米スペースXのロケット「ファルコン9」(スペースXのホームページ)より=(聯合ニュース)

写真拡大

【ソウル聯合ニュース】韓国が独自開発した初の偵察衛星が2023年末ごろに打ち上げられる見通しだ。同年から25年にかけ、宇宙開発ベンチャーの米スペースXのロケット「ファルコン9」に搭載して計5基の順次打ち上げを計画していることが10日、防衛事業庁と軍の関係者の話で分かった。軍は、これらの偵察衛星が宇宙から北朝鮮のミサイル基地や核実験場など主要施設を監視する「目」の役割を果たすと期待する。

 軍は重量800キロ程度の大型の偵察衛星5基を確保する計画だ。国防科学研究所(ADD)を中心に17年後半から事業が本格化した。事業費は1兆2000億ウォン(約1200億円)超。

 5基は、電気光学(EO)センサー、赤外線(IR)センサーを搭載する衛星と、電波の反射を利用して観測する合成開口レーダー(SAR)衛星からなる。EO、IR型の衛星は大部分、韓国の独自技術を用いて開発中だ。SAR衛星は海外と技術協力をしている。

 偵察衛星は敵の挑発行為の兆候をリアルタイムで正確に監視・探知することができる。5基が配置されれば、韓国軍は2時間ごとに北朝鮮の主要施設の情報収集が可能になる。現在は独自の偵察衛星を持たないため、北朝鮮に関する衛星情報の8割以上を米国をはじめとする海外に頼っている。

 偵察衛星の開発と打ち上げは、米軍主導の韓米連合軍が持つ有事作戦統制権の韓国軍への移管に備え、韓国軍の監視・偵察能力の強化を支える重要な事業と位置付けられる。

 北朝鮮のミサイル発射の兆候を探知して先制攻撃する「キルチェーン」でも中核的な役割を担う。尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期政権は李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)の両保守政権で推進された北朝鮮の核・ミサイル脅威に対抗する防衛・反撃システム「3軸体系」を再構築する方針を示している。3軸体系はキルチェーン、発射されたミサイルを迎撃する韓国型ミサイル防衛体系(KAMD)、北朝鮮から攻撃された場合に指導部などに報復攻撃を行う大量反撃報復(KMPR)を指す。この先、偵察衛星に加え、早期警戒衛星も運用する可能性がある。

 今回の偵察衛星は衛星の開発から打ち上げ契約までADDが主導する初の衛星事業であり、韓国軍の宇宙領域での活動が飛躍する足掛かりになると評価されている。