしなので家事負担割合は当然100%なのだが、家事で最も大変なのは仕事の真ん中ではない。それよりも準備や後始末の方こそ、とても大変な疲れる部分なのだ。それこそ料理だったら、買い物と調理の後始末こそ、もっとも重大な大仕事であり、これを担うか担わないかで、家事の辛さは大きく変化する。
本題の夫の家事負担割合、14.9%という数字も、そうした一番大変な部分を担っていない数字なのであろう。これでは妻の不満が強いのも当然といえよう。
けれども、では夫はもっと家事をするべきだ、夫は家事をサボっているのだと、単純に考えてしまってもいいのだろうか?
先に書いたように、夫の主な仕事は「働いて給料を稼ぐこと」である。そして、仮に仕事の時間が9時から17時という、大変恵まれた環境であるとして、通勤時間に片道1時間を設定すれば、帰ってくるのが19時。もちろん、残業などを含めれば、もっと早く家を出て、遅く帰ってくることが大半だろう。
そうした働き方をしている夫が、買い物をして、料理などを作り、後片付けをしていれば、とても24時間では足りない。
つまり、夫の家事労働は、どうしても正規労働者であるが故の長時間労働と、都心の住居の高さによる通勤時間という理由で削られてしまう。そうした労働形態が当たり前であるかぎり、夫の家事負担割合が増えるには限界があるということだ。
イクメンという言葉を流通させることはすごく簡単だ。
政府で広報をうち、雑誌はイクメンブームなどを煽ることで、すぐに流通していく。
しかし、実質的に夫が家事を担うためには、とてもではないが時間が足りないのだ。 イクメンブームを煽るだけなら、ちゃんと労働の時短や公平な再分配など、ひとりひとりの労働に関わる時間を減らす事ができるような政策や提言を、政府はもちろん、マスメディアも積極的に行って欲しい。
でも、今の日本では、正社員の負担を非正規に押し付けるだけの提言しか、出てこないだろうなぁ……
*1:夫の家事負担割合 過去最高も…14.9%(日本テレビ系(NNN))
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20140808-00000075-nnn-soci
*2:イタメンの3大勘違い【お風呂編】(All About)
http://allabout.co.jp/gm/gc/445686/