NEW YORK, NEW YORK - NOVEMBER 06: (R-L) Justin Gaethje punches Michael Chandler in their lightweight bout during the UFC 268 event at Madison Square Garden on November 06, 2021 in New York City. (Photo by Mike Stobe/Getty Images)

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(写真左より)シャールズ・オリヴェイラ、ジャスティン・ゲイジー、ローズ・ナマユナス、カーラ・エスパルザ/Getty Images

 日本時間の5月8日(日)、アメリカ・アリゾナ州フェニックスのフットプリント・センターで『UFC274』が行われる。

 メインイベントは、ライト級王者シャールズ・オリヴェイラが、ジャスティン・ゲイジーを迎えうつ2度目の王座防衛戦。さらに女子ストロー級王者ローズ・ナマユナスが、2014年12月に敗れている初代女子ストロー級王者カーラ・エスパルザを相手に2度目の王座防衛戦を行う。

 この2試合の見どころを「世界のTK」郄阪剛に語ってもらった。

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シャールズ・オリヴェイラ/Getty Images


--『UFC274』のメインイベントは、UFC最激戦区といってもいいライト級のタイトルマッチ、オリヴェイラvsゲイジーが組まれました。これは楽しみな一戦ですね。
「これはもう間違いなく盛り上がるでしょうね」

――王者オリヴェイラはUFCの最多フィニッシュ勝利(18勝)、最多一本勝ち(15勝)、最多パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト(12回)を記録していて、挑戦者ゲイジーもファイト・オブ・ザ・ナイト6度獲得の名勝負男ですからね。
「ただ、これはとくにオリヴェイラに言えることなんですけど、なぜ毎回試合が盛り上がるかというと、相手の攻撃をもらってしまうことがけっこうあるんですよね。たとえば、前回のダスティン・ポワリエ戦にしてもその前のマイケル・チャンドラー戦にしても、効かされるシーンがあって」

――チャンドラー戦ではダウンを奪われTKO寸前まで追い込まれながらの逆転勝ちでしたね。攻撃をもらってしまうからこそ、はからずも“激闘”になってしまう、と。
「以前のオリヴェイラは寝技にすごく自信があるがゆえに、寝技になったときに力を使いすぎて、しのがれてスタンドに戻ったときにガス欠状態で被弾して負けることもあったんです。その後、打撃を磨いてスタンドに重きを置くようになったので、打撃の鍔迫り合いをすることでどうしても被弾するので、殴り合いの激闘になっているのかなと。だからある意味、そこの部分に関してはちょっと危なっかしいというか、付け入る部分を残しつつ頂点に立ったチャンピオンですね」

--でも、付け入る隙がありそうなのに、UFC最激戦区のライト級でトップランカーに勝ち続けて現在10連勝中なんですよね。
「オリヴェイラの面白いところは、そこなんですよ。オリヴェイラと対戦した選手は、この前のポワリエもそうですけど、試合中“いける!”と思う瞬間が、必ずと言っていいほどあるんじゃないかと思うんですよ。ただ、“いける!”と思って攻めたとき、逆にその隙を突かれて、結果的にサブミッションを極められたり、KOされたりしている」

――相手が“チャンスだ!”と思って向かってきてくれたときこそ、じつはオリヴェイラにとってのチャンスになっていると。
「そういうことが起こってるんじゃないかと思うんですよね。相手がチャンスだと思って前に出たところにカウンター入れられたり、グラウンドで首とられたりね。だからオリヴェイラの“付け入る隙”が、じつは罠だったり落とし穴になっているんですよ」

――なるほど。では、ゲイジーは必ず打撃でフィニッシュを狙ってくる選手ですから、ポワリエやチャンドラー同様、その罠にハメやすいタイプかもしれないですね。
「だからこそゲイジーは、ポワリエやチャンドラーと同じ轍を踏まないための戦い方が問われてくると思うんですね。ゲイジーはオリヴェイラより10センチほどリーチが短いので、至近距離で打撃が交錯するような展開を望むと思う。ただ、仮にゲイジーがオリヴェイラを打撃で効かせていたところで、その次の手をどうするのかが悩みどころかもしれないですね。
たとえば打撃で効かせてフラッシュダウンさせたとして、そこからオリヴェイラ相手に寝技で勝負するのかどうか。オリヴェイラは下からの極めがものすごく強いので、上になってパウンドを落とすのも危険ですからね。だからその展開になったとき、はたしてゲイジーがどうするのか自分も興味がありますね」

――実際、前回対戦したポワリエは、グラウンドで上になりながらパウンドにいったところでスイープされて逆転されていますしね。
「ゲイジーが勝つためには、まずパンチで効かせなきゃいけないというのが絶対にあると思うんですよ。カーフキックなど足技もやりますけど、オリヴェイラも足が利くタイプだから、なかなか通用しないことが考えられる。では、どうするかを考えた時、ひとつイメージできるのはクリンチした状態でのパンチとか、至近距離からのアッパー。これは強烈で、しかもわかりづらい打ち方をするので、ひとつの武器になるんじゃないかなと思うんですよ。抱えた状態で、完全に効くまでパンチを連打すると」

ジャスティン・ゲイジー/Getty Images

――先日、他団体で秋山成勲選手が青木真也選手にやったクリンチアッパーみたいな形ですね。
「ああいうのが有効だと思うんですけど、ただクリンチで抱えているということは、その抱えた腕をオリヴェイラが取りにくることも考えられる。飛びつき三角締めや飛びつき腕十字固めという技も得意ですからね。そういうことを考えると、ゲイジーはどう戦うのかなと。すごく興味がわきますよ」

--ゲイジー陣営がどうやってこの難問を攻略しようとしているのか、と。
「判定勝ちを頭に入れてるとしたら、フラッシュダウンさせても深追いせずに離れて、ラウンドを確実に取っていくのを繰り返すというのも手ですけど、ゲイジーはおそらくそれを望まないと思うんですよね」

--やりすぎなくらい倒し切ることが信条のファイターですからね。
「そうすると倒し切るためにはどうしたらいいのか。オリヴェイラは、隙があるように見えて、罠や落とし穴が張り巡らされた不思議な強さを持ったチャンピオンなので、ゲイジーがその攻略法を見つけることができるかどうかがポイントだと思いますね」

ローズ・ナマユナス/Getty Images


――続いてセミ・メインイベントは、ナマユナスvsエスパルザの女子ストロー級タイトルマッチ。ストロー級も女子最激戦区と言っていいかと思いますが、王者ナマユナスはライバルのジャン・ウェイリー、ヨアナ・イェンジェイチックを2回ずつ倒して、頭ひとつ抜けた存在になりつつありますね。
「そうですね。安定してきた感がありますね」

--ナマユナスの快進撃の要因はどう見ていますか?
「ナマユナスもオリヴェイラと同じく、もともと組みが強いグラップラーだった選手が、打撃を磨いたタイプですよね。相手からすると当然、組技を警戒しなければならないのに、打撃レベルがかなり高いというのが、やりづらくしている要因だと思います。
その打撃自体、自分からプレッシャーをかけていくんですよね。相手からすると、そのプレッシャーをかわすためには、そこにタックルを合わせたり組みついたりという選択肢が当然あると思うんですよ。でも“組んだらナマユナスは寝技が強いしな”という思いがあるから、そこで相手に迷いが生じるわけですね。
 たとえばジャン・ウェイリーなんかは、スタンドでプレッシャーをかけられて、タックルやローキックを警戒して意識が下に向いたところでハイキックを入れられたり。イェンジェイチックもそれで顔面に連打をもらってますよね」

――だからこそ、ウェイリー、イェンジェイチックというトップストライカーが、本来グラップラーだったナマユナスにKOされたわけですね。ただ、今回の挑戦者エスパルザは完全にレスラーです。
「がんがんタックルに入ってくるタイプですよね。だから今回、エスパルザ側からするとタックルが取れる距離を早く見つけることと、その設定ができる状況を作ることが大事だと思うんですよ。そのためには相手を不用意に出てこさせるとか、自分からプレッシャーをかけて足を止めさせるとか、ケージ際まで追い込んだりする必要が出てきますけど、それをナマユナス相手にできるかどうかですね」

――エスパルザは、ナマユナスのグラップリングを怖がらない相手でもあります。
「なぜ極めが強い相手に対してもタックルにいけるかというと、エスパルザは倒してトップポジションを取ったとき、へたに寝技をやらないんですよね。トップキープに専念して、そこから極めにいったり、へたしたらパスガードも狙わずに、そこからパウンドとヒジを落としていく。そのパウンドとヒジが強いし、要は漬けるだけなので隙が生まれにくいんですよ」

カーラ・エスパルザ/Getty Images

――そうして確実にラウンドを取りにいくと。
「そういうシンプルな試合運びをするので、おそらくナマユナス相手にもタックルを仕掛けていくと思うんですけど。要はそのタックルが成功するかどうかですね。逆に言うとテイクダウンを奪えなかったら、厳しい展開を強いられると思います。
 また、テイクダウンが取れたとしても、エスパルザはトップキープをしようとして立たれた時、けっこう消耗していることが多いんですよね。ナマユナスは寝技から立つ動きとか、下からサブミッションを仕掛けながらスタンドに戻す技術をいろいろ持っているので、しっかりとトップキープしてドミネートできるかですね」

――ナマユナスにとってエスパルザは、UFCデビュー戦である初代ストロー級王者決定戦で敗れた相手ですから、成長ぶりを証明したいところです。
「だからエスパルザ相手だからこそ見られる、ナマユナスの技術の幅の広さみたいなものが見られるかもしれないし、自分はそこに期待していますね」

(聞き手・文/堀江ガンツ)

◆◆◆WOWOW『UFC -究極格闘技-』放送・配信スケジュール◆◆◆
『生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC274 in アリゾナ ライト級オリヴェイラVSゲイジー、女子ストロー級ナマユナス防衛戦!』

5/8(日)午前11:00[WOWOWライブ]※生中継
(WOWOWオンデマンドで同時配信)

5/13(金)午後4:00[WOWOWライブ]※リピート
(WOWOWオンデマンドで同時配信)

【対戦カード】
ライト級タイトルマッチ/シャールズ・オリヴェイラ vs ジャスティン・ゲイジー
女子ストロー級タイトルマッチ/ローズ・ナマユナス vs カーラ・エスパルザ
ライト級/マイケル・チャンドラー vs トニー・ファーガソン
ライトヘビー級/マウリシオ・ショーグン vs オヴィンス・サン・プルー
ライト級/ドナルド・セローニ vs ジョー・ローザン

【収録日・収録場所】
2022年5月7日〈現地〉/アメリカ・アリゾナ州フェニックス フットプリント・センター

【出演】
解説:郄坂剛、堀江ガンツ
実況:高柳謙一
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