板橋区は、池袋などへの良好な都心アクセスに加え、武蔵野台地の面影と石神井川や荒川の河川などの自然が広がる、水と緑に囲まれた場所。中山道や川越街道の宿場町として街道文化が育まれた歴史もあります。現代は、幹線道路や高速道路が整備され、都内有数の産業集積地としても発展。にぎわいある商店街も点在し、再開発の動きも出ており住宅地としても注目されています。今回は、にぎわいのある商店街が魅力の板橋区の住宅事情と筆者おすすめの街を紹介します。

武蔵野台地の豊かな自然 歴史ある街道沿いに街が形成

板橋区は、武蔵野台地の北東端付近に位置する東京23区で9番目の広さの行政区です。総面積は32.22平方キロメートルで約4分の3が武蔵野台地上にあり、武蔵野台地と荒川が流れる低地との崖線上には、豊かな樹林が形成されています。

また、中山道の1番目の宿場である板橋宿と、川越街道の上板橋宿は、物資・人・文化が集まる場所として江戸時代の頃から繁栄していました。都営三田線の志村坂上駅には、徳川家康が街道整備のためにつくらせた一里塚である志村一里塚が今も保存されています。

板橋区内には、川越街道や中山道のほか、環状7号線や首都高速5号池袋線などの幹線道路が設けられ、道路交通網が充実。さらに、東京メトロ有楽町線、東武東上線、都営三田線、JR埼京線といった電車網が整備され、都心や郊外への電車アクセスも良好です。

川越街道沿いの街並み(画像素材:PIXTA)

こうした交通利便性の高さは、板橋区の在住者にも高く評価されており、「令和3年度板橋区区民意識意向調査」によれば、「今後も区内に住み続けたい」と回答した人のうち理由として「通勤・通学や暮らしに便利な道路・交通網があるため」を挙げる人がトップの39.1%となっています。

また、商店街が多く買い物に便利なところも板橋区が評価されているポイントです。前出の調査によれば、「今後も区内に住み続けたい」理由として「消費生活が便利(買い物の便が良い・物価が安い)なため」を挙げた人が3位(32.4%)となっています。区内には、東武東上線大山駅前に広がる「ハッピーロード大山商店街」や東武東上線下赤塚駅前の赤塚一番通り商店街など、昭和の面影を残す人情味あふれる商店街が点在します。また、イオン板橋ショッピングセンター(東武練馬駅)や志村ショッピングセンター(志村三丁目駅)などの商業施設がある街も。池袋方面へのアクセスが良い点も魅力です。

板谷公園周辺の街並み(筆者撮影)

また、東京都立城北中央公園や板橋区立加賀二丁目公園、東京都立浮間公園など緑豊かで子どもが遊べる公園も点在します。区内を流れる石神井川沿いの桜並木は、人気の花見スポットにもなっています。通勤利便性に加え、買い物施設の充実や豊かな自然が身近にあることは板橋区で暮らす魅力と言えるでしょう。

浮間公園(画像素材:PIXTA)

こうした魅力ある板橋区ですが、東京23区内で比較すると住宅は手が届きやすい価格です。令和3年地価公示によれば、板橋区の住宅地の1平方メートル当たりの平均価格は42万9,600円。これは、東京23区内では5番目の低さです。地域によっては、新築戸建てが4,000万円前後から供給されており、一般的なファミリー層でも住宅購入を十分検討できる街と言えるでしょう。

【板橋区のデータ】
 区制施行日…1932年10月1日
 総面積…32.22平方キロメートル
 人口…56万6,654(2022年2月1日現在)
 世帯数…31万6,210(2022年2月1日現在)

東京メトロ有楽町線、東武東上線、都営三田線 沿線により街の雰囲気は多彩

板橋区の街の雰囲気は、沿線によって異なります。練馬区に近い東京メトロ有楽町線沿線は、小竹向原駅周辺などでは区画の広い落ち着いた住宅街が広がります。一方で、東武東上線は川越街道が近くを通っていることもあり、にぎわいがある街が目立ちます。落ち着いた暮らしを求めるのなら東京メトロ有楽町線、にぎわいある暮らしを選ぶなら東武東上線がおすすめです。また、都営三田線は、大規模なベッドタウンである高島平団地と都心を結ぶ沿線です。沿線の多くは低地となっており、工場跡地などの転用で大規模マンションなどの供給も目立ちます。

東武東上線ときわ台駅北口から広がる常盤台住宅地は、東武鉄道が中心となって開発された計画的な分譲街区。放射状に幅員のある道路が伸び、住宅地の敷地も広く高級住宅地として人気があります。

ときわ駅の口コミや住みやすさを「TownU(タウニュー)」でチェック(無料・登録不要)

都心アクセスが良好な板橋区ですが、区の面積も広いだけに街の雰囲気もさまざま。予算や求める住宅のタイプに応じて街選びができます。

板橋区内では、現在複数の再開発プロジェクトが進行中です。その中でも大山駅は、複数の第一種市街地事業が進行中で、「ハッピーロード大山商店街」を含む広範囲なエリアで商業施設や住宅、広場などを一体で整備しています。また、上板橋駅や板橋駅でも市街地再開発事業が進められています。

武蔵野台地に多くのエリアが位置する板橋区は、市街化が早かったことで狭い道路や木造密集地域の解消、東武東上線の踏切の多さが課題になっています。市街地再開発や連続立体交差事業などによって、こうした課題の解消に努めています。

再開発が進むハッピーロード大山商店街(2021年9月筆者撮影)

板橋区内を通る東京メトロ有楽町線、東武東上線、JR埼京線、都営三田線の4路線のうち前者の3路線は、池袋へ直結します。池袋駅は、JR山手線や東京メトロ丸ノ内線など9路線が乗り入れるターミナル駅なので、都心方面を含めマルチなフットワークが実現できます。一方、都営三田線は大手町駅へ直通アクセス。板橋区役所前駅からなら20分程度で往来できます。

都営三田線は、西高島平駅が始発となり各駅に停車しますが、東武東上線は運行距離が約75キロメートルと長く、成増駅のみが板橋区内の急行停車駅となります。また、東京メトロ有楽町線と東武東上線の駅間が近い場所もあり、成増などでは両線が利用できます。

板橋区は新築戸建ての供給が活発で、なかでも東武東上線沿線での供給が目立ちます。敷地面積を抑えた戸建ての供給もあり、価格は4,000万円前後から探せます。また、新築マンションも、都心アクセスが良好な割には購入しやすい価格設定のマンションが目立ちます。3LDKタイプで、5,000万円前後で分譲されているものもあります。

板橋区で住まいを探すなら中古マンションが狙い目です。板橋区は、首都圏に新築マンションの供給が多かった2000年代に大規模マンションの供給が活発だったエリアで、魅力的な中古マンションも多数あります。なかでも板橋区加賀は、加賀藩前田家下屋敷があったエリアで石神井川の周辺に魅力的なマンションが立ち並んでいます。この付近は、加賀公園や板谷公園などの憩いの場も多く、ファミリー層に人気があります。

次に、板橋区の筆者おすすめの街を紹介します。

にぎわいある商店街が再開発でさらに進化する大山駅

大山駅前(画像素材:PIXTA)

まず、1つ目のおすすめの街は、大山です。東武東上線大山駅から連なる「ハッピーロード大山商店街」は、1978年に板橋区随一のアーケード商店街として誕生した歴史ある商店街。安全、安心、快適で楽しい商店街を目指し、催事やイベントの開催、情報発信などさまざまな取り組みを行っています。アーケードを歩くと、両側に物販店や食料品店など多彩なお店が並んでいて買い物に便利。商店街振興組合の直営ショップ「とれたて村」では、全国の市町村と直接契約を結び新鮮な野菜や、各地の特産品等を販売しています。

大山町クロスポイント周辺地区第一種市街地再開発事業イメージ図(出典:大山町クロスポイント周辺地区市街地再開発組合 2021年9月15日リリース)

また、日本大学医学部附属板橋病院などの医療施設や教育関連施設も周辺にそろい、多世代が暮らしやすい住環境です。現在、大山駅周辺では「大山町クロスポイント周辺地区第一種市街地再開発事業」が進行中。地域の防災性向上を推進するとともに商店街の活性化に寄与する拠点を形成する計画です。さらに「大山町ピッコロ・スクエア周辺地区」でも再開発計画が進められており、将来的には美しい街並みの魅力的な街区が誕生します。

大山駅では、新築マンションの供給が活発で、良好な都心アクセスから注目を集めています。大山駅は池袋駅と直線距離で2.5キロメートル圏に位置しており、マンション価格は3LDKタイプで6,000万円台前後からと板橋区内では比較的高水準。都心近接で単身者も多く住むエリアなので、2LDKタイプの供給も目立ちます。フラットな地勢でもありファミリー層からシニアまで多世代が暮らしやすいことも魅力です。

大山駅の口コミや住みやすさを「TownU(タウニュー)」でチェック(無料・登録不要)

再開発が進行中 城北中央公園のある上板橋駅

2つ目のおすすめの街は、東武東上線の上板橋駅です。上板橋駅の魅力は、公園や公益施設の充実。駅東側には板橋区立平和公園と板橋区立中央図書館が、さらに南側には25万平方メートル超の規模を誇る東京都立城北中央公園があります。野球場やテニスコート、陸上競技場などのスポーツ施設とわくわく広場、けやき広場、都民の森など憩いの場が豊富にあり、ドッグランも備えています。街なかにも公園が点在しており、家族でオフタイムを楽しめるロケーションです。

板橋区立中央図書館(画像素材:PIXTA)

上板橋駅では新築戸建ての供給が目立ち、価格帯は5,000万円台~6,000万円台が中心。生活利便性の高さを考えると検討しやすいエリアと言えそうです。また、上板橋南口では、約1.7ヘクタールの市街地再開発事業が進行中。約210メートルの区画街路などを新設するとともに、3棟の建物と駅前広場、駐輪場などが整備されます。こうした再開発による街の将来性も上板橋で住まいを選ぶ魅力と言えるでしょう。

上板橋駅の口コミや住みやすさを「TownU(タウニュー)」でチェック(無料・登録不要)

赤羽駅へも出やすく、小豆沢公園が近い志村坂上駅

3つ目のおすすめの街は、都営三田線の志村坂上駅です。その魅力の1つが、日比谷駅や大手町駅へ30分以内でアクセスできる高い交通利便性。駅から近くの板橋区立小豆沢公園はスポーツ施設が充実しており、野球場やテニスコートのほか、バスケットコートやランニングコース・ウォーキングコースが整備されています。子どもが楽しめる遊具もあり、健康志向の家族には便利なスポットです。また、見次公園は湧水の池がある公園で、ボートを楽しむことができる憩いの場。新河岸川も近く、自然豊かな住環境は志村坂上で暮らす魅力でしょう。

小豆沢公園内のテニスコート(画像素材:PIXTA)

さらに、生活利便施設も充実しています。セブンタウン小豆沢は、地域密着型のショッピングセンターで、ヨークマートやビバホームをはじめ、ユニクロ、無印良品、ダイソーなどの物販店や飲食店が入っています。そのほかにも商店街やスーパーなどの買い物施設が点在し、日々の買い物に便利です。また、板橋中央総合病院をはじめ医療施設も充実しています。

見次公園(画像素材:PIXTA)

志村坂上駅は、北区に隣接しているエリアでもあり、JR赤羽駅行きのバスも運行されています。赤羽自然観察公園も徒歩圏で、オフタイムが充実する商業・レジャースポットが身近にあることも志村坂上の魅力です。隣駅の志村三丁目では5,000万円前後で3LDKタイプが分譲されており、通勤利便性を踏まえると手の届きやすいエリアです。中古マンションのストックもあるので、新築マンションと中古マンションを並行して検討するのも良いでしょう。

志村坂上駅の住みやすさを「TownU(タウニュー)」でチェック(無料・登録不要)

都心アクセスが良好で商店街などの生活利便性と自然環境が魅力の板橋区ですが、留意すべき点としては東側の低地エリアは荒川や新河岸川に近く、水害リスクがあることです。ハザードマップを事前に確認して検討しましょう。また、東武東上線は踏切が多く残っていて、大きな事故にもつながっています。区では、交通規制をかけるなど安全対策を施しています。踏切の多さは東京都の課題でもあります。踏切が近くにある場合は、音の影響などもよくチェックしましょう。

再開発が進めば、さらに発展が見込める板橋区。良好な都心アクセスに加え、手が届きやすい住宅価格も魅力です。池袋へアクセスしやすいことはオフタイムの充実にもつながります。アクティブな暮らしを求める若いカップルやファミリー層におすすめしたい街です。

「TownU(タウニュー)」とは?
アルヒ株式会社が提供する一人ひとりのライフスタイルや価値観に合った「本当に住みやすい街」をAI技術を用いて提案するWebサービス(無料)。詳しくはこちら