【新聞チェック】海江田大臣の「原発再稼動要請」に自治体の意見分かれる 今夏のカギは福井と佐賀 - BLOGOS編集部
※この記事は2011年06月19日にBLOGOSで公開されたものです
朝日新聞は１６日の朝刊で全国47都道府県の知事に対し、「原発を将来どうするか？」と尋ねたアンケートを行っていたが、ここからさらに動きがあった。海江田万里経済産業相は、原子力安全・保安院が１５・１６日に行った各原発への立ち入り検査の結果について「水素爆発などへの措置は適切に実施されている」という評価を１８日に公表。これを基に、現在定期点検により運転停止中の原発は再稼動が可能との見方を示した。
これを受け、原発のある道県の知事からは批判が噴出。テレビや新聞では橋下徹大阪府知事の「時期尚早。経産相や経産省のみなさんが原発周辺に住めばよい」という発言が何度も取り上げられた。
しかし、必ずしも批判ばかりではなく、反応は原発のある自治体の中でも分かれている。
原発の運転に関して知事に法的な権限は無いものの、電力会社と道県などの協定もあり、知事の同意無しの稼働は困難とみられているため、近く各知事を訪問する方針とされる経産相にとっては厳しい現実が待ち受けることとなることが必至。
それに伴って、１９日朝刊の日本経済新聞では３面で「原発再開 地元要望に配慮」という見出しで経産相の原発再開要請に対する各自治体の反応をまとめている。今回はそこで紹介されている各自治体のコメントと、前回の朝日新聞社アンケートとの変化を調べ、原発のある自治体の今後の原発政策に対するヒントを探ることとした。（BLOGOS編集部・野村）
青森県・三村申吾知事
１６日・朝日新聞青森県知事は「国として」という言葉から「県の専門家委員会」と変化があり、政府の発信するデータをそのまま鵜呑みにするのみならず、７日に設立された青森県独自の「原子力安全対策検証委員会」からの検証を重要視するという踏み込んだ発言となった。
「国としてしっかりとしたエネルギー政策を示すべきだ」
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１９日・日経新聞
「県の専門家委員会の検証を踏まえ慎重かつ厳しく対処する」
しかし課題は結局、県委員会が検証に用いるデータも、基本的には国と同じとなってしまう点にある。
福井県
１６日・朝日新聞１８日午前には大阪府の橋下知事が、「（関西電力から）福井県に原発の再開をお願いしてほしいとの要請を受けていた」と明かしており、関電と福井県との交渉は相当に難航しているものと思われる。
西川一誠知事「原子力に過度に依存することがないよう、エネルギーの多角化を推進することは重要」
↓
１９日・日経新聞
原子力安全対策課「特段新しい内容はなく（再稼動を認めない）方針に変わりはない」
今回の日経記事でも、新たな情報なしで経産相から「再稼動可能」と言われたくらいでは、国内最多となる13基もの商業用原発が立地する福井県は厳しい姿勢を崩さない。
政府は企業の西日本シフトを促していたが、福井県の意向次第ではそれは解決策とはならなくなる。
経産相も直接説明に向かうものと思われるが、これらのコメントを見るに、そう簡単には再稼動を容認するはずはないだろう。後述する予算を含めた交渉が行われ、それは相応に難航するものと思われる。
福井県では今夏までに計４基の原発の再稼動（既に再稼動可能な原発２基と７、８月に１基ずつが再稼動可能）が議題に上っている。
新潟県・泉田裕彦知事
１６日・朝日新聞新潟県知事は今回の発表を「論評に値しない」と酷評。
「福島の事故の検証結果を見極めて対応を検討する」
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１９日・日経新聞
「事故原因の検証もないまま安全性確認と発表した。論評に値しない。」
事故後の検証が揃わないと、判断を下せないとの立場だ。
佐賀県・古川康知事
１７日・毎日新聞運転再開に慎重だった佐賀県の古川知事は１７日の県議会一般質問で、初めて再稼動に前向きな姿勢を見せて以来、再稼動に比較的柔軟な姿勢とみられ、今回の経産相発言も国としての再稼動の意思表示が行われたものと受け止めている。
「中部電力浜岡原発の停止要請問題を除けば、国の説明は一定程度理解できる」
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１９日・日経新聞
「再稼動への国へとしての意思を明確に示したものと受け止めている」
「（玄海原発の再稼動は）県議会の議論も踏まえて判断したい」
佐賀県では玄海原発２基の再稼動が焦点となっているが、玄海町の岸本英雄町長は「（再稼動について）浜岡と玄海の違いについて国の説明を受けてから判断したい」とコメント。
九州地方の夏の電力を左右する九州電力玄海原発。県と町の判断は近々行われるであろう、海江田経産相などとの再稼動交渉に委ねられる格好だ。
再稼動のカギに「避難道整備予算」
こうした現状を踏まえ、海江田経産相は必要に応じて原発立地地域を訪問する意向だが、安全性という焦点とは別に、この交渉では「避難道の整備など予算措置を伴う追加要望にも応える方針」と日経新聞は伝えている。
毎日新聞でも高浜原発の１号機が停止中である福井県高浜町の野瀬豊町長は「立地市町として国に求めている原発の新しい安全基準や避難道の整備などについて、何らかの答えをもらえるなら意味があるが、ただ『動かしてほしい』だけでは難しい」とコメントしているところからもそれがうかがえる。
今夏に再稼動予定の原発としては、他にも愛媛県の四国電力伊方３号基などがあるが、こちらも県知事の意向は白紙。
各自治体と経産相との再稼動交渉では、データだけでなく、交付金や予算などもその焦点となる。
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