【ランニングシューズおすすめの選び方!】マラソンや長距離でも疲れにくく長く走れるシューズ選びのポイントは?
ランニングブームのなかで、フルマラソンをはじめ、より長い距離を走りたいというランナーも増えています。
そこで重要になるのが、ランニングシューズの選び方。ずっと走っても疲れにくく、長く快適に走り続けるには、長距離向きのシューズ選びがポイントになります。
そこで話を聞いたのが、シューフィッターである藤原商会の代表・藤原岳久さん。より長い距離を走りたいランナーへ、おすすめのランニングシューズの選び方を聞きました。
また、デサントからも「より長く、より楽しく」をコンセプトにしたランニングシューズ「ENERZITE MAX」が登場。こちらの印象も併せて尋ねていきます。
長距離ランニングシューズおすすめの選び方①「クッション性」
――フルマラソンや長い距離を走りたいランナーにとって、おすすめのランニングシューズの選び方はあるのでしょうか?重視すべきシューズの機能などがあれば教えてください。
フルマラソンや長い距離を走るためのシューズ選びでまず大切なのは「クッション性」です。柔らかさと硬さが同居した、バランスの良いクッションを持つシューズが理想ですね。
多くのランナーの方は「クッションは柔らかいほど良い」と考えているかもしれません。しかしそれは誤解があります。
確かにクッションが柔らかいシューズは、走り心地が良いでしょう。しかし、柔らかい分、シューズ自体に安定感がなく、着地で揺れてしまいます。その結果、ランナーが自分で着地の安定感を出さなければなりません。
――それはなぜ問題なのでしょうか?
長距離ランで大切なのは、「ランナーの作業をなるべく減らすこと」です。
なぜなら、走っている最中にランナーの作業が増えると、長時間その作業を繰り返すなかで疲労やダメージ、膝や足首といった関節のケガにつながるからです。
ランナーが自分で安定感を出すということは、ランナーのやる作業を増やし、消耗につながります。だからこそ「クッションが柔らかいほど良い」というのは誤解なのです。
――そういった理由から「柔らかさと硬さのバランス」が重要になるということですね。
そうですね。クッションはある程度硬いほうが、シューズ自身が着地の安定感を生みます。ランナーの作業が減るので、長い距離には向くでしょう。
ただし、クッションが硬くなりすぎると、ランナーの走り心地は悪くなってきます。走り心地もランニングのパフォーマンスに大きく影響するもの。
だからこそ、柔らかさと硬さが同居した、バランスの良いクッションが大切と言えます。
長距離ランニングシューズおすすめの選び方②「ソールの形状」
――そのほか、長距離に向いたシューズ選びのポイントはありますか?
ソール(シューズ底面)の形状も大切です。長い距離を快適に走るという観点では、アウトソールが湾曲している、ローリング形状のシューズがおすすめですね。これも「ランナーの作業を減らすこと」に関係しています。
――なぜでしょうか?
ローリング形状のソールは、ランナーが足を前に出す作業を軽減してくれます。
足を下に落として接地した瞬間、ソールのローリング形状により、自然とそのエネルギーを前方へと方向転換してくれますから。
足が落ちるときに生まれた縦方向のエネルギーを、前方への推進エネルギーに変えてくれるのです。
ですから、ソールはまるでロッキングチェアのように、ゆらゆらと揺れるような湾曲した形が理想。これがローリング形状のメリットであり、近年のシューズの主流となっています。
ランニングシューズ選びの「よくある誤解」とは
――ちなみに、最初の話のなかで、長距離シューズの選び方における「誤解」に触れていただきました。ほかにも、藤原さんがランナーと話していて感じる、長距離シューズ選びの誤解はありますか?
一つ思い当たるのは、シューズの「重さ」に関する誤解です。長距離を走るうえでは「軽いシューズのほうが良い」と考えている方が多くいらっしゃいます。しかしこれは誤解でしょう。
先ほど話したように、現代のランニングは、上から下へと足を落とすエネルギーを、シューズの作用によって前方への推進力に変えるのが主流です。
だとすると、ある程度はシューズに重みがあったほうが、足が落ちる際のエネルギーも大きくなります。それがうまく前方への推進力に変われば、当然、メリットは大きくなりますよね。
――シューズの重みでエネルギーを大きくすると。
もちろんそのためには、正しいフォームで走り、うまくシューズのローリング形状を利用することが重要です。
自分で足を前に出すよりも、足を真下へ丁寧に落として、ソールの湾曲によって自然と足が前に出ていく走りができれば、むしろシューズは少し重いほうがメリットになるでしょう。
ランニングは「道具をいかにうまく使うか」のスポーツでもあります。道具とは、もちろんランニングシューズのこと。
これだけシューズが高機能化するなかでは、それをうまく使い、人間の作業を減らすことが長距離ランの鉄則。適切なシューズを選び、使いこなすことが重要なのです。
デサントの長距離ランニングシューズ「ENERZITE MAX」
――デサントからも、より長い距離を走りたいランナーに向けたシューズ「 ENERZITE MAX」が出ています。藤原さんにも履いていただきましたが、今お話しされたポイントに対して、このシューズはどんな印象でしたか?
とても良い感触でしたね。まずクッションについては、良いバランスだと感じました。柔らかさを感じつつ、がっしりした安定感もあります。
このシューズは、中足部の外側にプレート(TPUプレート)が入っていますよね。最初はこれがどんな影響を与えるか未知数でしたが、走ってみると、足の着地を整えてくれると感じましたね。
ランナーの着地にはクセがあり、かかとが大きく内側に倒れ込んだり、逆に外側にねじれたりするケースがあります。このプレートが外側にあることで、私の場合は、外側へのねじれを防止する役割にもなりました。
――ソールについても、先ほど話していたローリング形状になっています。こちらはどう感じましたか?
これも良いと思います。走ってみると、私は足を下に落とすだけで、シューズがその足を前に出す“ガイド”になってくれます。湾曲もしっかり付いていて、着地した後、足が自然と前に傾斜する感覚がありますね。
それだけエネルギーを前方に方向転換するので、走る距離を伸ばすには有効ではないでしょうか。
――「ENERZITE MAX」の特徴として、アッパー(前足の甲側)は、縫い目のない1枚のエンジニアードメッシュ素材を採用しています。ぜひこちらについても藤原さんの印象を伺えれば。
まず、何よりデザインとしてかっこいいと思います。機能性がありながらそれがデザインにも落ちているので、やはりデザインは機能美に尽きるなと思います。
走った印象では、前足部の不快感はなかったですね。
シューズ選びにおいて、前足部の構造は大切な部分です。なぜなら、前足部は着地のときに足幅が広がり、その後、足が宙に浮くと足幅が小さくなります。つまり、ラン中に繰り返しサイズが変化する部位なのです。
ですから、前足部を覆う素材はなるべく柔らかく、裸足に近い感覚が理想。ここに違和感があると、長い距離を走るほどその違和感は大きくなります。
ですから、前足部に気を遣った今回のシューズは良いと思います。
全ランナーに当てはまる、長距離シューズ「もうひとつの使い方」とは?
――藤原さんから見て、このシューズはどんなランナーにおすすめできますか?
やはり長い距離を走りたいランナー、ロンガー志向のランナーにおすすめだと思いますよ。「ランナーの作業をなるべく減らす」という部分がしっかり担保されているので。
ただ、こういったシューズを履くシーンは、長い距離を走るときだけとは限りません。むしろ、すべてのランナーに履くシーンがあると言えます。
――それはどういった意味でしょうか?
ランナーの作業をなるべく減らすシューズは、言い方を変えれば、それだけ身体の負荷を抑えて走れるシューズです。
ですから、例えば疲労回復したいけど、身体は動かしておきたいときなどに、こういった長距離シューズは有効なのです。
その意味で、負荷を減らしておきたい場面でこのシューズを使うのも良いのではないでしょうか。
藤原岳久
シューズフィッティングアドバイザー
藤原商会 代表。ナイキ、アシックス、ニューバランスなどで累計20年以上の販売経歴を持つ。その後、独立し現職。日本フットウェア技術協会理事、JAFTスポーツシューフィッターBasic/Adovance/Master講座講師も務める。